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ネタバレ(論争)について考える

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コラムNO.2   投稿日:2018/12/21   カテゴリー:【ネタバレ(論争)について】 【企画について】   
取り上げている主な作品:『ゲーム・オブ・スローンズ』『ふらいんぐうぃっち』『ラーゼフォン』『喰霊-零-
テキスト:PIANONAIQ(@PIANONAIQ



 


◇ はじめに 





SNS(ツイッター)とアニメ視聴(文化)の結びつきが決定的に強固となった昨今の深夜アニメシーンにおいて定期的に論争や議論を生んでいるネタバレ問題――


論争が起きるたびに私も自分の考えをちょこちょこ呟いていたのですが、コラム記事の募集も始めたことだしこの際、「私はこう考えてます!」というのをきっちり文章に纏めてみよう、と思ったのが今回この記事を書き始めたきっかけです。


自分の考えを述べるとともに、これからも不定期に議論が起こるであろうこの問題の視界を明瞭にすべく、また議論が起きた際の一助となるような内容の記事を目指し争点となりそうなトピックについて可能な限り取り上げてみるつもりです。


「深夜アニメの歩き方」で作品紹介記事を書く上でも「ネタバレを避ける」というのはかなり上位に位置する問題であり、これまでそこに注意して取り組んできた中で感じたことも幾つかあるので、その辺も織り交ぜつつ語っていきます。




よろしければ最後までお付き合い下さい。

 

 




【目次】



◇ 【トピック1】ネタバレと事前情報の違い


〈註1〉  作品紹介記事を書く難しさ
 
◇ 【トピック2】ネタバレを避けたい理由
◇ 【トピック3】ネタバレ要素の有無と作品強度について
◇ 【トピック4】ネタバレに腹を立てる理由、ネタバレが平気な理由


〈註2〉  『ラーゼフォン』と『喰霊-零-』からネタバレ問題を考えてみる


◇ 【総括】ネタバレ論争について




アルジェントソーマ イメージ43

ネタバレ厳禁度:★★★★★  (厳重注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が著しく低減する可能性あり)



若おかみ イメージ 426

ネタバレ厳禁度:★☆☆☆☆  (まったく問題なし)






 

◇ 【トピック1】ネタバレと事前情報の違い






先日、とある今期の話題作のある話数の視聴に際し、視聴前に「神回」という言葉をツイッターの感想でみかけたことで、画面内のあらゆるものを厳しい目で判定するような妙に身構えた視聴になってしまい、結果どこか素直に楽しめず損したような気分になることがありました(普段通り自然に見れていればもっと大きく感情が動いたようにも思います)。


「神回だ」、というのは単に感想を述べているだけですからネタバレとは違いますが、ツイッターなどで事前に見聞きしたことが作品初見時の視聴に何らかの影響や変化を与える、という点で私の中ではネタバレに近い問題として見ているところがあります。


「ラストシーンで~~君が~~してしまうなんて凄すぎるし、神回だ!」となると、これは世間一般でNGとされる真のネタバレの領域に完璧に足を踏み入れてしまう感じでしょうか。(笑)


「これはダメ、ここまで語っちゃうのはNG」といったように、人によってそれがネタバレになるかどうかのレベルに違いがある、という問題ももちろんありますが、それはネタバレなのか事前情報なのか、といったあたりの定義や捉え方の問題も重要で、ここを明確にしておいた方が議論の混乱が避けられそうです。

私が個人的に問題だと思っている「神回だ」といった類のものは、ネタバレではなくどちらかといえば「事前情報」に属する感じになるのでしょうか。

ネタバレが悪なのか、事前情報が悪なのか――(本記事の主張を誤解されないためにも)この辺はきっちり分けて論じるべきだろうと思いますが、意外と世の中のネタバレ論争でもこの辺が共通認識として欠けていたりすることもあるのかな、ということで争点となりそうなトピックとして最初に取り上げてみました(事前情報の是非というのもその定義含めて難しいところですかね。作品の視聴を補助するような事前情報があった方が初見時により楽しめることも大いにあるでしょうから、ケースバイケースというか、ある作品の視聴に際し誰にでも当てはまる絶対そうした方が良いという見方はない、のかもしれません)。





とはいえ、「神回だ」という感想を書いた人を悪いとは思っていないことは念を押しておきたい部分です(どちらかといえば神回という言葉を聞いただけで普段通りの視聴が出来なくなってしまう自分の弱さを痛感する次第です……)。

また、あまりにも配慮がなさすぎる悪質なネタバレは言語道断だとしても、それでも最低銀のマナーを守りながら自由に感想を書いて楽しめる場がツイッターだと「私は」考えているので、ネタバレ感想自体を責めるつもりもないです。

 

何より、私自身、ネタバレにはかなり配慮して普段感想を述べているつもりですが、「神回だ」の類の感想は割と使ってしまっているので、「自分がする時は良くてされた時は駄目」なんてのは道理に合わないだろう、というのもあります。(笑) 〈註1〉


正直にいえば、確かに損した気分にさせられたという負の感情もありますが、(私の考える)ツイッターというものが上で述べたような場であるならば、(ミュートワードに設定するなど)本気で自衛手段を講じなかった自分自身に非がある、というのが大筋のところでの私の考えになります。


自分にとって大事な作品であったり、ネタバレを含むような種類の作品(この辺は後述します)の時ほどネタバレを回避することに神経質になる側面もあると思いますが、そういう時でも私が滅多に自衛策を講じることがないのは、「ネタバレを踏みたくはないけど何らかの感触は得たい」という非常に身勝手ともいえる思惑があったり、突き詰めて考えれば「そこまで本気で大事だと思っていない」から、ということもありそうです。


普段色々な方の興味深い感想や有益な情報に接することができて楽しませてもらっている、反面そういったリスクもある、ということで差し引きゼロ(よりは圧倒的にプラス)ではないかな、と考えている節もあるでしょうか。




 

〈註1〉  作品紹介記事を書く難しさ



本論から脱線した話になるのでこちらに書くことにします。


「神回」についてあれこれ述べましたが、『十二国記』の紹介記事の中で、「~話が超神回!」と大々的に書いてしまっていることについて疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれないので、一応どういった考えなのか説明しておきたいと思います。


まず、「神回だ」と事前に聞くと身構えてしまってあまり良くない視聴体験になることもある、というのは自身の体験でもわかっているので、作品紹介記事の中でも「できれば使いたくない」とは思ってます。


特に大きな期待もしていない状態で世間で神回といわれるような名作話数にふと出会うことが作品体験としては理想的ともいえるものかもしれません。

なので、仮にある推したい作品があったとして、それがわざわざ紹介するまでもないほどの名作で誰もが高い確率で見てくれるような作品であるならば、「~話が神回なので是非見てください」といった紹介の仕方はマイナスともいえるでしょう。


一方で、強くプッシュしなければなかなか見てもらえないような割と埋もれがちな作品であったり、長丁場の物語で視聴継続のモチベーションが上がる何かがなければなかなか完走が難しいと思える作品の場合には、そういった作品の推し方も有効であるのかなと思います(その作品には神回がある、までにとどめて具体的な話数は明示しない、のも場合によってはひとつの手かなと最近考えるようになりました)。


あと、これは言い訳にもなってしまいそうな理由ですが、記事の中の「~話が神回」という文言でその作品に興味を持って見始めた方がいらしたとして、意外と記事を読み終わると具体的な話数については頭から離れる場合もあるのではないかと考えてます。

「確か~話あたりが神回だったよな」みたいな感じで視聴を進めていれば、該当話数に当たってもそこまで身構えて大きなダメージを被ることもなくなるのではないか、と。


ということで、作品に応じてこの辺をあれこれ考えながら紹介記事を書いていますが、正直未だに難しいです。


「深夜アニメの歩き方」はどういった作品紹介の仕方が良いのかを探る実験と試行錯誤の場でもあると考えています。







 

◇ 【トピック2】ネタバレを避けたい理由






次はこれについて考えてみます。


私は、そこまで神経質にはならないと自分では思っていますが、何だかんだやはり「ネタバレは避けたい派」なのだと思います。


理由を考えてみると、――「エンタメ作品の楽しみ方、エンタメ作品に何を求めるか」は人それぞれだと思いますが――自分の場合は、初見時にのみ得られる大きく心が動かされる感動や衝撃、言い換えれば物語体験における一回性を割と重視している人間だから、という風にいえそうです。


とはいえもちろん、その作品に演出面での巧さだったりストーリーの力に頼らない部分での面白さが備わっていれば、たとえネタバレを踏んでもそういった部分で十分楽しめるし満足もできます。



ただ、事前情報なしでネタバレも踏まず無防備な状態で衝撃的なシーンに不意に立ち会った時の心拍数が上がるような興奮や衝撃というものも確かにあり、私はこういった経験をエンタメ作品、ひいては「アニメを見ること」に大きく求めているということなのだと思います。

同時に、その時の興奮の度合いであったりどれだけの興奮(感動)を与えてくれた作品なのか、といった側面がその作品に対する思い入れの深さや作品評価の上下に関わっている節もあります(この辺のスタンスにはおそらく賛否両論あるだろうと思います)。



got1 97



アニメではありませんが、『ゲーム・オブ・スローンズ』という「世界で最も面白い海外ドラマ」といわれても決して大袈裟には聞こえない歴史的名作があります(来年いよいよファイナルシーズンを迎えます)。

この作品は、絶対ネタバレを避けて味わいたいような衝撃的なストーリー展開が売りであると同時に(普通のファンタジー作品なら絶対死なないだろうと思うような主人公クラスの登場人物が実に無残で衝撃的な死を遂げます)、たとえネタバレを踏んだとしても揺らぐことのない脚本や映像の圧倒的な強度と演出の巧さを備えているところが圧巻です(後述しますが、この二つを高い次元で両立することは極めて難しく、それが出来た作品は「最強のエンタメ作品」といってもよいのではないかと私は考えています)。

で、私は、この作品の中でもファンの間で一際衝撃的とされる話数を「幸運にも」事前情報一切なしの状態で見ることが出来た結果、もうここで見るのやめようか?と本気で悩むほどの今まで味わったことのない衝撃に心を貫かれたのです。余談ですが私はこの話数を「悪魔の話数」と勝手に呼んでいます。(笑)

ここで判断を誤らず視聴を続けたことでその後「世界最高の海外ドラマ」と心から思える唯一無二の体験が出来たわけですが、私が『ゲーム・オブ・スローンズ』のことを思い返す度に、この話数での全身を貫いた衝撃が頭をよぎり、それが「凄い作品だ」という声を大きくさせると同時に作品に対する評価をもより一層高めていると感じるのです。故に、今思えば、事前情報なしであのような体験が出来たことは幸運だったのだと――



この辺は本当に人それぞれでしょうが、私の場合は、こういった理由でネタバレを避けたいということです。








 

◇ 【トピック3】ネタバレ要素の有無と作品強度について






たとえネタバレを踏んでも何の問題もなく楽しめる作品、ネタバレによって急激に面白さが減る作品、そもそもネタバレしようのない作品――


受け取る側の話ではないので争点となるトピックではないかもしれませんが、次は作品側の問題としてネタバレ要素について考えてみたいと思います。



ここで企画の話になりますが、「深夜アニメの歩き方」では、以下のような「ネタバレ厳禁度」という指標を設けています。





★★★★★  (厳重注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が著しく低減する可能性あり)
★★★★☆  (要注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が低減する可能性あり)
★★★☆☆  (少し注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が少し低減する可能性あり)
★★☆☆☆  (ほとんど問題なし)
★☆☆☆☆  (まったく問題なし)




記事を書く際、これが結構判定の難しい厄介な指標であると感じることも多々あるのですが、作品の傾向を知るためのひとつの目安になるだろう、ということで採用しています。



ふらいんぐうぃっち 68



例えば、『ふらいんぐうぃっち』のネタバレ厳禁度は「1」(まったく問題なし)としています。

作品記事の中で「日常アニメとして(事件性や意外性のある展開や劇的なドラマで強い引きを生み出すような)ストーリー重視の作品に一石投じるような作品」といった感じで紹介しているのですが、この作品は記憶を掘り起こして考えても、ネタバレして問題になりそうな要素がそもそもないんです。

つまり、ここでのネタバレ厳禁度「1」は、(そういった理由で)そもそもネタバレの心配がまったくない作品であること、と同時に、衝撃的な急展開で強い引きを作って視聴者を楽しませるような傾向の作品(=「ストーリー重視の作品」)ではなく「日常アニメ的楽しさを核として備えた作品」であったりネタバレに影響されない演出面での上手さなどがあることも意味しています。



ストーリー重視の作品に一石投じる」、といったニュアンスにしたのには理由があります。

本作品のような「日常アニメ的楽しさを核として備えた作品」というのは、「ストーリー重視の作品」と違ってネタバレの心配がない上に、繰り返し何度見ても楽しめる点でエンタメ作品としてのある種の高い強度をもっていて、それは後者と比べての優位性といってもよいのではないか――

好みの問題も絡んできそうですが、こういった考えを汲んだニュアンスということです。



対して、ネタバレ厳禁度「4」や「5」が意味するのは(作品評価順リストの方でこれまで取り上げた全作品のネタバレ厳禁度を纏めていますのでよかったら参考にしてみて下さい)、その作品があっと驚く衝撃的な展開を持った(ストーリー重視の)作品であり、ネタバレ防止のためなるべくググったりしないで見た方がよい、といったところでしょうか。



私はもちろん、このような(ストーリー重視の)エンタメ作品も好きです。


が、一回見終えてしまうと再視聴したいとはなかなか思えない――言ってしまえば、ネタバレしても揺らぐことのない脚本や映像の強度、演出の巧さのない――作品に対してはどうしても評価を下げてしまう傾向、尺度が私の中にはあります。



先に述べた、判定の難しい厄介な指標であることの理由にもなるのですが、前項でご紹介した『ゲーム・オブ・スローンズ』のような作品の「ネタバレ厳禁度」を考えるのは少々厄介です。

この作品が、大きなネタバレ要素を含む衝撃的なストーリー展開とネタバレどうこうに左右されない巧さを両立した(稀有な)作品であることは既に述べた通りです。

よって、普通に考えればネタバレ厳禁度は最上限である「5」としたいところなのですが、そうすると「待てよ、確かに衝撃は減るけどそれ以外で十分過ぎるほど面白いので、ちょっと何かしっくりこないな……」といった思考に陥るわけです。

このような場合は、「※ただし、ネタバレを踏んでもこの作品の面白さの根幹はまったく失われない」といった文言を補うことで何とか対処はできるのですが、この辺を考える作業というのはまあ厄介といえば厄介ということです。



世の中のエンタメ作品がすべて『ふらいんぐうぃっち』のような日常系になったならネタバレ論争もなくなって平和になるのかな、と思わなくもないですが、そんな世界は言うまでもなくつまらないでしょうね。(笑)








 

◇ 【トピック4】ネタバレに腹を立てる理由、ネタバレが平気な理由






最後はこれについて考えてみます。


「ネタバレに腹を立てる理由」については【トピック2】で述べた「ネタバレを避けたい理由」とほぼ重なるのではないかと思います。



つまり、初見時にのみ得られる大きく心が動かされる感動や衝撃(=物語体験における一回性)がネタバレによって奪われてしまった(不完全なものになってしまった)から腹を立てるのだろうと。



「ネタバレが平気な理由」の方は少し難しいですね。



それは私がどちらかというと「ネタバレを避けたい派」に属するからでもありますが、想像力を働かせて考えてみることにします。


ひとつすぐに思い浮かぶのは、やはり【トピック2】で述べた、

その作品に演出面での巧さだったりストーリーの力に頼らない部分での面白さが備わっていれば、たとえネタバレを踏んでもそういった部分で十分楽しめるし満足できる

といったあたりでしょうか。



エンタメ作品との接し方の中で、「物語体験の一回性」をそこまで重要視してない人もいるのかな、とも思いますが、仮にそういう方がいるならば「私ネタバレ全然平気」という意見にも頷けてしまいます。


あらかじめネタバレを踏んでおくことで、衝撃的展開で心拍数を上げることなく安心して作品を楽しめる――こういった意見も何度か目にしたことがありますが、これも結構気持はわかります(わかりますが、これを理由に「ネタバレは善である」とは当然いえないでしょう)。


あらかじめネタバレを踏んでおくことで、ストーリー展開を気にせずそれ以外の細部により目を向けられるので違った楽しみ方ができる――これも頷けますが、初見時のみに許される楽しみ方を最初から犠牲にしている点では、個人的には何だかもったいない気がしてしまいますね(これもネタバレを善とする理由にはならないと思いますし、当然ですが他人に強要できるものでもないなと)。 〈註2〉



以上、「ネタバレが平気な理由」については今のところこれぐらいしか思い当たるものがありませんが、もし「それは違う」「私はこう考えている」といったご意見がありましたら、是非当企画の方にお寄せ下さるとありがたいです。




 

〈註2〉  『ラーゼフォン』と『喰霊-零-』からネタバレ問題を考えてみる



「あらかじめネタバレしておくことで違った楽しみ方ができる」という話に関しては、『ラーゼフォン』という作品について考えてみると面白いのではないかと思います。



ラーゼフォン 88



『ラーゼフォン』(2002年)は(私にとって極めて思い入れの深い作品で今後作品紹介記事を書く予定もあるので細かい作品説明は省きますが、)簡単に言うと、『エヴァ』の後続作品として語られることの多い(実際には『勇者ライディーン』からの影響の方が大きい)出渕裕監督によるSFロボットアニメの名作といってよい作品です。

各話が「楽章」、パイロットが「奏者」と呼ばれたり、エヴァの人類補完計画に相当するものとして「世界の調律」という謎めいた大仕掛けがあったりと、音楽に関するモチーフが散りばめられた独特の世界観が特徴です(あえてエヴァとの違いで語れば、切ない恋愛要素を作品の中心に据えている、キャラ達の生き様をしっかり描き切った群像劇としての素晴らしさ最後にきっちり完結して満足感を与えてくれるところ、などにおいては十分エヴァを上回る良さを持った作品であると個人的には考えています)。


そんな『ラーゼフォン』ですが、大きな推しポイント(優れたところ)として、「二週目が楽しい作品」というのがあります。

上手に謎や仕掛けが盛り込まれた見せ方の上手い作品で、初見時においては「え!?もしかしてそういうこと?」という楽しみ方ができるように設計されています(といってもそこまで引きの強い作品ではないので、視聴継続が難しいと感じる方も多いかもしれません……)。

と同時に、現在第一線で活躍するトップクリエイター達が当時総結集した作品だけあって、ネタバレしても揺らぐことのないクオリティや巧さも備えており、各話のレベルの高さは相当なものになっていると思います(一例ですが、ファンの間で名高い第19楽章「ブルーフレンド」などは脚本、映像、音楽とあらゆる要素が傑出したレベルにある極めて高いカタルシスの得られる話数といえるでしょう)。


ここに更に「二週目が楽しい」も加わるのがこの作品の凄いところ。


ネタバレになるので詳細は語れませんが、極端な例でいうとOPでのヒロインの何ともいえない複雑な表情さえも(作画も素晴らしいです)、謎が明らかになった後に見ると「そういうことだったのか、切ないな……」と頷けるものになっているのです。


このように『ラーゼフォン』は最低でも2度違った形で濃厚に楽しめる作品なのですが、もしネタバレしてしまったとしたらあの初見時の胸躍る感覚は味わえず最初から二週目の楽しみ方に近いものになり、それは非常にもったいないと思ってしまうわけです(ちなみに劇場版『ラーゼフォン 多元変奏曲』も必見ですが、内容はTVシリーズを別視点から再構成したもので盛大なネタバレになっているので、TV版の後に観ることを強く推奨いたします)。



喰霊3 75



喰霊-零-』(2008年)といえば、真っ先に頭に浮かぶのは、「深夜アニメ史に残る衝撃的な大仕掛け」でしょうか。

これについては見てのお楽しみとしかいえませんが、あくまで飛び道具的な仕掛けといいますか、仮にネタバレしてしまったとしてもゼロ年代深夜アニメの中でも屈指の人気作といってよい本作の面白さはほとんど損なわれないのではないかと思います(ちなみに2008年は他に『とらドラ!』、『ef - a tale of melodies.』、『ミチコとハッチン』、『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』、『コードギアス』(2期)などもあり、深夜アニメ史においても稀に見る当たり年でした)。


ネタバレ問題を考える上でここで話題にしたいのは、本作の面白さの土台となっている作品構造です。


『喰霊-零-』は、最初に現在のある重要なシーンを見せておいて以降はがっつり過去編に入る、そしてある時点で最初のシーンに舞い戻りそこから更に先を描くといったタイプの作品です(名作『Gungrave』などもこのタイプの作品です)。

最初に現在編を見せてから過去編に飛ぶこのような手法は、制作側自らがネタバレすることで視聴者に『ラーゼフォン』における2週目のような楽しみ方をさせるもの、と(少々強引ですが)捉えることもできます(よってこの手法のメリットのひとつはネタバレの心配がないということもできるでしょう)。

本作がこの手法を選んだのはおそらく正解で、それによって「ゼロ年代深夜アニメ屈指の人気作」という今の評価を獲得することができたのだとも思いますが、別の選択肢として、最初に現在のシーンを見せず普通に過去編から時系列通りに始めてある話数で現在のそのシーンを衝撃的な展開として配置するやり方もあっただろうとは思うのです。

で、このいわば普通のやり方にした場合は、一気にネタバレの危険性のある作品になります。


仮にもし『喰霊-零-』がこの普通のやり方で構成されていたら、きっとネタバレを踏んで「損したー」と嘆く人も出てくるはずです。

しかし、実際の『喰霊-零-』が証明しているように、実はネタバレを踏んでも十分に面白いし楽しめるわけです。


何が言いたいかというと、


実は十分楽しめているのに損した気分になる、という意味で、ここでの「損したー」という嘆きは単にネタバレしてしまった事実に対する悔みのようなものである可能性もあるということです。

お話を作る(語る)側が設定した一番面白いと思われる物語の楽しみ方を完全な形で味わえなかったことを悔やんでいる、ともいえそうですが、いずれにしても、その人の内にある「ネタバレ=絶対避けるべきもの(悪)」という強迫観念に近いものがこうした嘆きを生む原因になっているかもしれないということです。


邪推というかかなり突拍子もない主張である気もしますが(笑)、ネタバレ問題の深層部に実はこういったこともあるのではないかと。







 

◇ 【総括】ネタバレ論争について






ネタバレについてあれこれ語ってきましたが、結局のところ、不定期に話題に上るとはいえ論争というほど大がかりでも物騒なものでもない、というのが個人的な印象ですかね。


「ネタバレは悪である」「いや善である」なんて断定的に主張する人も中にはいるのかもしれませんが、そんな風に断定できるものではないし簡単には結論も出ない、人の数だけ善悪や多様な考えがある、といったように事態を冷静に見ている人がほとんどなのではないか、とも思っています。


論争については「また起きたのか」と割と冷めた目で見ている、一方で、ネタバレ問題そのものやネタバレでダメージを被ることは切実であると考えている――そんな感じでしょうか。



ネタバレを避けたい人もいれば平気な人もいる。



自分が平気だからといって、他人も同じだとは思わない。おそらく数としては避けたい人の方が多いだろうから、そういった人達に嫌な思いをさせないよう最低限の配慮はしよう。


こうなってくると一般常識とかマナーの問題にもなってきちゃいますけど、「嫌な思いをさせないよう最低限の配慮はしよう」といったあたり(もあまり押しつけがましくなると少し嫌な感じはありますかね……)を考えると、ネタバレ問題って行き着くのは「各人がSNS(ツイッター)をどういう場として考えているのか」みたいなところだったりするのかなとも思います。



私のツイッターに関する考えは【トピック1】で述べた通りですが、それ故にネタバレを踏んでしまった時には大抵の場合自衛手段を講じなかった自分が悪いと考えます。


が、もし違う考えを持っていれば、ネタバレした人に敵意を向けたりもするのでしょう。







SNS(ツイッター)とアニメ視聴(文化)の結びつきが決定的に強固となった昨今の深夜アニメシーン――


今後、この結びつきに何らかの変化が起こることはあるのでしょうか。



あれだけ流行っていたニコニコ動画が急激に勢いをなくしていったように、ツイッターに代わる何かが現れて、新たなアニメ視聴の形態(文化)が生まれることはあるのでしょうか。


あるいは、もしかしたらその前に業界的に厳しい状況にあることを伝え聞く(深夜)アニメそのものがなくなってしまうことだってあるかもしれない――



話があらぬ方向へ膨らみそうなので、そろそろこの辺で終わりにします。


これからもネタバレ論争は不定期に起こるのだろうと思いますが、その際この記事が何か有意義な議論を生むきっかけを与えるようなものになれば幸いです。



最後までお付き合いくださりありがとうございました。




喰霊 390



この記事を書いていて、何だか『喰霊-零-』を無性に見返したくなってしまいました。(笑)



有名作であるとは思いますが、企画でも是非紹介記事を書いて取り上げたいと思っている作品です(ネタバレを避けて紹介する、という点では非常に難易度の高い作品かもしれませんが……)。


「書きたい」、という方がいらしたらもちろん大歓迎ですので、気軽にご連絡下さい。









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◇ 作品記事総数:73

【傑作】8
【名作】23
【良作】20
【佳作】16
【水準作】5
【凡作】0
【失敗作】1
【駄作】0

※惜作 4 ※超神回 4

(【傑作>名作】は【名作】とする)


◇ コラム記事総数:3

(2019年6月19日現在)
 
 

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