作品に点数や順位を付けることについて
コラムNO.3 投稿日:2019/6/16 カテゴリー:【作品に点数や順位を付けることについて】【企画について】
取り上げている主な作品:『刀使ノ巫女』
テキスト:PIANONAIQ(@PIANONAIQ)
《目次》
■ はじめに
■「深夜アニメの歩き方」が点数や順位付けを行う理由
■ 作品は人間と同じ?
■ はじめに
というわけで今回はこのテーマについて考えてみたいと思います。
普段ツイッターを眺めていても、作品に点数を付けること、のみならず他人に作品を(過度に?)勧めることを嫌う風潮があるようにも感じている今日この頃です。
私自身はというと、作品に点数を付ける(付けられる)ことも他人に勧める(勧められる)こともそれほど嫌いでない人間なのだと思います。ですが、それらを嫌う人の意見もわかるつもりではいて、きっとそういう方達からすればこの「深夜アニメの歩き方」もそれほどよい印象には感じられていないだろうな……と思っていたりもします。
点数を付ける(られる)ことに抵抗がある人・ない人、実際どちらが多数派なのだろう?それぞれの側における多数派意見ってどんなものだろう?といったあたりにも興味はありますが、大規模な統計調査でもしない限り正確な事は判らず推測の域を抜け出すことはできないでしょう。
ただ、本企画にこれまで参加してくださった寄稿者の方々とやりとりする中で、およそ半数以上の方が採点することに何らかの抵抗を示された、といった経験から、どちらかというと抵抗がある人の方が多い?という漠然とした印象は持っています。採点が難しい、ということに関していえば、おそらく参加者の9割以上がそう感じられていた印象で、本企画において採点が色々な側面でネックになっているのは間違いないと自覚・認識するに至っています。
抵抗がある、難しいと感じられた参加者の意見の中には、作品に私ごときが点数をつけるなど恐れ多い、正確な判断が難しいのでそれは作品に対し誠実な向き合い方ではない、単純に自分には作画などについて点数を付けられる能力がない……といったようなものがありました。
どれもわかりますし、私自身にとっても実は記事を書くにあたり採点は難しくて厄介な作業です。
例えば、タイプ(作風?)によっては非常に点数を付けづらい作品があります。点数を付けたり【良作】【佳作】という評価を与えてしまうことで、その作品が持つ魅力やイメージが狭い枠の中に押し込まれ矮小化されてしまうように感じるケースも多々あって、これは間違いなく採点や評価付けの負の側面だと思います。そういう場合には、点数の脇に補足文を添えたり、本文の方で点数付けの理由や点数では判断できない作品の魅力を書いたりすることで出来る限りフォローする、というのが現状行っている対応策ではあるわけですが……。
また、なるべく正確な判断を行い作品と誠実に向き合いたい、とはいえ注意深く採点しようとしすぎると頭がおかしくなりそうになることもありますから(笑)、だいたいこんなものだろう、という風に半ば諦めに近い感情を伴いながら判断・決定している場合も少なくないです。
誠実かつなるべく厳密に作業するのは当然としても、採点に不向きな作品を扱うことも含めて完璧な採点作業などは言ってしまえば不可能――なので、あくまでメインは作品の魅力を伝える本文の内容であり、点数や評価は実は参考程度の指標として扱っている(捉えて欲しい)、というのが主催者としての私の考えでありスタンスです。
点数付けにはメリットもあればデメリットもあり、順位付けに関しても、きっと万人が納得するような「おすすめアニメランキング」なんてものはない――極論としてはこういうところに辿り着くのだろうとも。
■ 「深夜アニメの歩き方」が点数や順位付けを行う理由
「深夜アニメの歩き方」はレーダーチャートによる採点と作品評価の二つを柱とした「バリバリ点数付けを行う企画」であると同時に、(世間で忌み嫌われる?)他人に作品をおすすめするサイトであるわけですが、私自身の考えとしては、実はそこまで「これがお勧めだから絶対見て!」という気持ちはありません。
この作品ってどんな感じだろう?という風に思って記事を読んで下さった読者の方が作品に少しでも興味を持ってくれたら嬉しいなあ、ぐらいに割とライトに考えてます。
この辺は本企画立ち上げの経緯やコンセプトに関わるところであり、詳しくは《「深夜アニメの歩き方」の歩き方(目次)》《本企画について》に書いてあるのでここでの詳しい言及は避けますが、ざっくりいえば、膨大なアニメ作品群の中からある作品を選んで見ようと思った時、その作品の見どころや世間での評価・評判などをネタバレなしで紹介してくれるガイド記事があればいいなあ、という長年の想いから始まった企画が「深夜アニメの歩き方」です。
また、アニメ視聴に割ける限られた時間を有効に活用するべく、なるべく名作良作といわれる良い作品を見たい(というより、失敗したくない、という想いの方が強いかもしれません)という考えも同時にあり、その手助けとなる指標として導入したのが以下に示す深歩評価と名付けた本企画独自の作品評価基準ということになります。
【傑作】 絶対観た方がよい作品
【名作】 観るべき、マストではずせない作品
【良作】 観た方がよい(がマストではないかな?と思える)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品
【水準作】 普通だが見どころはある作品
【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品
【駄作】 取り上げる価値もない作品
【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)
◆ 作品評価順リスト(=「見て損はない作品」ランキング )はこちら
◆ 名作と良作の違いについて:「全身が打ち震えるほどの」といった感動の大きさは名作も良作も同じ、そこからさらにプラスαで特筆(評価)すべき点のある作品が名作
レーダーチャート評価の導入に関しては、視覚的にぱっと伝わりやすい利点はもちろんそうですが、各項目ごとに採点することで、例えば同じ【良作】評価の作品の中でも作品ごとのチャーム(ストロング)ポイントや作風の違いがよりわかりやすくなるだろう、というのが一番の理由です。

100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰
95 最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない
90 めちゃくちゃ良い、名作レベル
85
80 かなり良い(強い、巧い)、良作レベル
75 良い(強い、巧い)
70 なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60 普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる
50 凡作レベル、2流 30 失敗作レベル、3流 0 駄作・愚作レベル
※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちらで
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています
要は、読者が見る作品を選ぶ行為を助ける、という作品ガイドとしての利便性や強度を高めるのが狙いですね(本当に読者の役に立っているのか怪しいところはありますが……)。
とはいえ、繰り返しになりますが、誰かにお勧めしたい!という気持ちはさほど強くなくて、それよりは膨大な作品群を統一された基準で整理・体系化したいという個人的興味や欲望の方が大きく、それで続けているのが「深夜アニメの歩き方」なのだと思います。
こういうことを言うと、やはり採点や順位付けに抵抗がある人は悪い印象を受けるのかもしれませんが、個人的にはそれで膨大な作品数を扱えた時にはそれなりの意義(価値)を見出せるのではないかと考えています(数が大事。最低でも200作品以上は扱いたいところです)。
ライバル、というか圧倒的に巨大な先行企画として「あにこれ」などもあるわけですが、そこは上手く差異を出しつつやっていくしかない、といったところです。個人ブログの「どくアニ ~独断的アニメ感想・批評の部屋~」さんなども膨大な作品数を扱っている「深夜アニメの歩き方」の遥か先を行くサイトですが、良いところなどを学ばせていただこうかと思っています(2017年以降は更新が止まってしまっているようで残念ですが)。
以上まとめると、「深夜アニメの歩き方」が点数や順位付けを行う理由は、作品ガイドとしての利便性や強度を高めるため、作品の整理・体系化のため、といったあたりになります。
■ 作品は人間と同じ?
当企画に何度もご参加して下さっている闇鍋はにわさん(@livewire891)が『刀使ノ巫女』 の紹介記事の中でこのように書かれていました。
しかし待ってほしい。あなたは例えば初対面の人の性質を見抜ける自信はあるだろうか。あるいは初対面の相手に自分の美点を欠けることなく伝えられる自信はあるだろうか。
相手を理解することや自分を理解してもらうことは、一気に進むことはあっても基本的には一歩一歩の積み重ねから生まれていることが多い。この作品との付き合い方は、そういう人との付き合い方と特に似ている。つまり「分からない」を「少し分かる」に変えていく過程に大きな面白さのある作品なのだ。
こういう考え方はこれまで私の中にはなかったので、初めて読んだ時には「なるほど」と共感の気持ちとともに感心しました。作品の良いところを見出す難しさは人付き合いの中でのそれと似ている(こともある)、といった風に解釈してもよいのかなと思いますが、このように考えると、そうして見出した作品(人)の良いところ(あるいは悪いところ)に点数を付けて並べる行為にも何だかあまり良い印象が持てない、という意見にも頷けます。点数や順位付けを嫌う人の中にはこのような考えをその理由としている人も少なくないのかなとも。
ただ一方で、能力の高低、才能の有無に関わらずそれぞれの個としての存在を尊重する基本的理念がありつつも、実際には学歴社会が象徴するようにある部分においては人に点数や順位付けを行っていて、社会への影響力などで見ればどちらにより価値があるかの優劣をつけられる側面がある事実も否定はできない――
一概に作品と人とを並べて同じように語ることはできないとは思うわけですが、私の中の結論としては上記のような考えに行き着くのかなあ、と。
私は点数を付ける(られる)ことに抵抗がない側の人間に属しますが、それでも好き好んで点数を付けたい、順位付けしたいとは思っていなくて、推測ですが抵抗がない側でもそういう人の方が多いのではないかと。
ガイド企画であっても作品を紹介するだけなら別に点数を付ける必要もないと思いますが、その上で「深夜アニメの歩き方」があえてそれを行っている理由は前項で述べた通りです。
「見た方がよいおすすめアニメ10選」といった記事はネットに溢れていて特に嫌悪感はありませんが、そうした記事の中で傑作級の作品と佳作級の作品が同列に扱われ(つまりランク付けがない)どの作品も同じくらいお勧めという印象を受ける語り口で紹介されていたりしてモヤモヤする想いを抱くことはこれまで割と多くありました。
作品に優劣をつけないことはある側面において正しいし共感もできるけど、ガイド企画としては点数なり作品評価といった指標があった方がわかりやすいよなあ、という風に私は感じてしまいます(余談ですが、その作品が「好き」で「見て欲しい」という気持ちの話でいえば、例えば傑作評価の『ToHeart』と佳作評価の『少女終末旅行』の間には実はそれほど大きな差はなかったりします。作品評価からこういった気持ちを完全に取り除くことは不可能であるとも思いますが、出来る限りそれと作品の出来とは分けて考えたいところです)
結論は、予想通り(?)身も蓋もないところに着地しますが、結局はどちらが正しい正しくないもないし、好みの問題、なのかなと思います。
テキスト:PIANONAIQ(@PIANONAIQ)
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