★【良作・佳作】『アニメガタリズ』(2017/Ave.75.6) text by 闇鍋はにわ
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作品NO.36 『アニメガタリズ』


世界観:80 脚本/構成:75 演出:75
キャラ:75 演技(声優):75 引き:70 劇伴:75 作画:80
Ave.75.6 詳しくはこちら ネタバレ厳禁度:★★★★★
2017年10月~12月
TOKYO MX、他
全12話/オリジナル作品
学園・ドラマ・コメディ・サブカル
監督:森井ケンシロウ
シリーズ構成:広田光毅
キャラクターデザイン・総作画監督:衣谷ソーシ
音楽:帆足圭吾/高橋邦幸
アニメーション制作:ワオワールド
<キャスト(主要)>
阿佐ヶ谷未乃愛:本度楓
上井草有栖:千本木彩花
高円寺美子:東城日沙子
《ワンツイートレビュー》
「私達、アニメ好きをこじらせて――うっかり世界を滅ぼしてしまいました…?」という謎の紹介からPVの始まる、アニメを中心とした「好き」を取り上げた作品。脳天気なようで計算づく、ロジカルなようでカオス。言葉にし難い独特の明るさに不思議な味わいがある。
【みどころその1・注目点】
【みどころその2・主人公について】
【視聴ガイド】
【音楽面】
【作品を見るには】
■ 作品評価 【良作・佳作】
【傑作】 絶対観た方がよい作品
【名作】 観るべき、マストではずせない作品
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品
【水準作】 普通だが見どころはある作品
【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品
【駄作】 取り上げる価値もない作品
【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
◆ 作品評価順リスト(=「見て損はない作品」ランキング )はこちら

【総得点/Ave.】 605/75.6
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世界観 : 80
脚本/構成 : 75
演出 : 75 グループA:Ave. 76.7
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キャラ : 75
演技(声優) : 75 グループB:Ave. 75
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 70
劇伴 : 75 グループC:Ave. 72.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 80
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100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰
95 最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない
90 めちゃくちゃ良い、名作レベル
85
80 かなり良い(強い、巧い)、良作レベル
75 良い(強い、巧い)
70 なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60 普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる
50 凡作レベル、2流 30 失敗作レベル、3流 0 駄作・愚作レベル
※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちらで
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
◆ 総得点順作品リストはこちら
■ ネタバレ厳禁度
★★★★★ (厳重注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が著しく低減する可能性あり)
wikipediaでは内容のネタバレがされているので、そちらには目を通さず物語の変化を楽しんで欲しい。
【はじめに】
アニメについてほとんど知らないにも関わらず、ひょんなことからアニメ研究部の発足に関わってしまった高校1年生・阿佐ヶ谷未乃愛(みのあ)。
そんな彼女が個性豊かな部員に振り回されながらアニメへの理解を深めていく……というのが大雑把なあらすじ。
そこだけ聞くと「げんしけん」などを連想するかもしれないが、本作の登場人物にはそういう生っぽさは存在しない。どちらかというとそれぞれのジャンルへの好みを前面に押し出し単純化したタイプの造形がなされている。

アニメ研究部が舞台ということでパロディは多いのだが、視聴にあたっては元ネタ探しにはそれほど躍起にならない方が良い。
「アニメガタリズ」のタイトルの通り、本作のポイントは「語り」にこそあるからだ。
例えば近寄りがたい雰囲気の人が特定の話題については雄弁になった時。
例えば共通の知り合いである誰かについて語る時。
そこでは語られる対象の内容だけでなく、語っている当人が対象について何を考えているかといったものが立ち現れる。
何かについて語る時、人は自分が何者であるかもまた同時に語っているのである。
上述したように本作のキャラは自分の好きなものが明示的に設定されており、それについて熱心に「語る」ことでドラマが作られ、物語が動いていく。物語は多段式ロケットのように何度か最終回じみた回を迎え内容が変化していくが、「語り」が常に中心にあることだけは変わらない。

「語る」には「聞く」相手が必要であり、主人公でありアニメ初心者である未乃愛は物語の多くで聞き役を務める。
異能力バトルやコスプレなど好きの方向性が強く設定されている他のキャラに比べて未乃愛は一見すると地味だが、素晴らしく聞き上手だ。
アニメ初心者=知らないということを最大限に活かし、既に好みの方向性の定まった部員達の語りをスポンジのように吸収し目を輝かせる。
好きなものに饒舌になり過ぎてかえって相手を引かせてしまうというのはしばしば起きる事故だが、そんな事無く話を聞いてくれる未乃愛は「語る」には最高の相手と言えるだろう(そしてそれは未乃愛が逆に「語る」時にはカタルシスが生まれるということでもある)。
また、未乃愛のその聞き上手はけしてアニメだけに限らない。
彼女はアニメが好きな以前に何かに夢中になっている人が好きで、またそういう人の語りを聞くのが好きな人間なのだ。
「アニメガタリズ」においてある意味当然ながらアニメは素晴らしいものとされるが、それはけして絶対唯一のものではない。
アニ研部員達が好きなジャンルは様々でも相手を尊重できるように、アニメにさほど興味のない他のキャラもそれぞれの好きなものは否定されない。
むしろ全然違う「好き」を繋ぐノリとしてこそ、本作におけるアニメは肯定される。
本作において単一ではなく個々の多様な「好き」が認められる姿を心に留めおくことは、未乃愛の大好きなある作品や本作の終盤、そして彼女の最終回の「語り」を読み解く上で大きな鍵となってくれるはずである。
小難しく書いたが、基本的には本作は明るく楽しく見られる作品だ。単純化されている分だけキャラの行動は分かりやすくパワフルで、未乃愛が緩衝材またはノリとして働くこともあってキャラの嫌味は薄い。パロディについても「語り」でされる部分が大きいために作品名などはちょっとヒネった言い換えがされており、知識的に自信のある人は何をどう変えてあるのか考えるのも楽しいだろう。
また「語り」にはこの2010年代のアニメを取り巻く環境なども多々(コミ○回に顕著だがちょっとズレた部分まで)盛り込まれており、アニメ初心者はもちろん見慣れた人にも新たな知識を得る機会になることが期待できる。
2話構成になっている部分が多く、話数別に見た場合は偶数回に見どころが多い。特に8話と10話はそれまでの到達点としての意味合いが強く、どちらも最終回を見たかのような気分になれること請け合い。また最後の話となる11,12話はスタッフが「ブルーレイ特典でいいのでは」などと冗談を飛ばす賛否両論の作りだが、そこまで見てくれた方にはぜひ12話ラストまでお付き合い頂きたい。そして全部終わったらニコニコ動画の本作のチャンネルへ飛ぶべし。
http://ch.nicovideo.jp/animegataris
音楽面では劇伴はあくまでバックに回り物語を牽引することはないが、パロディの際にしばしば元ネタに似せた楽曲が使用されている。これも本編のパロディ同様に気付かなくとも問題なく、気付けば笑える作りとして一貫している。
一方でOPとEDは映像が楽曲に追随する形で作られておりリズム感が抜群。特にOPは毎回始まる前にアバンでお決まりの合図が用意されていることもあり、OPは飛ばす派の人でも流れで見てしまいがちな内容となっている。
2018年2月現在Amazonプライム会員特典対象
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07665B22Y
この他dアニメストアやHuluなど動画サイトにて配信多数
https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/ci_pc?workId=21654
https://www.happyon.jp/anime-gataris
ティザーPVの謳い文句は「きっとあなたもアニメのことを語りたくなる!」 そう、見終わったら語りたくなる。そういう作品です。
【アニメガタリズ特集】森井ケンシロウ監督が語る「アニメガタリズ」誕生秘話と作品に込めたこだわりとは?
https://akiba-souken.com/article/31799/

執筆者 闇鍋はにわ(@livewire891)
ブログ「Wisp-Blog」
http://craft89.blog105.fc2.com/
同ブログ内「アニメガタリズ」各話感想リスト
http://craft89.blog105.fc2.com/blog-entry-2546.html#ag
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