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★【名作】『UN-GO』(2011/Ave.88.1) text by 絵樟

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作品NO.62 『UN-GO』




UN-GO イメージ 1 56


 

アンゴ レーダーチャート小5 【名作】 1クール


世界観:80 脚本/構成:95 演出:85 
キャラ:95 演技(声優):90  引き:85 劇伴:90 作画:85


Ave.88.1   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★★★★☆




2011年10月~12月
フジテレビ「ノイタミナ」
全11話小説原案坂口安吾明治開化 安吾捕物帖』)
ミステリ・SF・近未来・文学




監督:水島精二
ストーリー・脚本:會川昇
キャラクターデザイン:pako高河ゆん
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:稲留和美矢崎優子やぐちひろこ
美術監督:脇成志
音楽:NARASAKI
アニメーション制作:ボンズ




<キャスト>

結城新十郎:勝地涼
因果:豊崎愛生
海勝梨江:山本希望
虎山泉:本田貴子
速水星玄:入野自由
海勝麟六:三木眞一郎




 


今でも/今こそ――2018年の『UN-GO』




絵樟(@EX5551





◇ はじめに 





 『UN-GO』は、2011年10月~12月にフジテレビのノイタミナ枠で放送されたTVアニメ―ション作品です。TV放送と並行して期間限定上映された劇場版『UN-GO episode:0 因果論』も存在します。


 全11話+中編の劇場版という、決して長くはないコンパクトな尺の作品ですが、放送から7年経った2018年の今も私の心を惹き付けて止みません。その魅力の源は何なのか、そして未見の方へのおススメポイントをいくつかの視点からファンの贔屓目たっぷりに紹介していきたいと思います。

 文章中である程度作品の設定やストーリーにふれていますが、各話の事件の真相ネタバレ等はありませんのでご安心ください


 また、今回の論考の内容は羽海野渉氏が発行された評論同人誌『PRANK! Vol.1』に寄稿させていただいたものと一部重複しています。あちらは主に映像演出やモチーフについての論考で、今回のものと全体的にはまた違った内容になっております。よろしければ『PRANK! Vol.1』の方も是非もご覧ください。
https://landscapeplus.jimdo.com/publication/prank/



 願わくは、新たに『UN-GO』に魅せられる方が一人でも増えんことを。





UN-GO イメージ 1 2
 

 



【目次】
 

◇ 作品構造
◇ キャラクター
◇ ミステリ作品として
◇ 坂口安吾原案作品として
◇ 時代性

◇ おわりに


《参考資料》  




◆ 作品評価     【名作】   



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

◆ 作品評価順リスト(=「見て損はない作品」ランキング )はこちら




 
◆ レーダーチャート評価   


アンゴ レーダーチャート
【総得点/Ave.】   705/88.1
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 80
脚本/構成 : 95
演出 : 85                 グループA:Ave. 86.7
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 95
演技(声優) : 90             グループB:Ave. 92.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 85 
劇伴 : 90                 グループC:Ave. 87.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 85         
――――――――――――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





◆ ネタバレ厳禁度   



★★★★☆  (要注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が低減する可能性あり)


ネタバレが魅力低減に直結するタイプの作品ではないと思っていますが、形式としては推理物なので……。





 


◇ 作品構造





 まず、『UN-GO』は視聴にあたって間口が広く浅く誰もが一度で全てを理解できる作品――ではありません。出だしからえーって感じなのですが、これはもう本作の構造上偽りようのない事実です。


 『UN-GO』には原案作品があり、『堕落論』等で著名な文豪・坂口安吾による明治初期を舞台とした探偵小説『明治開化 安吾捕物帖』(以下、『安吾捕物帖』)です。作品内の時代背景や事件、人物等は執筆当時の昭和20~30年代のものと意識的に重ねて描写されています。そしてそれをアニメ化した本作では時代設定を今から10、20年程先の近未来に移しています。そこで描かれる事件もまた現実社会(2011年当時)の時事とリンクさせるという、原案の手法に則ったものになっています。


 つまり、『UN-GO』には「明治初期」「戦後昭和」「現代」「近未来」という四つの時代のフィルターが重ね合わされているのです。そして描かれる事件やキャラクターが各時代の要素と呼応し、さらに何重もの意味付けが行われています。さらに第7話8話のエピソードでは、ある仕掛けにより作品内にもう一つの箱庭的世界が出現し、その中でもストーリーが進むという展開になったりします。


 また、劇場版の『因果論』はTVシリーズ本編の前日譚となっており、これを経由してから本編を観直すと一つ一つの描写により深い味わいが出てくる……という作りになっています。
 

 こうした多重構造により本作が短い話数の中に膨大な情報量を宿しているからこそ、初見で全てを把握するのは極めて困難というわけです。けれどそれは逆に捉えれば繰り返し視聴するに値する奥深さがあるということで、実際に未だ自分含めて根強いファンが多くいる要因なのではないでしょうか。






 

◇ キャラクター





 それでもやはり初見の人にとってはハイコンテクストな作品には違いないわけで、では結局観る人を選ぶニッチなものでしかないのかというと、それも否です。
 構造的には非常に複雑な作品である一方、単純に「キャラ萌え」で終始観ていられるというのも本作の特長です。

 『UN-GO』はキャラクターデザインにpako高河ゆんを起用しています。気鋭のイラストレーターと漫画家によって登場人物達は美麗なヴィジュアルを与えられており、推理物という作品スタイル上どうしても静的な場面が多くても、彼らが佇んでいるだけで画が「保つ」のです。そうした外面だけでも十分に魅力的ですが、さらに重要なのはその彼らの内面です

 作中の近未来世界では、日本がある国に行った海外派兵を発端として報復の国内テロが勃発し、日本はその対テロ戦争に事実上「敗戦」します。その傷痕も未だ癒えない社会に『UN-GO』のキャラ達は生きており、誰もが自分の人生に何かしらの歪みを被っています。そこから事件が巻き起こり、人々は事件関係者として登場し、メインキャラは主に事件を解決する側として奔走します。その過程で眉目秀麗なキャラ達がふと生々しい心情や葛藤を吐露する瞬間、そこにアニメ独特の実在感が生まれ、彼らをたまらなく身近に感じることができるのです。



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 そうした魅力は主人公の結城新十郎がまさに最たるものです(上図)。

 作中の社会は通信メディア企業会長の海勝麟六に牛耳られており、発生する事件も彼によって真実とは異なる世間に都合の良い「美談」として処理されてしまいます。新十郎は探偵として麟六に立ち向かうも毎回勝つことはできず“敗戦探偵”の汚名ばかりが積み上がっていく、というのが毎話のパターンです。世間が耳触りの良い麟六の美談に迎合する中でも真実に目を向けようとするスタンスそのものが、彼をもう一つの呼称である“最後の名探偵”たらしめているのです。
 しかし新十郎は完全無欠のヒーローではなく、彼もまた弱さを抱える人間の1人に過ぎません。事件関係者に感情移入して真相解明を躊躇ったり、自らの先入観で真実を見誤ったりすることも少なくありません。そんな欠陥があるからこそ、彼が事件の犯人とそこに共感する者を一方的に指弾するだけの展開にならず、ひいては作品全体としても視聴者を置き去りにして話のテーマが先走ってしまうような事態にもならない。新十郎の迷える主人公としての在り方が本作の優しさの核となっているのです。
 


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 他にも、温室育ちのお嬢様な一方で絶妙にお転婆な海勝梨江(上図)、新十郎の相棒として謎めいた能力を発揮するも基本的にはやんちゃな魔少年である因果、冷静有能な人工知性だけれどどこかお茶目な佐々風守(下図)……等々、どのキャラも何かしらのギャップ萌えを抱えています。とにかく彼らの人間臭さを追いかけていれば、作品の中心に自然とピントを合わせて観ることができるはずです。


 また、数多の愛すべきキャラ達を演じるキャスト陣にも今でこそ注目すべきでしょう。主人公の新十郎を演じるのは今や人気俳優の勝地涼。アニメ作品の主演に本職声優ではない人物を起用するというのはいつの時代も賛否が分かれる試みですが、本作では彼の良い意味での異物感が新十郎の朴訥なキャラと十二分にマッチして相乗効果を上げています。ヒロインの梨江にはメインキャラ級の役柄は初の新人声優だった山本希望、風守には2018年にドラマ『ホリデイラブ』『ブラックスキャンダル』等で改めて注目された松本まりか。彼らのブレイク前夜の確かな仕事ぶりを振り返る意味でも、『UN-GO』は是非おススメです。





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◇ ミステリ作品として





 作品構造やキャラ・キャストで『UN-GO』を捉えてきましたが、ここからはジャンル作品の視点から覗いてみましょう。
 本作をエンタメのジャンルで分類する場合、まずは「ミステリ」がメインになるでしょう。そこから分析した場合、本作がミステリとしてかなり挑戦的な作品であることが分かります。

 ミステリには「フーダニット(犯人当て)」や「ハウダニット(トリック解明)」等様々な形式がありますが、『UN-GO』は犯人の動機を問う「ホワイダニット」に重きを置いています。

 第1話で殺人が発生した時、皆が犯人を探す中で新十郎は呟きます。

 “問題は「誰が」ではなく「何故」かもしれないな”

 まさに、この作品ではホワイダニットをやりますよという宣言です。



 勿論毎回の事件の中で犯人やトリックの解決も行われるのですが、その上で犯人は何故犯行に及んだのかの解明が一番の盛り上がり所になります。そしてそこから犯行動機に関連する社会背景が浮かび上がり、本作の社会派SF要素へとスムーズに接続されていくのです。この構成により、『UN-GO』は物語とジャンル性を見事に融合させています


 また、本作は「後期クイーン的問題」と向き合った作品でもあります。ミステリ作家・法月倫太郎の言及から生まれた命題で、要約するならば「①探偵役も作中の登場人物である以上、神の視点を持ち得ない。故に、探偵役の解明した真実を100%信用できるのか」「②探偵役と事件の発生は不可分であり、探偵役の活躍は事件関係者を救っているとは言えないのではないか」というものです(「初期クイーン論」より)。
 前者については、新十郎の相棒である因果(下図)の「相手にたった一つだけ本当のことを言わせる」という特殊能力によって問題を上手く回避しているとされています(「[座談会]UN-GOと探偵小説」より)。そして後者については、ストーリーの中盤で「別天王」という新たな超常的存在が登場してから「新十郎の推理によって傷つく人間」「事件によって探偵役を呼び寄せる」要素に絡めた話が展開していきます。

 論理性を軸とするミステリと何でもありのファンタジーは余程上手く処理しない限り食い合わせが悪いような印象がありますが、『UN-GO』ではファンタジー的要素をむしろ作品の根幹に設定することにより、ミステリとしての強度を高めています


 このように、ミステリというジャンルの枠組みや表現方法を意欲的に突き詰めた作品としても一見の価値ありなのです。





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◇ 坂口安吾原案作品として





 改めて、坂口安吾作品のアニメ化という側面にも目を向けてみましょう。


 クレジット上は『安吾捕物帖』が原案ということになっていますが、厳密にはそれだけではありません。毎話『安吾捕物帖』のエピソードを下敷きにしつつ、安吾の他作品(『夜長姫と耳男』『アンゴウ』『白痴』等)の要素も織り交ぜています。また、新十郎が毎回事件解決のクライマックスで発する科白には安吾の評論や随筆(『堕落論』『余はベンメイす』『デカダン文学論』等)からの引用が多く含まれています。そして元作品の人物設定や文化風俗を巧妙に近未来のものに置き換えており、坂口安吾のファンではあれば作品のあちこちにそのモチーフを見つけることができるでしょう。


 そして、本作はただ安吾の作風や思想をトレースしただけでの作品ではありません。

 例えば、第5話「幻の像」では話の骨格は『安吾捕物帖』内の「幻の塔」と随筆の「特攻隊に捧ぐ」を元にしています。安吾は戦後に書いた文章で戦争や日本社会の旧弊を強く批判しており、「特攻隊に捧ぐ」でも特攻隊という仕組みを厳しく糾弾しています。しかしその一方で特攻隊の若者達自体には畏敬と称賛の言葉を送っています。文章は戦争批判と自己犠牲賛美の間を行き来し、最終的には以下のように着地します。

“青年諸君よ、この戦争は馬鹿げた茶番にすぎず、そして戦争は永遠に呪うべきものであるが、かつて諸氏の胸に宿った「愛国殉国の情熱」が決して間違ったものではないことに最大の自信を持って欲しい。
 要求せられた「殉国の情熱」を、自発的な、人間自らの生き方の中に見出すことが不可能であろうか。それを思う私が間違っているのであろうか。”

 『UN-GO』の第5話でも、原案と同じく若者達の自己犠牲を利用する者への批判と本人達への憧憬を対立させています。しかし、本作では結局死んだ者の真意を誰も知ることはないという戒めと勝手な願望投影の裏で利潤を得ている者への批判を最後に持ってきて終わります。用いているメッセージは原案のものでありつつ、その配置の順番を入れ替え微妙に指摘を足すことで、安吾の特攻隊へのアンビヴァレントな想いに批評的な視点を当てて表現しているのです。



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 また、最終話で新十郎と宿敵の海勝麟六が改めて対立する一幕があります。その時に両者は自分のスタンスを言葉にして示すのですが、その科白はどちらも安吾の文章からの引用なのです。作品内で安吾の言葉を代弁するのは新十郎ただ一人ではなく、彼を含めた登場人物全体が安吾の似姿です


 このように、『UN-GO』は『安吾捕物帖』を中心とした坂口安吾の諸作品の集成であり、彼の作家性・人間性をその矛盾や迷いもひっくるめて丸ごと拾い上げ、人物・科白・物語全てを用いて現代に甦らせてみせた、まさに原義でのアニメーション(生命を吹き込む)作品と言えるでしょう。







 

◇ 時代性





 そして最後に、2018年の「今」本作を観る意味を考えてみましょう。


 前述した通り、原案の『安吾捕物帖』が明治初期の作品世界を昭和20~30年代の時事に重ね合わせて描いた手法を踏襲して、『UN-GO』もまた各エピソードに現代社会の時事を盛り込んでいました。

 第1話では「戦災からの復興」を目的としたパーティが開かれており、それは否が応でも東日本大震災直後の日本の状況を想起させます。また、復興資金と汚職・賄賂の関係はODA不正問題等も連想できるでしょう(『UN-GO OFFICIAL LOG BOOK』より)。続く第2話では娯楽の規制や著作物の違法アップロードが事件の背景にあり、第3話4話ではそれからテーマを引き継ぐようなかたちで表現と公序良俗の対立、創作者の倫理の領域に踏み込みます。そして第5話では自己犠牲者への感情移入の問題、第6話では民間刑務所、第78話では戦争を扱った作品へのスタンスなどが取り上げられます。第9話~11話の最終エピソードでは、サイバー犯罪やエネルギー利用の是非等が事件の中心となり、陰謀論への言及とともに9.11や3.11との向き合い方が科白によってほぼ直接的に語られます。また、劇場版の『因果論』では海外派兵や外国の武装組織に邦人が拉致・殺害された事件が元ネタとなっています。



 また、念のため書いておきますが、『UN-GO』はそれら諸問題について何か特定の信条や行動を要求するものではありません。ストーリー・脚本を務めた會川昇が“自分は作品を通して社会に一言物申したいわけではなくて、自分がいま生きていて、一歩家の外に出ればある空気をそのままアニメとか小説の中にふと流し込んだときに、やっと自分の作品ができあがるような気がするのです。”と語るように(「[座談会]UN-GOと探偵小説」より)、それはあくまでフィクションと現実の間の架け橋なのです。


 こうして振り返ってみると、『UN-GO』の各エピソードの題材となった時事は放送当時の2011年に耳目を集めていたのは勿論、あれから7年が経った2018年の今も現在進行形でより深刻化しているものばかりだということが明らかです。特に海外での邦人拉致については、2015年からシリアのテロ集団に拘束されていたジャーナリストが今年になって釈放された件で再び社会を席捲する話題となりました。表現の自由とその規制についても、ポリティカル・コレクトネスやフェミニズムと関連してますます切実な問題として議論されてきています。第4話での新十郎とある人物の道徳問答はより迫真性を増して響いてくることでしょう。



 『UN-GO』の社会派要素は、放映当時から時を経て色褪せるどころかむしろよりクリティカルなものとなって観る者に訴えかけてくるのです。あるいは、現実社会の方がかつて本作に風刺された未来に着実に近づいており、物語をより身近に感じられるようになってしまった、と言うべきでしょうか。






 

◇ おわりに





 他にも光陰の表現が素晴らしい作画演出や物語を常に統制する劇伴、小説版や漫画版等のメディアミックスの秀逸さ等々、語りたいことは尽きないのですが、論考のまとまりのために一旦ここで締め括らせていただきます。


 『UN-GO』を初めて観た時、「きっとこれは何年経っても残る作品になる」と思っていましたが、ここまでの強度と射程を備えたものだとは想像以上でした。「いつ観ても今観るべきアニメ」として『UN-GO』は存在しています。2011年当時の社会をリアルタイムで映した『UN-GO』から2018年今現在にも呼応した『UN-GO』までの間にその時々の『UN-GO』があり、そしてこの先も。
 

 観る人によって当然賛否は分かれるでしょうが、その重層性・時代性は唯一無二のものとして確かに心に刻まれると私は信じています。



 そしてまた何年後かに改めて本作を観直した時、そこには一体どのような新しい意味づけが生まれているのか――作中の新十郎の言葉を借りるなら、やはり“これからが楽しみ”で仕方がないのです。







 

《参考資料》 


  • 坂口安吾「特攻隊に捧ぐ」『占領軍検閲雑誌』雄松堂、1983年/引用は青空文庫より(https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/45201_22667.html
  • 日高昭二「『安吾巷談』・『明治開化安吾捕物帖』をめぐって―「開化」の終焉という逆説―」『国文学解釈と鑑賞』至文堂、1993年
  • 法月倫太郎「初期クイーン論」『現代思想』青土社、1995年
  • 編集・執筆:井上ゆかり、藤津亮太、野下奈生、野口智弘『UN-GO OFFICIAL LOG BOOK』学研、2012年
  • 構成:飯田一史「[座談会]UN-GOと探偵小説 會川昇×笠井潔×小森健太朗」『本格ミステリー・ワールド2013』南雲堂、2013年









執筆者 : 絵樟 (@EX5551



ブログ「江楠-weblog」にて、さらに詳細な『UN-GO』感想・考察も公開しています。

http://ex555weblog.blog.fc2.com/blog-category-15.html





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テーマ : アニメ・感想
ジャンル : アニメ・コミック

ネタバレ(論争)について考える

ツイートはこちら前の記事へ / 次の記事へ / コラム記事の募集についてはこちら / 一覧はこちら   
コラムNO.2   投稿日:2018/12/21   カテゴリー:【ネタバレ(論争)について】 【企画について】   
取り上げている主な作品:『ゲーム・オブ・スローンズ』『ふらいんぐうぃっち』『ラーゼフォン』『喰霊-零-
テキスト:PIANONAIQ(@PIANONAIQ



 


◇ はじめに 





SNS(ツイッター)とアニメ視聴(文化)の結びつきが決定的に強固となった昨今の深夜アニメシーンにおいて定期的に論争や議論を生んでいるネタバレ問題――


論争が起きるたびに私も自分の考えをちょこちょこ呟いていたのですが、コラム記事の募集も始めたことだしこの際、「私はこう考えてます!」というのをきっちり文章に纏めてみよう、と思ったのが今回この記事を書き始めたきっかけです。


自分の考えを述べるとともに、これからも不定期に議論が起こるであろうこの問題の視界を明瞭にすべく、また議論が起きた際の一助となるような内容の記事を目指し争点となりそうなトピックについて可能な限り取り上げてみるつもりです。


「深夜アニメの歩き方」で作品紹介記事を書く上でも「ネタバレを避ける」というのはかなり上位に位置する問題であり、これまでそこに注意して取り組んできた中で感じたことも幾つかあるので、その辺も織り交ぜつつ語っていきます。




よろしければ最後までお付き合い下さい。

 

 




【目次】



◇ 【トピック1】ネタバレと事前情報の違い


〈註1〉  作品紹介記事を書く難しさ
 
◇ 【トピック2】ネタバレを避けたい理由
◇ 【トピック3】ネタバレ要素の有無と作品強度について
◇ 【トピック4】ネタバレに腹を立てる理由、ネタバレが平気な理由


〈註2〉  『ラーゼフォン』と『喰霊-零-』からネタバレ問題を考えてみる


◇ 【総括】ネタバレ論争について




アルジェントソーマ イメージ43

ネタバレ厳禁度:★★★★★  (厳重注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が著しく低減する可能性あり)



若おかみ イメージ 426

ネタバレ厳禁度:★☆☆☆☆  (まったく問題なし)






 

◇ 【トピック1】ネタバレと事前情報の違い






先日、とある今期の話題作のある話数の視聴に際し、視聴前に「神回」という言葉をツイッターの感想でみかけたことで、画面内のあらゆるものを厳しい目で判定するような妙に身構えた視聴になってしまい、結果どこか素直に楽しめず損したような気分になることがありました(普段通り自然に見れていればもっと大きく感情が動いたようにも思います)。


「神回だ」、というのは単に感想を述べているだけですからネタバレとは違いますが、ツイッターなどで事前に見聞きしたことが作品初見時の視聴に何らかの影響や変化を与える、という点で私の中ではネタバレに近い問題として見ているところがあります。


「ラストシーンで~~君が~~してしまうなんて凄すぎるし、神回だ!」となると、これは世間一般でNGとされる真のネタバレの領域に完璧に足を踏み入れてしまう感じでしょうか。(笑)


「これはダメ、ここまで語っちゃうのはNG」といったように、人によってそれがネタバレになるかどうかのレベルに違いがある、という問題ももちろんありますが、それはネタバレなのか事前情報なのか、といったあたりの定義や捉え方の問題も重要で、ここを明確にしておいた方が議論の混乱が避けられそうです。

私が個人的に問題だと思っている「神回だ」といった類のものは、ネタバレではなくどちらかといえば「事前情報」に属する感じになるのでしょうか。

ネタバレが悪なのか、事前情報が悪なのか――(本記事の主張を誤解されないためにも)この辺はきっちり分けて論じるべきだろうと思いますが、意外と世の中のネタバレ論争でもこの辺が共通認識として欠けていたりすることもあるのかな、ということで争点となりそうなトピックとして最初に取り上げてみました(事前情報の是非というのもその定義含めて難しいところですかね。作品の視聴を補助するような事前情報があった方が初見時により楽しめることも大いにあるでしょうから、ケースバイケースというか、ある作品の視聴に際し誰にでも当てはまる絶対そうした方が良いという見方はない、のかもしれません)。





とはいえ、「神回だ」という感想を書いた人を悪いとは思っていないことは念を押しておきたい部分です(どちらかといえば神回という言葉を聞いただけで普段通りの視聴が出来なくなってしまう自分の弱さを痛感する次第です……)。

また、あまりにも配慮がなさすぎる悪質なネタバレは言語道断だとしても、それでも最低銀のマナーを守りながら自由に感想を書いて楽しめる場がツイッターだと「私は」考えているので、ネタバレ感想自体を責めるつもりもないです。

 

何より、私自身、ネタバレにはかなり配慮して普段感想を述べているつもりですが、「神回だ」の類の感想は割と使ってしまっているので、「自分がする時は良くてされた時は駄目」なんてのは道理に合わないだろう、というのもあります。(笑) 〈註1〉


正直にいえば、確かに損した気分にさせられたという負の感情もありますが、(私の考える)ツイッターというものが上で述べたような場であるならば、(ミュートワードに設定するなど)本気で自衛手段を講じなかった自分自身に非がある、というのが大筋のところでの私の考えになります。


自分にとって大事な作品であったり、ネタバレを含むような種類の作品(この辺は後述します)の時ほどネタバレを回避することに神経質になる側面もあると思いますが、そういう時でも私が滅多に自衛策を講じることがないのは、「ネタバレを踏みたくはないけど何らかの感触は得たい」という非常に身勝手ともいえる思惑があったり、突き詰めて考えれば「そこまで本気で大事だと思っていない」から、ということもありそうです。


普段色々な方の興味深い感想や有益な情報に接することができて楽しませてもらっている、反面そういったリスクもある、ということで差し引きゼロ(よりは圧倒的にプラス)ではないかな、と考えている節もあるでしょうか。




 

〈註1〉  作品紹介記事を書く難しさ



本論から脱線した話になるのでこちらに書くことにします。


「神回」についてあれこれ述べましたが、『十二国記』の紹介記事の中で、「~話が超神回!」と大々的に書いてしまっていることについて疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれないので、一応どういった考えなのか説明しておきたいと思います。


まず、「神回だ」と事前に聞くと身構えてしまってあまり良くない視聴体験になることもある、というのは自身の体験でもわかっているので、作品紹介記事の中でも「できれば使いたくない」とは思ってます。


特に大きな期待もしていない状態で世間で神回といわれるような名作話数にふと出会うことが作品体験としては理想的ともいえるものかもしれません。

なので、仮にある推したい作品があったとして、それがわざわざ紹介するまでもないほどの名作で誰もが高い確率で見てくれるような作品であるならば、「~話が神回なので是非見てください」といった紹介の仕方はマイナスともいえるでしょう。


一方で、強くプッシュしなければなかなか見てもらえないような割と埋もれがちな作品であったり、長丁場の物語で視聴継続のモチベーションが上がる何かがなければなかなか完走が難しいと思える作品の場合には、そういった作品の推し方も有効であるのかなと思います(その作品には神回がある、までにとどめて具体的な話数は明示しない、のも場合によってはひとつの手かなと最近考えるようになりました)。


あと、これは言い訳にもなってしまいそうな理由ですが、記事の中の「~話が神回」という文言でその作品に興味を持って見始めた方がいらしたとして、意外と記事を読み終わると具体的な話数については頭から離れる場合もあるのではないかと考えてます。

「確か~話あたりが神回だったよな」みたいな感じで視聴を進めていれば、該当話数に当たってもそこまで身構えて大きなダメージを被ることもなくなるのではないか、と。


ということで、作品に応じてこの辺をあれこれ考えながら紹介記事を書いていますが、正直未だに難しいです。


「深夜アニメの歩き方」はどういった作品紹介の仕方が良いのかを探る実験と試行錯誤の場でもあると考えています。







 

◇ 【トピック2】ネタバレを避けたい理由






次はこれについて考えてみます。


私は、そこまで神経質にはならないと自分では思っていますが、何だかんだやはり「ネタバレは避けたい派」なのだと思います。


理由を考えてみると、――「エンタメ作品の楽しみ方、エンタメ作品に何を求めるか」は人それぞれだと思いますが――自分の場合は、初見時にのみ得られる大きく心が動かされる感動や衝撃、言い換えれば物語体験における一回性を割と重視している人間だから、という風にいえそうです。


とはいえもちろん、その作品に演出面での巧さだったりストーリーの力に頼らない部分での面白さが備わっていれば、たとえネタバレを踏んでもそういった部分で十分楽しめるし満足もできます。



ただ、事前情報なしでネタバレも踏まず無防備な状態で衝撃的なシーンに不意に立ち会った時の心拍数が上がるような興奮や衝撃というものも確かにあり、私はこういった経験をエンタメ作品、ひいては「アニメを見ること」に大きく求めているということなのだと思います。

同時に、その時の興奮の度合いであったりどれだけの興奮(感動)を与えてくれた作品なのか、といった側面がその作品に対する思い入れの深さや作品評価の上下に関わっている節もあります(この辺のスタンスにはおそらく賛否両論あるだろうと思います)。



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アニメではありませんが、『ゲーム・オブ・スローンズ』という「世界で最も面白い海外ドラマ」といわれても決して大袈裟には聞こえない歴史的名作があります(来年いよいよファイナルシーズンを迎えます)。

この作品は、絶対ネタバレを避けて味わいたいような衝撃的なストーリー展開が売りであると同時に(普通のファンタジー作品なら絶対死なないだろうと思うような主人公クラスの登場人物が実に無残で衝撃的な死を遂げます)、たとえネタバレを踏んだとしても揺らぐことのない脚本や映像の圧倒的な強度と演出の巧さを備えているところが圧巻です(後述しますが、この二つを高い次元で両立することは極めて難しく、それが出来た作品は「最強のエンタメ作品」といってもよいのではないかと私は考えています)。

で、私は、この作品の中でもファンの間で一際衝撃的とされる話数を「幸運にも」事前情報一切なしの状態で見ることが出来た結果、もうここで見るのやめようか?と本気で悩むほどの今まで味わったことのない衝撃に心を貫かれたのです。余談ですが私はこの話数を「悪魔の話数」と勝手に呼んでいます。(笑)

ここで判断を誤らず視聴を続けたことでその後「世界最高の海外ドラマ」と心から思える唯一無二の体験が出来たわけですが、私が『ゲーム・オブ・スローンズ』のことを思い返す度に、この話数での全身を貫いた衝撃が頭をよぎり、それが「凄い作品だ」という声を大きくさせると同時に作品に対する評価をもより一層高めていると感じるのです。故に、今思えば、事前情報なしであのような体験が出来たことは幸運だったのだと――



この辺は本当に人それぞれでしょうが、私の場合は、こういった理由でネタバレを避けたいということです。








 

◇ 【トピック3】ネタバレ要素の有無と作品強度について






たとえネタバレを踏んでも何の問題もなく楽しめる作品、ネタバレによって急激に面白さが減る作品、そもそもネタバレしようのない作品――


受け取る側の話ではないので争点となるトピックではないかもしれませんが、次は作品側の問題としてネタバレ要素について考えてみたいと思います。



ここで企画の話になりますが、「深夜アニメの歩き方」では、以下のような「ネタバレ厳禁度」という指標を設けています。





★★★★★  (厳重注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が著しく低減する可能性あり)
★★★★☆  (要注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が低減する可能性あり)
★★★☆☆  (少し注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が少し低減する可能性あり)
★★☆☆☆  (ほとんど問題なし)
★☆☆☆☆  (まったく問題なし)




記事を書く際、これが結構判定の難しい厄介な指標であると感じることも多々あるのですが、作品の傾向を知るためのひとつの目安になるだろう、ということで採用しています。



ふらいんぐうぃっち 68



例えば、『ふらいんぐうぃっち』のネタバレ厳禁度は「1」(まったく問題なし)としています。

作品記事の中で「日常アニメとして(事件性や意外性のある展開や劇的なドラマで強い引きを生み出すような)ストーリー重視の作品に一石投じるような作品」といった感じで紹介しているのですが、この作品は記憶を掘り起こして考えても、ネタバレして問題になりそうな要素がそもそもないんです。

つまり、ここでのネタバレ厳禁度「1」は、(そういった理由で)そもそもネタバレの心配がまったくない作品であること、と同時に、衝撃的な急展開で強い引きを作って視聴者を楽しませるような傾向の作品(=「ストーリー重視の作品」)ではなく「日常アニメ的楽しさを核として備えた作品」であったりネタバレに影響されない演出面での上手さなどがあることも意味しています。



ストーリー重視の作品に一石投じる」、といったニュアンスにしたのには理由があります。

本作品のような「日常アニメ的楽しさを核として備えた作品」というのは、「ストーリー重視の作品」と違ってネタバレの心配がない上に、繰り返し何度見ても楽しめる点でエンタメ作品としてのある種の高い強度をもっていて、それは後者と比べての優位性といってもよいのではないか――

好みの問題も絡んできそうですが、こういった考えを汲んだニュアンスということです。



対して、ネタバレ厳禁度「4」や「5」が意味するのは(作品評価順リストの方でこれまで取り上げた全作品のネタバレ厳禁度を纏めていますのでよかったら参考にしてみて下さい)、その作品があっと驚く衝撃的な展開を持った(ストーリー重視の)作品であり、ネタバレ防止のためなるべくググったりしないで見た方がよい、といったところでしょうか。



私はもちろん、このような(ストーリー重視の)エンタメ作品も好きです。


が、一回見終えてしまうと再視聴したいとはなかなか思えない――言ってしまえば、ネタバレしても揺らぐことのない脚本や映像の強度、演出の巧さのない――作品に対してはどうしても評価を下げてしまう傾向、尺度が私の中にはあります。



先に述べた、判定の難しい厄介な指標であることの理由にもなるのですが、前項でご紹介した『ゲーム・オブ・スローンズ』のような作品の「ネタバレ厳禁度」を考えるのは少々厄介です。

この作品が、大きなネタバレ要素を含む衝撃的なストーリー展開とネタバレどうこうに左右されない巧さを両立した(稀有な)作品であることは既に述べた通りです。

よって、普通に考えればネタバレ厳禁度は最上限である「5」としたいところなのですが、そうすると「待てよ、確かに衝撃は減るけどそれ以外で十分過ぎるほど面白いので、ちょっと何かしっくりこないな……」といった思考に陥るわけです。

このような場合は、「※ただし、ネタバレを踏んでもこの作品の面白さの根幹はまったく失われない」といった文言を補うことで何とか対処はできるのですが、この辺を考える作業というのはまあ厄介といえば厄介ということです。



世の中のエンタメ作品がすべて『ふらいんぐうぃっち』のような日常系になったならネタバレ論争もなくなって平和になるのかな、と思わなくもないですが、そんな世界は言うまでもなくつまらないでしょうね。(笑)








 

◇ 【トピック4】ネタバレに腹を立てる理由、ネタバレが平気な理由






最後はこれについて考えてみます。


「ネタバレに腹を立てる理由」については【トピック2】で述べた「ネタバレを避けたい理由」とほぼ重なるのではないかと思います。



つまり、初見時にのみ得られる大きく心が動かされる感動や衝撃(=物語体験における一回性)がネタバレによって奪われてしまった(不完全なものになってしまった)から腹を立てるのだろうと。



「ネタバレが平気な理由」の方は少し難しいですね。



それは私がどちらかというと「ネタバレを避けたい派」に属するからでもありますが、想像力を働かせて考えてみることにします。


ひとつすぐに思い浮かぶのは、やはり【トピック2】で述べた、

その作品に演出面での巧さだったりストーリーの力に頼らない部分での面白さが備わっていれば、たとえネタバレを踏んでもそういった部分で十分楽しめるし満足できる

といったあたりでしょうか。



エンタメ作品との接し方の中で、「物語体験の一回性」をそこまで重要視してない人もいるのかな、とも思いますが、仮にそういう方がいるならば「私ネタバレ全然平気」という意見にも頷けてしまいます。


あらかじめネタバレを踏んでおくことで、衝撃的展開で心拍数を上げることなく安心して作品を楽しめる――こういった意見も何度か目にしたことがありますが、これも結構気持はわかります(わかりますが、これを理由に「ネタバレは善である」とは当然いえないでしょう)。


あらかじめネタバレを踏んでおくことで、ストーリー展開を気にせずそれ以外の細部により目を向けられるので違った楽しみ方ができる――これも頷けますが、初見時のみに許される楽しみ方を最初から犠牲にしている点では、個人的には何だかもったいない気がしてしまいますね(これもネタバレを善とする理由にはならないと思いますし、当然ですが他人に強要できるものでもないなと)。 〈註2〉



以上、「ネタバレが平気な理由」については今のところこれぐらいしか思い当たるものがありませんが、もし「それは違う」「私はこう考えている」といったご意見がありましたら、是非当企画の方にお寄せ下さるとありがたいです。




 

〈註2〉  『ラーゼフォン』と『喰霊-零-』からネタバレ問題を考えてみる



「あらかじめネタバレしておくことで違った楽しみ方ができる」という話に関しては、『ラーゼフォン』という作品について考えてみると面白いのではないかと思います。



ラーゼフォン 88



『ラーゼフォン』(2002年)は(私にとって極めて思い入れの深い作品で今後作品紹介記事を書く予定もあるので細かい作品説明は省きますが、)簡単に言うと、『エヴァ』の後続作品として語られることの多い(実際には『勇者ライディーン』からの影響の方が大きい)出渕裕監督によるSFロボットアニメの名作といってよい作品です。

各話が「楽章」、パイロットが「奏者」と呼ばれたり、エヴァの人類補完計画に相当するものとして「世界の調律」という謎めいた大仕掛けがあったりと、音楽に関するモチーフが散りばめられた独特の世界観が特徴です(あえてエヴァとの違いで語れば、切ない恋愛要素を作品の中心に据えている、キャラ達の生き様をしっかり描き切った群像劇としての素晴らしさ最後にきっちり完結して満足感を与えてくれるところ、などにおいては十分エヴァを上回る良さを持った作品であると個人的には考えています)。


そんな『ラーゼフォン』ですが、大きな推しポイント(優れたところ)として、「二週目が楽しい作品」というのがあります。

上手に謎や仕掛けが盛り込まれた見せ方の上手い作品で、初見時においては「え!?もしかしてそういうこと?」という楽しみ方ができるように設計されています(といってもそこまで引きの強い作品ではないので、視聴継続が難しいと感じる方も多いかもしれません……)。

と同時に、現在第一線で活躍するトップクリエイター達が当時総結集した作品だけあって、ネタバレしても揺らぐことのないクオリティや巧さも備えており、各話のレベルの高さは相当なものになっていると思います(一例ですが、ファンの間で名高い第19楽章「ブルーフレンド」などは脚本、映像、音楽とあらゆる要素が傑出したレベルにある極めて高いカタルシスの得られる話数といえるでしょう)。


ここに更に「二週目が楽しい」も加わるのがこの作品の凄いところ。


ネタバレになるので詳細は語れませんが、極端な例でいうとOPでのヒロインの何ともいえない複雑な表情さえも(作画も素晴らしいです)、謎が明らかになった後に見ると「そういうことだったのか、切ないな……」と頷けるものになっているのです。


このように『ラーゼフォン』は最低でも2度違った形で濃厚に楽しめる作品なのですが、もしネタバレしてしまったとしたらあの初見時の胸躍る感覚は味わえず最初から二週目の楽しみ方に近いものになり、それは非常にもったいないと思ってしまうわけです(ちなみに劇場版『ラーゼフォン 多元変奏曲』も必見ですが、内容はTVシリーズを別視点から再構成したもので盛大なネタバレになっているので、TV版の後に観ることを強く推奨いたします)。



喰霊3 75



喰霊-零-』(2008年)といえば、真っ先に頭に浮かぶのは、「深夜アニメ史に残る衝撃的な大仕掛け」でしょうか。

これについては見てのお楽しみとしかいえませんが、あくまで飛び道具的な仕掛けといいますか、仮にネタバレしてしまったとしてもゼロ年代深夜アニメの中でも屈指の人気作といってよい本作の面白さはほとんど損なわれないのではないかと思います(ちなみに2008年は他に『とらドラ!』、『ef - a tale of melodies.』、『ミチコとハッチン』、『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』、『コードギアス』(2期)などもあり、深夜アニメ史においても稀に見る当たり年でした)。


ネタバレ問題を考える上でここで話題にしたいのは、本作の面白さの土台となっている作品構造です。


『喰霊-零-』は、最初に現在のある重要なシーンを見せておいて以降はがっつり過去編に入る、そしてある時点で最初のシーンに舞い戻りそこから更に先を描くといったタイプの作品です(名作『Gungrave』などもこのタイプの作品です)。

最初に現在編を見せてから過去編に飛ぶこのような手法は、制作側自らがネタバレすることで視聴者に『ラーゼフォン』における2週目のような楽しみ方をさせるもの、と(少々強引ですが)捉えることもできます(よってこの手法のメリットのひとつはネタバレの心配がないということもできるでしょう)。

本作がこの手法を選んだのはおそらく正解で、それによって「ゼロ年代深夜アニメ屈指の人気作」という今の評価を獲得することができたのだとも思いますが、別の選択肢として、最初に現在のシーンを見せず普通に過去編から時系列通りに始めてある話数で現在のそのシーンを衝撃的な展開として配置するやり方もあっただろうとは思うのです。

で、このいわば普通のやり方にした場合は、一気にネタバレの危険性のある作品になります。


仮にもし『喰霊-零-』がこの普通のやり方で構成されていたら、きっとネタバレを踏んで「損したー」と嘆く人も出てくるはずです。

しかし、実際の『喰霊-零-』が証明しているように、実はネタバレを踏んでも十分に面白いし楽しめるわけです。


何が言いたいかというと、


実は十分楽しめているのに損した気分になる、という意味で、ここでの「損したー」という嘆きは単にネタバレしてしまった事実に対する悔みのようなものである可能性もあるということです。

お話を作る(語る)側が設定した一番面白いと思われる物語の楽しみ方を完全な形で味わえなかったことを悔やんでいる、ともいえそうですが、いずれにしても、その人の内にある「ネタバレ=絶対避けるべきもの(悪)」という強迫観念に近いものがこうした嘆きを生む原因になっているかもしれないということです。


邪推というかかなり突拍子もない主張である気もしますが(笑)、ネタバレ問題の深層部に実はこういったこともあるのではないかと。







 

◇ 【総括】ネタバレ論争について






ネタバレについてあれこれ語ってきましたが、結局のところ、不定期に話題に上るとはいえ論争というほど大がかりでも物騒なものでもない、というのが個人的な印象ですかね。


「ネタバレは悪である」「いや善である」なんて断定的に主張する人も中にはいるのかもしれませんが、そんな風に断定できるものではないし簡単には結論も出ない、人の数だけ善悪や多様な考えがある、といったように事態を冷静に見ている人がほとんどなのではないか、とも思っています。


論争については「また起きたのか」と割と冷めた目で見ている、一方で、ネタバレ問題そのものやネタバレでダメージを被ることは切実であると考えている――そんな感じでしょうか。



ネタバレを避けたい人もいれば平気な人もいる。



自分が平気だからといって、他人も同じだとは思わない。おそらく数としては避けたい人の方が多いだろうから、そういった人達に嫌な思いをさせないよう最低限の配慮はしよう。


こうなってくると一般常識とかマナーの問題にもなってきちゃいますけど、「嫌な思いをさせないよう最低限の配慮はしよう」といったあたり(もあまり押しつけがましくなると少し嫌な感じはありますかね……)を考えると、ネタバレ問題って行き着くのは「各人がSNS(ツイッター)をどういう場として考えているのか」みたいなところだったりするのかなとも思います。



私のツイッターに関する考えは【トピック1】で述べた通りですが、それ故にネタバレを踏んでしまった時には大抵の場合自衛手段を講じなかった自分が悪いと考えます。


が、もし違う考えを持っていれば、ネタバレした人に敵意を向けたりもするのでしょう。







SNS(ツイッター)とアニメ視聴(文化)の結びつきが決定的に強固となった昨今の深夜アニメシーン――


今後、この結びつきに何らかの変化が起こることはあるのでしょうか。



あれだけ流行っていたニコニコ動画が急激に勢いをなくしていったように、ツイッターに代わる何かが現れて、新たなアニメ視聴の形態(文化)が生まれることはあるのでしょうか。


あるいは、もしかしたらその前に業界的に厳しい状況にあることを伝え聞く(深夜)アニメそのものがなくなってしまうことだってあるかもしれない――



話があらぬ方向へ膨らみそうなので、そろそろこの辺で終わりにします。


これからもネタバレ論争は不定期に起こるのだろうと思いますが、その際この記事が何か有意義な議論を生むきっかけを与えるようなものになれば幸いです。



最後までお付き合いくださりありがとうございました。




喰霊 390



この記事を書いていて、何だか『喰霊-零-』を無性に見返したくなってしまいました。(笑)



有名作であるとは思いますが、企画でも是非紹介記事を書いて取り上げたいと思っている作品です(ネタバレを避けて紹介する、という点では非常に難易度の高い作品かもしれませんが……)。


「書きたい」、という方がいらしたらもちろん大歓迎ですので、気軽にご連絡下さい。









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テーマ : アニメ・感想
ジャンル : アニメ・コミック

4クール作品と1クール作品の感動の種類と重みの違いについて

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コラムNO.1   投稿日:2018/12/9   カテゴリー:【アニメについて語る】 【企画について】   
取り上げている主な作品:『カレイドスター』『∀ガンダム』『涼宮ハルヒの憂鬱』『十二国記』『CLANNAD 〜AFTER STORY〜
テキスト:PIANONAIQ(@PIANONAIQ



 


◇ はじめに 





2017年、おぼつかない足取りで始まった「深夜アニメの歩き方」――


参加者の皆さまのお力添えもあり、2018年も終わりに差し掛かっている12月現在、取り上げた作品数も何とか60まで行きました(目指せ100ですが、先を見るとひたすら遠い道のりに感じ途方に暮れます……)


記事やサイトのレイアウト、ガイドライン記事の整備など諸々が整いようやく一区切りついたような感覚があります。


ということで、今回はこれまで企画を通して感じたことなどを振り返りつつ、記事タイトルにもなっている「4クール作品と1クール作品の感動の種類と重みの違い」という私にとって割と重要なテーマを取り上げ考えてみたいと思っています。




よろしければ最後までお付き合い下さい。

 

 




【目次】



◇ 超神回と4クール作品 
◇ 1クール作品が隆盛を極める現在の深夜アニメシーン
◇ 4クール作品と1クール作品の感動の種類と重みの違い
◇ 各クールの最高峰作品、今後の企画について





カレイドスター イメージ 75






 

◇ 超神回と4クール作品






企画の整備作業の一環として、本当につい先日のことですが、作品評価基準のオプションとして、

※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

というものを新たに設けました。




傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)




最新の作品評価基準です(「深歩評価」と勝手に名付けて呼んでいます)。



ところで、神回、という言葉にもしかしてあまり良い印象を持たれていない方もいるかもしれませんが、私は普段から割と便利な言葉として気軽に使ってしまってますし特別嫌な印象は持ってません。

ただ、正規の基準として用いる文言としてはどこか下世話な印象もなきにしもあらずでためらいもありました(超を付けると尚更……)。

が、やはり名作回などよりはインパクトがあるということで採用に踏み切りました(こういうガイド企画においてはある程度誇張するようなハッタリ的部分も大事だと考えてます)。




で、今のところこれまで取り上げた作品の中でこの基準に該当するのは、


カレイドスター
∀ガンダム
CLANNAD 〜AFTER STORY〜
十二国記



の4作品だけとなっています。


全て私が取り上げた作品ですし、神回かどうかの基準も人それぞれでしょうから至極主観的な判断になっているとは思うのですが、乱発してしまうと神回の基準が下がってその言葉の重みやありがたみがなくなってしまう、というあたりには十分配慮してシビアな目で判断したつもりです。



例えば、ラブコメの名作『とらドラ!』でも屈指の名作回といえる21話や、不朽の名作『プラネテス』の感動的な最終回

これらはどちらも心が打ち震えるレベルで圧倒されるようなアニメ史に刻まれし話数であるといってよいと思うのですが、私の中では神回であっても超までは付かないかな、といった判断となりました。


というわけで、超神回として厳選したこの4作品の該当話数はどれも私にとってはもう至上至高とでもいうべきものなのですが、そこで気付いたのが、「そういえばこの4作品どれも4クール作品だな」ということでした。





十二国記 イメージ 90






 

◇ 1クール作品が隆盛を極める現在の深夜アニメシーン






とはいえ、『カレイドスター』も『∀ガンダム』も(深夜枠で放送されたアニメ作品という意味での)「深夜アニメ」ではありません。


「深夜アニメの歩き方」というタイトルで深夜アニメではない作品を扱っているのでたまに「違いますよ」といったご意見をいただくこともあるのですが、その辺についてはこちら(→本企画について)のガイドライン記事でも触れてますので今回は説明を省きます。


2006年の『涼宮ハルヒの憂鬱』の大ヒットの後、2010年以降、特に『魔法少女まどか☆マギカ』のヒットによって今現在まで続く深夜アニメ盛況の流れが出来上がったのかなという漠然とした感覚があります。

でその『まどマギ』が代表するように、「深夜アニメといえば1クール作品」という印象も強く、昨今に至っては2クール作品ですらその数が減ってきてますます1クール作品の独壇場になってきているようにも感じています。


SNS、とりわけツイッターとアニメ視聴(文化)の結びつきが決定的に強固となった昨今の深夜アニメシーンにおいては、新たに始まった注目タイトルにどうしても話題が集中するので、

クールをまたがって放送される2クール作品への注目がごそっと減ったような印象を受けることも多くなっている



といった実感もありますかね(自分の周りの極一部の声や意見がシーン全体の多数意見のように錯覚しやすい危険性もツイッターには潜んでいると思うのでそこは気をつけねばと思っていますが、なかなか難しところです……)。


制作上の問題以外のこういったファンの注目度においても2クール以上の作品は現在のシーンでは色々厳しい立場にあるのかもしれません(例えば今期でいうと、放送前あれだけ注目されていた『BANANA FISH』ですらツイッターでほとんど感想を見かけなくなったなあというのがあります……)。



バナナフィッシュ 18



2クール作品ですらこうなので4クール作品はもっと厳しい、というより現状「4クールの深夜アニメ作品」はほぼ皆無といってもよいのではないでしょうか(現在放映中で4クールで展開されることが一部で話題となっている『ソードアート・オンライン アリシゼーション』にはこの点でも個人的に俄然注目したいところですし、頑張ってほしいなと思っています)。



深夜アニメであるかないかに特別こだわりはありませんが、



今後4クール作品がほとんど見られなくなる――より正確にいえば、『カレイドスター』のような傑作に出会えなくなる――のはやはり悲しいことだなあと。


これは私にとって割と切実な問題かもしれません――







 

◇ 4クール作品と1クール作品の感動の種類と重みの違い






まどマギ イメージ2 90




ただ前もって念を押しておきたいのは、1クール作品も当然面白いし素晴らしい、それから1クール、2クール、4クールそれぞれの尺に独自の良さがあるという点です。

特に気軽に手を出しやすく割とさらっと見れてしまうところは1クール作品が持つ圧倒的な強味といえる部分でしょう。


そうした諸々を踏まえつつ、その上でやはり2クールや4クール作品が好き、ということになるわけですが、ここで各クール作品が持つ強みやそれぞれの特色などについて、これまで企画で取り上げた全作品の採点を取りまとめた表(作品評価順リスト)を使って少し考えてみたいと思います。



「作品評価」の右隣に「尺区分」というのがありますが、これが各作品のクール数などを表しています(※1は1クール、2は2クール、4は4クール作品。1尺は1クール相当の尺を持った作品。例えば、1尺以上・5分枠、というのはは1クール以上の尺を持った5分アニメのこと)。



実はこの尺区分も割とつい最近整備作業の一環で導入したものです。


導入理由は主に二つあって、クール数というのがその作品を見てみようかどうか決める際に割と重要な要素・情報なのではないか、というのが一つ。

もう一つは、同じ【傑作】評価であっても1クールと4クールでは感動の種類や重みが違うので、同じ【傑作】として並べるよりは尺区分を添えた表示の方が(こういった作品ガイド企画における)情報としてより精度が高いものになるのではないか、といったものです。




もう少し表を見てみましょう。


尺区分の項目は、



①4クール(尺以上の)作品
②2クール作品
③1クール(尺以下の)作品



の3つのグループに分けて色分けしています。
 

下に行くほど③が目立ち上に行くほど①が目立つ、といった結果が鮮明に見て取れるかと思います(この表は一応「見て損はない作品」ランキングというものにもなってます〈註〉)。


③の1クール(尺以下の)作品で【傑作】評価を得た作品は今のところ『まどマギ』のみ、【名作】評価以上の作品数も②や③と比べて少ないことから1クール作品で傑作と評するだけの完成度を獲得するのは至難、というのは尺の性質上――つまり、1クールという短い尺の中で表現できるお話のスケール感にはある程度限界があるといった――割と一般的な傾向としていえるのかもしれません。



逆に4クールという長丁場の物語を最後まで見届けて【良作】や【佳作】評価どまりになってしまった作品はどうなのか、というあたりは興味深くなってきますが、4クールの良作というのもやはり2クールや1クールの良作とは異なった味わいがあってそれはそれで良いものだと思います(ちなみに本企画がこれまで取り上げた4クール作品は今のところ全て【名作】以上になってます)。





気軽に手を出しやすい1クール作品には、他に表の「引き」の採点項目で高得点になりやすい強み(傾向)もあるでしょうか。



つまり、短い尺の物語が持つ性質上割と話が早く展開していくので、飽きずに続けて視聴しやすい場合が多いということです(その日のうちに全話見るなんてのもその気になればそこまで難しくはないはずです)。


対して、4クール作品では「引き」が唯一といってよい弱点であるかもしれません。



先の超神回の話で挙げた4作品に関していうと、『カレイドスター』を除いた3作品全てが「引き」の点数の低さによって大幅に平均点を下げていることが表から窺えます(低いといっても65点以上にはなっているので及第点以上のレベルではあるのですが)。

どういうことかというと、これら3作品は最後まで見ればとてつもなく高い満足感や大きな感動が得られる作品である一方で、途中視聴継続が少々困難に感じられる部分もある、ということです。



3作品とも心の声は「絶対観て欲しいし観たほうがよい作品」なのですが、その声を小さくさせているのがこの「引き」に関わる部分であるといってもよいでしょう。

もし『カレイドスター』のように「引き」が強ければ、3作品とも何の迷いもなく【傑作】評価にしていた、というのもあります(『∀ガンダム』など「引き」の点が高ければほとんど満点に近くなる非の打ちどころのない作品です)。



∀ガンダム イメージ 6060 78



このように、「引き」がネックとなる4クール作品ですが、その強みは何といっても長い時間一つの物語と付き合うことによって終盤全身を包むような幸福感や形容しがたいほど大きな感動を味わえることでしょうか。



この点に関していうと、2クール作品と比べてもやはり4クール作品には格別なものがあります。


キャラの掘り下げやドラマが長い話数に渡って着実に積み重ねられていくとある時点からスイッチが入ったように面白さやキャラの魅力が倍増することがあります。

一度このモードに入るともう視聴が止まらなくなるほどの面白さで満たされますし、1話毎に得られる満足感や幸福感も序盤とは比べものにならないほど大きくなり、最終回まで1分1秒でも長くこの物語を味わっていたいと思うような至福の状態になります。


これこそが4クール作品最大の魅力でしょう。


4クール作品が「脚本/構成」、「キャラ」といった作品の屋台骨といえる特に重要な項目で高得点を得やすく(「劇伴」ももしかしたらそうかもしれません)それが傑作名作評価につながりやすくしている、というのもこの辺が理由でしょうか。


超神回は、これら全ての条件が整った上で、それでも生まれるかどうかわからない奇跡のようなものといった感じでしょうか。





 

〈註〉 


細かい話ですが、「見るべき作品」や「見て欲しい作品」としなかったのには理由があります。

「見るべき」だと押しつけがましいニュアンスがあるし中にはさほど響かない人もいるだろうこと。「見て欲しい」に関しては、ランキングの下の方にある作品であってもその気持ちは実は上位作品とさほど変わらない、といったあたりを考えて「見て損はない作品」としたのでした。

そもそも、企画で取り上げたいと思いある程度の労力を費やして記事を書いている時点で全ての作品にそういう想いはあるのかなとも思います。


ランキングの下位にある【佳作】や【水準作】評価の作品は、【傑作】と比べれば確かにその差は大きいですが、十分見るに値する良い作品である、ということも念を押しておきたい部分です。

便宜上【佳作】や【水準作】といったあまり気分が高揚しない表現を用いていますが、これらの評価が付いた作品でもツイッターなどで普通に「この作品は良作でした」と評する時の良作レベルに近い良さがあるのかなと考えています。







 

◇ 各クールの最高峰作品、今後の企画について






再び表を眺めてみましょう。


1クール作品についてあれこれ語りましたが、

まどマギ』や『響け!ユーフォニアム』のように、後の作品に何らかの影響を与えるようなエポックな側面を持った作品の出現率は割と高いのかなと思っていたりします。

傑作として堂々の3位に位置する『涼宮ハルヒの憂鬱』にしても、尺区分は(迷った末)2クール作品としていますが、作品記事の中でも初見の方には全14話で放送された2006年版を勧めているので、ハルヒを1クール作品の最高峰として見てもよい気はします。



ユーフォ イメージ 80


ハルヒ イメージ0 63 72



ただ、



繰り返しになりますが、傑作・名作クラスの4クール作品で味わえるずしりとくる感動はやはり格別です。


この点でいえば、『まどマギ』や『ユーフォ』ですら先に挙げた超神回のある4作品には遠く及ばないでしょう。


明確には断言できませんが、やはり4クールという尺の長さがこのずしりとくる感動に大きく寄与しているようには思います(例えば現実生活で6年間一緒に過ごし苦楽をともにした友達と1年間だけ過ごした友達だったら、例外こそあれど前者の方が色々と思うところが多かったり強かったりするのではないか、といった話と似たような部分もあるのかなと)。


作品と接しているその時間、良いことも嫌なことも全て忘れて己の人生の全てをその作品の物語やキャラに捧げるほどに没入できる稀有な感覚、見終わった後全身を包む圧倒的な感動と1日ではおさまらないほどの余韻――



こればっかりはなかなかうまく言葉では表現できないので、とにかく見てもらって実際に体験していただく以外ないですね。(笑)



これまで2クール作品については言及していませんでしたが、1クールと4クールの中間でバランスが良い、という点では「2クール作品が最強」という見方もできるかもしれません。

特にトップ5に入っている『新世紀エヴァンゲリオン』や『プラネテス』といった作品のことを考えればそれにも十分頷けます。



ただ、先にも述べたように昨今2クール作品は割と厳しい状況に置かれているのかなという印象があります(たまに放送される2クール作品の出来が芳しくないとますますその状況に拍車がかかるようで悪循環だなと……)。







ここで各尺区分の現時点における上位作品を整理してみます。


4クール尺以上は、『銀河英雄伝説

4クールは、『カレイドスター

2クールは、『新世紀エヴァンゲリオン

1クールは、『涼宮ハルヒの憂鬱

1クール尺以下は、『トップをねらえ!


といった感じになってます。


どれも「見て損はない作品」だと断言できる素晴らしい作品なので、もし未見の方がいらしたら是非見ていただきたいですね。


先にご紹介した超神回のある4つの4クール作品も同様です。



個人的には引きが強いという点も含めて『カレイドスター』を一番おすすめしたいところですが、

もしガンダムや世界名作劇場がお好きということなら、『∀ガンダム』でもよいですし、

異世界転生ものや作りこまれた秀逸な世界観を持った壮大な大河ドラマを見たいなら、『十二国記

良い音楽とともにとにかく泣ける話数を味わいたいなら、「人生」を描いた空前絶後のアニメ作品である『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』を、



といった具合に、気になったものをご覧になるのがよいかと思います。超神回とはいかほどのものか、騙されたと思って見てみてください。(笑)







最後は布教的な内容になってしまいましたが、話は以上です。


今回、こういった形で少しコラム的内容の記事を書きましたが、これから企画では従来の作品紹介記事に加え、「(深夜)アニメに纏わる任意のテーマを好きなように語るコラム的記事」も募集していこうと思います(後日ガイドライン記事を書く予定です)。



色々な方が普段思っていることを書き綴って本企画に寄せていただくことで様々な考えや見方が同じ場所に蓄積していく――それはとても面白いことではないかと。


私の「深夜アニメの歩き方」、私が考える「深夜アニメの魅力」、これからの深夜アニメ、ネットフリックス製アニメに物申す――

などなどテーマは本当に何でもよいです。


企画の作品紹介記事の内容に対して「私は別の意見を持ってる」といったものでもよいですし、今回のこのコラム記事に対する意見でもよくて、何というかそういう意見交換的なものも一つの場で記事を募集するからこそできるもので面白いのではないか、と考えてます。



ということで、是非お気軽に記事をお寄せ下さい(作品紹介記事ももちろん大歓迎です)。




最後までお付き合いくださりありがとうございました。







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★【名作>良作】『ウマ娘 プリティーダービー』(2018/Ave.83.1) text by こるげそ

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作品NO.61 『ウマ娘 プリティーダービー』




ウマ娘 イメージ1 50


 

ウマ娘 レーダー小5 【名作>良作】 1クール


世界観:90 脚本/構成:90 演出:80 
キャラ:85 演技(声優):75  引き:80 劇伴:75 作画:90


Ave.83.1   採点理由など詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★★★★☆





2018年4月~6月
TOKYO MX、他
全13話オリジナル作品(原作:Cygames)
スポーツ・競馬・ドラマ




監督:及川啓
シリーズ構成:石原章弘杉浦理史
キャラクターデザイン:椛島洋介辻智子
音楽:UTAMARO movement
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:アニメ「ウマ娘 プリティーダービー」製作委員会




<キャスト>

スペシャルウィーク:和氣あず未
サイレンススズカ:高野麻里佳
トウカイテイオー:Machico
ウオッカ:大橋彩香
ダイワスカーレット:木村千咲
ゴールドシップ:上田瞳
メジロマックイーン:大西沙織
エルコンドルパサー:高橋未奈美
グラスワンダー:前田玲奈
セイウンスカイ:鬼頭明里
トレーナー:沖野晃司
ほか




 

【目次】


 
【あらすじ】


【はじめに】



【本作の見どころ】


◇ 見どころ1・「友情・努力・勝利」のスポ根的な物語
 


◇ 見どころ2・迫力満点のレースシーン


◇ 見どころ3・細やかな史実再現と、大胆な史実改変 ~ 《注目話数》



【視聴の際の注意点】



【最後に。なぜスペが主人公なのか?】




ウマ娘 イメージ9 80







■ 作品評価     【名作>良作】   



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

◆ 作品評価順リスト(=「見て損はない作品」ランキング )はこちら




 
■ レーダーチャート評価   


ウマ娘 レーダー
【総得点/Ave.】   665/83.1
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 90
脚本/構成 : 90
演出 : 80                 グループA:Ave. 86.7
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 85
演技(声優) : 75             グループB:Ave. 80
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 80 
劇伴 : 75                 グループC:Ave. 77.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 90         
――――――――――――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





〇世界観 (90点)



ウマ娘というアイデア自体も良いのですが、特に序盤から中盤にかけて、そのウマ娘が人間と共存する世界をきちんと描写できていると思います。



〇脚本/構成 (90点)




最初から最後まで面白いです。また、序盤の場面や描写がちゃんと終盤の伏線になっているのも良かったと思います。



〇演出 (80点)




レースごとに演出が違っていて、飽きなかったです。



〇キャラ (85点)




各視聴者の好みにも大きく左右される部分ではありますが、みんなかわいいです。かわいいだけでなく、ゴールドシップのように個性的なキャラもいます。



〇演技(声優) (75点)




全体的には十分良いのですが、声優としては素人である細江純子さん(元女性騎手であり、現解説者)や武豊騎手が出演しており、純粋に演技を見た場合に少し下げざるを得ないです。



〇引き (80点)




基本的に1話完結型ですが、1日に何話か続けて視聴するのが苦になりませんでした。



〇劇伴 (75点)




普通に視聴していて印象に残る曲は正直多くはなかったです。ただ、それは劇伴が役割を果たしているからだと思います(劇伴って物語を盛り上げ、視聴者に集中させるのが役割だと思うので)。



〇作画 (90点)




P.A.WORKSさんだけあってかなり良いと思います。女の子がかわいいのは当然として、レース場の大観衆や、芝・ダート・ウッドチップといったコースの質感もきちんと描き込まれています。




■ ネタバレ厳禁度   


★★★★☆  (要注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が低減する可能性あり)







 

【あらすじ】





ウマ娘 イメージ4 80




これは異世界から受け継いだ輝かしい名前と競走能力を持つ
“ウマ娘”が遠い昔から人類と共存してきた世界の物語。

田舎から都会のトレセン学園に転校してきたウマ娘・
スペシャルウィークは、チームメイトたちと切磋琢磨しながら「日本一のウマ娘」の称号をかけて
<トゥインクル・シリーズ>での勝利をめざす!


(公式サイトより引用)






PV第1弾が良いです。







 

【はじめに】





この文章の中でわからない競走馬の名前や競馬用語が出てくるかと思いますが、本編を視聴するまでググらない方が良いです。
特に競走馬について調べると、本作のネタバレとなる可能性が高いです。
競馬用語についてはなるべく文中で説明させて頂きますので、よろしくお願いします。


『ウマ娘 プリティーダービー』(以下『ウマ娘』)というタイトルを見て、競馬に興味のない方の中にはスルーした方もいるかもしれませんね。
しかし、本作は競馬に興味のある方はもちろん、普段、競馬を見ないという方でも楽しめる内容になっていると思います。
この記事では未視聴の方向けに本作の見どころを紹介したいと思うのですが、その前にこの作品について説明します。



ウマ娘 イメージ33



まず【あらすじ】に「異世界」とありますが、これは『ウマ娘』の世界から見た異世界という意味で、つまり我々が暮らしているこの世界のことですね。
この世界における競走馬の名前と競走能力を受け継いだ"ウマ娘"が存在する世界、それがこの物語の舞台というわけです。
といっても、ファンタジー世界とかではなく、文明は普通に現代日本です。



トレセン学園の「トレセン」というのは、この世界で言うところの「トレーニングセンター」の略称ですね。
日本の中央競馬のトレセンは関東と関西に1ヶ所ずつあり、そこで競走馬たちが暮らし、日々のトレーニングをこなしています。
本作のトレセン学園は東京の1ヶ所だけみたいですね。



そして、<トゥインクル・シリーズ>というのが『ウマ娘』の世界における「競馬」の名前です。
ただ両者は完全に同じというわけではなく、<トゥインクル・シリーズ>オリジナルのレースもあったりします。
ギャンブルというよりは純粋なスポーツ、さらにレース後の<ウイニングライブ>も含めたエンターテインメントとして楽しまれているみたいです。
ウマ娘は、さしずめアスリート兼アイドルと言ったところでしょうか。



ウマ娘 イメージ10 39



主人公のスペシャルウィーク(以下「スペ」)は、現実では1997年から99年にかけて走っていた同名の馬がモデルになっています。
デビュー戦から引退まで、一部のレースを除いてほぼ全て武豊騎手とコンビを組み、最高の格付けであるG1レースをいくつも優勝した名馬です。
残念ながら、もう亡くなっています。奇しくも『ウマ娘』の放映中に亡くなったことで話題になりました。



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『ウマ娘』の世界ではこんな感じの美少女に。ちなみに現実では牡馬(ぼば。おす馬のこと)なんですけどね(笑)
スペに限らず、牡馬でも牝馬(ひんば。めす馬のこと)でもみんな美少女化していることにこの作品の特色があります。


前置きが長くなりましたが、以下、3つのポイントに絞って、本作の見どころを語りたいと思います。







 

【本作の見どころ】



◇ 見どころ1・「友情・努力・勝利」のスポ根的な物語






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「友情・努力・勝利」というのは、いわゆるジャンプ3大原則、『週刊少年ジャンプ』の作品に含まれているとされる3つの要素のことですね。
主人公が仲間と友情を育み、ライバルに勝つために練習や修行をして、最後に試合や戦いで勝利を掴むというやつです。


この『ウマ娘』でも、主人公であるスペと、彼女にとって憧れの存在であるサイレンススズカ(以下「スズカ」)との、
友情……というよりは信頼関係に近いものですが、そのような関係がふんだんに描かれます。



スペとスズカの関係が物語の中で少しずつ変化していく様子も丁寧ですし、
この2人以外にも、現実でゆかりのあるウマ娘どうしがそれぞれの関係を作っていきます。



女の子どうしの友情や信頼関係ということで、「百合」という見方も出来なくはないでしょうね。


(ただ、この作品は男性キャラも出てきます。本名すら明らかではない「トレーナー」というキャラですが、彼が一部のウマ娘と信頼関係を築いていくシーンもあるんですよね。
あくまで信頼関係であって、恋愛関係にはならないよう配慮されていると思いますが、この点について触れないとフェアではないと思うので書いておきます。)



ウマ娘 イメージ12 26


(『ウマ娘』でのスズカはこんな感じになってます。この場面はレース前なのできりっとしてますが、基本的に物静かなお姉さんという雰囲気のキャラです。)



また、ライバルとなるエルコンドルパサー(以下「エル」)やセイウンスカイ(以下「セイウン」)たちとの勝負に勝つための特訓描写もあり、
一言で言うならスポ根もののようなノリなんですよね。

と言っても、そこまで暑苦しい感じではなく、現代的な? スポ根ものに仕上がっているとは思いますが。


もちろん勝負(つまりレース)の描写自体も熱いものになってます。勝つことの喜びと負けることの悔しさがきっちり描かれてますね。
このような物語に普遍性があり、それが競馬に興味のない人でもこの作品を楽しめると思う理由です。






 

◇ 見どころ2・迫力満点のレースシーン





レースシーンのスピード表現や歓声に臨場感があり、特に歓声については最初はちょっとうるさく感じられるぐらいの(笑)ものになっています。すぐに慣れますが。


スズカが、いわゆる「大逃げ」(スタート直後から先頭に立つ戦法のことを「逃げ」といい、その中でも特に後続を離す作戦を「大逃げ」という)を得意とするウマ娘ということもあり、
逃げる時のスピードの表現は特に重要になってくると思うのですが、この作品はその点バッチリだと思います。



ウマ娘 イメージ13 26


(スズカの大逃げ。風の描き方で彼女のスピードが伝わってきます。下のPVだと動画でより詳しく見れます。)












 

◇ 見どころ3・細やかな史実再現と、大胆な史実改変 ~ 《注目話数》





史実というのは、つまり現実に行われた競馬の結果のことですね。


スペスズカをはじめ、基本的にこの作品に出てくるウマ娘には、現実にモデルとなった競走馬がいて(一部オリジナルのウマ娘もいますが)、
基本的には現実とそれほど変わらない成績を残していきます。



なので、いま現在、競馬に興味のない方は、競走馬の成績を知らないまま視聴した方がいいと思います。
知らない方がむしろラッキーなぐらいで、この作品をより純粋に楽しめると思います。


史実再現は成績以外の細部にも及び、たとえばスペのライバルの1人であるグラスワンダー(以下「グラス」)を例に挙げると、髪の色はもちろん現実の毛色と同じ栗色。
しかもおでこの白い部分(白斑)も現実のグラスそのままです。
そして髪飾りの色も、これも現実のグラスの「勝負服」(レースの際に騎手が着る服のことで、馬主ごとに決まっている)の袖の色を使っているのですね。



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(『ウマ娘』でのエルグラス。余談ですが、エルが着けているマスクは特に競馬とは関係ないらしいです。)



もうひとつ例を挙げると、『ウマ娘』本編における皐月(さつき)賞、これはG1レースのひとつですが、セイウンがゲートで嫌がっているシーンがあります。
これも現実での皐月賞でそういう場面(セイウンがゲートに入るのを嫌がった)があったのを再現してるんですよね。



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当時の競馬を知っている人も納得の、非常に細かい再現になっていると思います。



とはいえ、実際の競馬の成績を再現するだけでは、競馬ファンには先が読めてしまって面白くないかもしれません。



『ウマ娘』の面白いところは、重要なところで史実を改変して、現実になかった対戦や展開を盛り込んだところだと思います。


当然、結果も現実とは異なるものになり、競馬を知らない人はそういうストーリーとして楽しめますし、競馬を知ってる人も先の展開が読めず楽しめるという構成になっています。







こうしてこの作品の見どころを見ていくと、やはり最大の見どころはストーリーということになるでしょうか。



特に注目したいのは、まず5話ですね。

もちろん4話までに見どころがないという意味ではないのですが(導入部としてちゃんと面白いのですが)、
前半のクライマックスとして大きく盛り上がるのが5話なんですよね。

現実ではスペが優勝したあるレースに、現実では出ていなかったあるウマ娘が参戦することで、一気に勝敗の行方がわからなくなり、
上でも書いたように競馬を知らない人も知ってる人も楽しめるレースになっています。



また7話で起きたある出来事をきっかけに、スペがしばらくスランプに陥るのですが、9話から10話にかけて描かれる立ち直りも感動的なので見てほしいポイントです。


さらに11話は、あるウマ娘が再起をかけて1年ぶりにレースに挑むという話になっており、これも感動的な内容になっています。
基本的に現実の競馬を知らない方が楽しめると思う本作ですが、この話に関しては、現実の競馬を知っていた方が感動できるかもしれません。



もちろん、12話から最終回である13話にかけてもちゃんと盛り上がります。後半のエピソードは全て見どころがあると言っても過言ではないでしょう。




ウマ娘 イメージ8 56






 

【視聴の際の注意点】





くどいようですが現実の競馬の結果は知らずに見た方がより楽しめると思います。本作自体のネタバレもなるべく見ない方が良いでしょう。

そして最終回まで見終わった後、もし余力があれば、作中に登場した現実の競走馬について調べて、再視聴してみるとさらに楽しめます。


名前のあるウマ娘が1話から多く出てきて混乱するかもしれませんが、いきなり全員覚えようとしなくても大丈夫です。
ちゃんとストーリーの流れに沿って、主要なキャラから順に覚えられるようになってます。


また、この作品に限らないことですが、3話までで序盤のストーリーに一区切りつくので、そこで視聴継続を判断できると思います。



ウマ娘 イメージ7 42



競馬を知っている人には、少し戸惑う点があります。



というのも、ウマ娘どうしの年齢差、世代が、現実のそれとはかなり異なっているんですよね。

たとえば本作ではスペシャルウィークより、トウカイテイオー(上図左、以下「テイオー」)の方が年下になっています。
はっきり作中で明言されてはいませんが、三冠レースに出走するのがテイオーの方が後であることから、恐らくそうではないかと推測できます。

現実ではテイオーの方が年上ですよね。



この点は視聴前に知っておく方が混乱せずに済むのかな、と思います。






 

【最後に。なぜスペが主人公なのか?】





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なぜ数多くいる名馬の中からスペが『ウマ娘』の主役に選ばれたのか、疑問をもたれる方もいるかもしれません。


元々スペは生まれた時から母馬を亡くしたり、現役中に生まれ故郷の牧場が火災に遭うなど波瀾万丈の馬生を送り、その中でG1を勝っていった馬で、
一部の競馬ファンの間では「競馬漫画の主人公みたいだ」と言われていたんですよね。
そういう噂をスタッフが知っていたのか知らなかったのかはわかりませんが、競馬アニメの主役には打ってつけだったわけです。


とはいえ、スペ以外にもドラマティックな馬はいます。
特に有名な馬で言うと、オグリキャップや、前出のテイオーなどもそうですね。
その中で何故スペなのかと言えば、スペ自身のドラマ性もさることながら、ライバルにも魅力的な馬が多いということが理由でしょう。



エルグラスセイウンキングヘイロー……。


この、いわゆる「98世代」(98年に3歳だった、つまり3歳しか走れないクラシック三冠レースを走った世代)は、日本競馬の中で最強世代と言う人も少なくないです。


さらに言うなら、この98世代は、年代的にも古すぎず新しすぎず、ちょうど良いということが言えます。

98世代の現役時代に20歳ぐらいだったとすると、いま40歳ぐらいで、自由に使えるお金が比較的ありますよね。

また、この辺の世代の方は、それより上の世代に比べて、二次元美少女、オタク文化にも抵抗がない人が多いでしょう。
コンテンツのターゲットとして狙いやすい層、という面があると思うんですよね。




そういった事情から、スペが本作の主人公に選ばれたのだろうと思います。



ウマ娘 イメージ5 79




乱文失礼しました。P.A.WORKSさんの高い作画力で、王道のスポ根もののストーリーを正面から描いた『ウマ娘』、面白いのでぜひ見てください。








執筆者 こるげそ (@korugeso




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◇ 作品記事総数:73

【傑作】8
【名作】23
【良作】20
【佳作】16
【水準作】5
【凡作】0
【失敗作】1
【駄作】0

※惜作 4 ※超神回 4

(【傑作>名作】は【名作】とする)


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(2019年6月19日現在)
 
 

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傑作 絶対観た方がよい作品

【名作】 観るべき、マストではずせない作品

【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品

【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品

【水準作】 普通だが見どころはある作品


【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品

【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品

【駄作】 取り上げる価値もない作品



【傑作・名作】傑作と名作の中間
【傑作>名作】傑作寄り
【傑作<名作】名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)


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