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★【名作】『トップをねらえ!』(1988/Ave.94.4) text by PIANONAIQ

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作品NO.56 『トップをねらえ!』




トップをねらえ!イメージ0 2


 

トップ レーダー 小5【名作】 1クール尺以下


世界観:95 脚本/構成:100 演出:95     
キャラ:90 演技(声優):95  引き:85 劇伴:100 作画:95  


Ave.94.4   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★★★☆☆





1988年
OVA
全6話オリジナル岡田斗司夫
ロボット・SF・スポ根・感動




監督:庵野秀明
キャラクターデザイン:美樹本晴彦(原案)/窪岡俊之
メカニックデザイン:宮武一貴
ロボットデザイン:大畑晃一
音楽:田中公平
アニメーション制作:ガイナックス




<キャスト(主要)>

タカヤ・ノリコ:日高のり子
アマノ・カズミ:佐久間レイ
ユング・フロイト:川村万梨阿
コーチ(オオタ・コウイチロウ):若本規夫

 



《ワンツイートレビュー》


SF的切なさ、ロボット無双の爽快感、感動的な名ラストシーンこれぞアニメ音楽の力というべき田中公平氏の劇伴、エヴァにも引き継がれる遊び心ある大胆な演出、と実に見所の多い庵野秀明初監督作にしてOVA史上屈指の名作。宇宙と地球を舞台に僅か6話分の尺でここまで壮大な物語を描いたところも凄い。




トップをねらえ!イメージ13 60


 
【作品紹介】





■ 作品評価     【名作】



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

◆ 作品評価順リスト(=「見て損はない作品」ランキング )はこちら




 
■ レーダーチャート評価  


トップ レーダー
【総得点/Ave.】   755/94.4
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 95
脚本/構成 : 100
演出 : 95                グループA:Ave. 96.7
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 90
演技(声優) : 95            グループB:Ave. 92.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 85 
劇伴 : 100                グループC:Ave. 92.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 95         
――――――――――――――――――――――――――――――――

100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





■ ネタバレ厳禁度   


★★★☆☆  (少し注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が少し低減する可能性あり)







 


【作品紹介】





トップをねらえ!イメージ9 70




制作の理由が『王立宇宙軍〜オネアミスの翼』の興行不振によって生まれた借金を返済するため、ということで、『コードギアス 反逆のルルーシュ』同様、「売れるアニメを作ろう」と思って実際に作ってしまった作品が本作『トップをねらえ!』である。

エースをねらえ!』や『トップガン』など往年の名作のパロディやオマージュを随所に取り入れながら、名作と呼ぶことに何の疑いも抱かない極めて熱量の高い堂々の一作に仕上げた手腕はさすが庵野秀明といったところだろうか(制作当時ガイナックスの代表であり企画発起人でもあった岡田斗司夫氏やクレジットに名前こそないが実際に脚本を書き上げたとされる山賀博之氏などの力も大きいだろうことは一応補足しておく)。



トップをねらえ!イメージ2


トップをねらえ!イメージ14



では本作を名作であるといいたくなる理由は何か?と考えた時、脚本構成などストーリー方面の充実と、その後制作される『不思議の海のナディア』(以下、ナディア)や『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、エヴァ)にも通じる庵野監督の作家性が垣間見える劇伴含めた演出方面の充実、この2つのしっかりした柱の存在が大きいのではないかと思う。

前者については前述した通り、序盤こそ明るい雰囲気で始まるものの(訓練風景として描かれるロボットの腕立て伏せなどもとても楽しく、この辺のギャグ?センスも絶妙である)、その後は予想外にシリアスな方向に話が振れていき、最終的には6話分の尺とは思えない体感時間と説得力、充実を伴う壮大なスケールの物語にまで膨らむことになる。



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その大胆なネーミングに思わずニヤリとさせられる「宇宙怪獣」との人類と地球の存亡を賭けた戦い、というのがだいたいのあらすじの輪郭。宇宙怪獣との来たるべき決戦の日に備え極秘裏に進められる人類の最後の切り札的プロジェクト。その中心にあるのが、最強型決戦兵器である超大型ロボットマシン「ガンバスター」と本作のメインヒロインとなるタカヤ・ノリコである。



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ロボット操縦者を養成する学校に突如赴任してきた謎多き人物――コーチことオオタ・コウイチロウに特別な眼差しを向けられるものの一向にその才能を開花させることなく失敗が続くドジでノロマな駄目キャラ的存在のノリコ(この辺は『エースをねらえ!』の宗方コーチ岡ひろみの関係そのものである)が遂に覚醒する時のカタルシスは、挫折と葛藤を経ての成長を描く王道脚本の力はもちろん、巨大ロボットが宇宙怪獣を蹂躙する爽快感やハイテンションな絵の充実もあいまって圧巻といってよいものとなっている



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努力と根性による才能開花という往年の王道スポ根もの色が強いあたりは好みが分かれるところではあるかもしれないが、「憧れ」(※)や「」というのはやはりアニメーションと非常に相性の良いテーマであるし、面白い物語を作る上でも鉄板といえるテーマである、ということを再確認させてくれる作品であるところを筆者は高く評価している(※お姉様、ことアマノ・カズミに対してノリコが抱く憧れなども、やはり『エースをねらえ!』におけるひろみのお蝶夫人に対するそれを想起させるもの)。



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壮大な物語が最後に辿り着く「オカエリナサイ」で有名な名ラストシーンの素晴らしさについても触れないわけにはいかない。

本作がジョー・ホールドマンのSF小説『終わりなき戦い』から着想を得て取り入れたとされる「ウラシマ効果」があってこそ生まれ得たともいえるこの名シーンでは(※このSF設定は切ない恋愛ドラマにも大きく関わっており、ここも大きな見所である)、バックで流れる田中公平氏によるアニメサントラ史上に刻まれし渾身の名曲「時の河を越えて…」の素晴らしさも決して外せない大きなピースのひとつとなっている。脚本、劇伴、演出、映像、全てが揃った完璧といってよいラストシーンであり、最後に訪れるこの幸福感溢れる盤石の締めが本作を名作として決定付けているといっても過言ではないだろう。





最後に劇伴について。


私事ながら、本作における田中公平氏の音楽は、『ラーゼフォン』での橋本一子氏の音楽と並んで、アニメ(音楽)の魅力にどっぷりはまる大きなきっかけを与えてくれた、いわばアニメ音楽の原点ともいえる存在。

名曲揃いの本作の劇伴音楽の中にあって、特に上記の「時の河を越えて…」と、同じモチーフを持った「ノリコのテーマ」の2曲は、作品全体の評価や印象にも関わる極めて大きな力を持った楽曲になるのではないかと思う。

4話の「やめて〜!!」で「ノリコのテーマ」が流れ出す時に画面から放出される異様なまでの熱量とダイナミズムは圧巻の一言で、物語と劇伴が対等な力関係で渡り合うことで化学変化を起こし形容しがたい高揚感を持ったシーンが奇跡的に生み出される、という点ではこのシーンが自分の中で「これぞアニメ(音楽)の力」というべき映像と劇伴のひとつの理想的な関係を示したものになっている(同曲が最初に轟くお姉様の鉄下駄シーンも、本気とギャグが混在したような展開と画を、劇伴によって半ば強引に彩り成立させることで何ともいえない高揚感を生み出す力を獲得している名シーンである)。



トップをねらえ!イメージ17 78



こちらのサントラの冊子に収録されている庵野監督と田中氏の対談では貴重な監督の劇伴に対する考えを知ることができて大変興味深いのだが、そこでの庵野監督の言葉を少しばかりご紹介したいと思う。


いい音楽が記憶に残る作品というのは作品自体の出来もいい物が多い~画だけで感動させることは無理~セリフに頼ると話がウソくさくなるので画と音と合わせて哭(な)かせるのが最高~BGMというのは完成した画と戦えるだけのパワーをもってなきゃいけない……etc



これはそのまま本作や本作の音楽にも当てはまるものであろう。


個人的に庵野監督に対しては劇伴演出にも強いこだわりを持った監督という印象が大きいが、本作以降ナディアエヴァでもこういった方向性の劇伴の当て方は続いていると思うので、そこは監督の中で確固たるものがあるのだろうなと(ちなみに、当時、本作からの流れでナディアの音楽も最初は田中公平氏で行く予定だったそうだが、田中氏の都合が合わなかったため鷺巣詩郎氏が起用されたという経緯もあるそうだ)。


ただ、繰り返しにもなってしまうが、ナディアやエヴァ以上に本作『トップをねらえ!』における音楽(演出)は自分にとって強烈な印象を与えるものだった、ということで、普段劇伴にさほど興味のない方もこの辺を頭の片隅において本作を見て頂けると紹介記事を書いた者としてとても嬉しく思います。






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執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ




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ジャンル : アニメ・コミック

★【傑作・名作】『コードギアス 反逆のルルーシュ』※2期込み(2006/Ave.90.6) text by PIANONAIQ

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作品NO.55 『コードギアス 反逆のルルーシュ』 ※2期込み




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コードギアス レーダー小5 【傑作・名作】 4クール


世界観:95 脚本/構成:100 演出:90
キャラ:90 演技(声優):85  引き:100 劇伴:80 作画:85 


Ave.90.6   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★★★☆☆





1期:2006年10月~/2期:2008年4月~9月
MBS、他
1期:全25話/2期:全25話
オリジナル作品
野望もの・ロボット




監督:谷口悟朗
シリーズ構成:大河内一楼
キャラクターデザイン:CLAMP(原案)/木村貴宏
音楽:中川幸太郎黒石ひとみ
アニメーション制作:サンライズ




<キャスト(主要)>

ルルーシュ・ランペルージ:福山潤
枢木スザク:櫻井孝宏
C.C.(シーツー):ゆかな
紅月カレン:小清水亜美
ナナリー・ランペルージ:名塚佳織
シャーリー・フェネット:折笠富美子
シャルル・ジ・ブリタニア:若本規夫

 



《ワンツイートレビュー》


深夜アニメのひとつの最高到達点ともいえる極上のエンターテイメント作品。特に2期終盤の怒涛の展開における止まらない面白さ、からのこれ以上ない美しいラストへの流れは圧巻で、こんなにも面白い作品を見ることが出来たという経験自体に興奮を覚えるほど。先見性のあるテーマなど他にも見所多数。





【はじめに】



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瞳を見せた相手にどんな命令でも実行させられる(自害させることも可)神のような力“ギアス”を手に入れた学生が一人で世界の3分の1を支配する大国に戦いを挑んで果たして勝てるだろうか?

本作のあらすじは実にシンプル。この問いに何の迷いもなく「イエス」と答えるルルーシュという復讐心と妹への愛から出来ているような揺るぎない志を持った青年が、ギアスの力と己の頭脳だけを武器に、大国に一人戦いを挑む物語である。

そして、
これでもかと盛り込まれた多くの設定や伏線の妙、面白い話になり得る為のあらゆるエンタメ要素、古今東西の名作といわれる作品の良いところを確信犯的かつ巧妙に詰め込んだ上でそれらを破綻させず完璧に料理してしまった最強の「面白いアニメ」――



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数多くの深夜アニメの名作の中でも、「高尚な」といった言葉がしっくりくるようなタイプの作品ではないかもしれないが、このように、エンタメ作品としてこれ以上に面白いものを作ることは今後並大抵では叶わないだろうと思える点で、本作は深夜アニメが辿り着いたひとつの最高到達点というべき作品であると筆者は考えている(※企画コンセプトの大きな柱として「売れるアニメを作ろう」というものがあったそうだが、それを狙って実現してしまった凄さもそういった評価を後押しする一因となっている)。

これまでそれなりの数のアニメ作品を観てきた中で、本作(の特に2期終盤)ほど次が見たくて止まらなくなった作品は他にそうそうない、というのも上述の通り。

「高尚な」名作が例えば、『プラネテス』や『Gungrave』といった作品であるとするなら、本作は、こんなにも面白い作品を見ることが出来たという経験自体に興奮を覚えるほどのエンタメ作品としての完成度の高さでもってこれらの作品の高尚さにも並ぶ、というのが作品評価に大きく表れた感じだろうか。


不穏に鳴り響く銃声で幕を閉じる1期ラストは、放送当時「神の引き」などといわれることもあったそうで今でもたまに話題に登るのを目にするが、それは確かに、こんな続きが気になってしょうがない終わり方をされて2期開始まで一年も待たされた当時のアニメファンの思いはいかほどのものだったろう、と想像するだけでも気圧されてしまうぐらいのもので、この点においては後追いで一気見出来て幸運だったなどとも思う(※2期終盤の各話も、これで来週まで待たされるなんて辛すぎるだろうと思える点は同様)。


では、本作の何がそんなに面白いのか?これについてもう少し具体的に考えてみたいと思う。



 

【目次】


 
【コードギアスの面白さとは?】


【危うさ、作品テーマについて】





コードギアス 興道4 93







■ 作品評価     【傑作・名作】



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

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■ レーダーチャート評価  


コードギアス レーダー
【総得点/Ave.】   725/90.6
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 95
脚本/構成 : 100
演出 : 90                グループA:Ave. 95
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 90
演技(声優) : 85            グループB:Ave. 87.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 100 
劇伴 : 80                グループC:Ave. 90
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 85         
――――――――――――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





■ ネタバレ厳禁度   


★★★☆☆  (少し注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が少し低減する可能性あり)







 


【コードギアスの面白さとは?】





コードギアス イメージ3 ルルーシュ4 60




一人の学生が大国に戦いを挑む物語ということで、一歩一歩、一つ一つミッションを達成して行きながら徐々に勢力を増し敵の中枢へ近づいていく「野望もの」的面白さが最大の軸となっている作品になるのかなとは思う。

ただ、本作を極上のエンターテイメント作品と評する所以は、先にも述べた通り、それ以外の面白さの要素をこれでもかと盛り込んで成立させてしまったところにあり、これは偉業といっても決して大袈裟ではないだろうと。

例えば、すぐに思いつくだけでも、『ジョジョ』のスタンドバトル的面白さ、『ガタカ』の正体がバレそうになるスリリングな面白さ、バトルシーンでの「戦略・軍師もの」的面白さ、第三勢力登場による駆け引きの面白さ、などが挙げられるし、魅力的な脇役達の存在そのものが面白さを生んでいるような充実感もあったりする(他、「騎士もの」の充実感、『閃光のハサウェイ』的ライバル関係、ツンデレ要素、恋愛要素、妹成分、などなど細かい要素レベルのものまで挙げていけばもうきりがなくなってしまう)。

普通、これだけ多くを盛り込めば、風呂敷の広げ過ぎで回収しきれず少なからず消化不良な結果につながることが多いと思うが、本作がそうはならなかったのは、「妹と復讐のため」というシンプルだからこそ強力な説得力を持つ動機で野望に向かって突き進む主人公の、目的のためにはどんな残虐非道な行為にも及ぶダークヒーロー的造形が物語の中心に揺るぎない強固な柱として在ったからだろうと思う。



コードギアス イメージ3 ルルーシュ2 60


コードギアス イメージ3 スザク 80



また、主人公の目的を阻む「」というのも、面白さを作り優れたエンタメ作品になるための大事な要素であると思うが、それでいうと本作はこの枷の盛り込み方も極めて秀逸であるといえる。親友でありながら敵対することになるスザクの存在や(上図)、完全無欠の主人公の数少ない弱点といえる目の見えない妹・ナナリーの存在(下図)、ギアスによる命令が後に仇となって返ってくる展開、などなどいたるところで次々に生まれる多くの枷が連動し芋づる式に(無限に)面白さを生み出していくようなお話作りは圧巻ですらあるし、この辺が本作の止まらない面白さの核となっている部分でもあるのだろう。



コードギアス イメージ3 ナナリー



何だかここまで面白い面白いばかり言ってきてしまったので(笑)、次項では少し違った側面から本作を捉えて記事を終えたいと思う。






 
【危うさ、作品テーマについて】




「危うい」


『コードギアス 反逆のルルーシュ』について考えた時、何だかいたるところでこの言葉が立ち現れて来る気がする。

正体がばれる危うさ、ゼロ(ルルーシュ)という一人のカリスマの圧倒的な力のみを拠り所に結束する組織の(基盤の)危うさ、そこに属する脇役達が己々秘めた野望や別の目的を持っている危うさ、そして、いくら可愛い妹や復讐のためとはいえ、冷静に考えれば極悪非道で決して許されないだろうテロ行為に手を染める主人公像とそれによる目的達成を描く物語の危うさ、それを肯定的に捉え(?)ルルーシュを応援したくなる視聴者である我々が抱く気持ちの危うさ、といった具合に――


しかし、倫理的に(?)この辺をどう考えるかとは別に、これらの危うさがやはり本作の他と一線を画する面白さの核になっている側面はまた事実としてあるのだ。



コードギアス イメージ4 46



1期22話「血染め の ユフィ」は、先日パリの劇場で起きた無差別テロ事件に通じるようなおぞましさを持った本作でも一際衝撃的な話数となっているが、イスラム国による一連のテロ事件が活性化する前の2006年という時期にこういった題材を扱ったことには先見性も感じられるし、今見返しても作品に潜む視点や問題意識に唸るところも少なくないのではないかと思う。

また、SNSが完全に社会に浸透したことで、未だにアメリカの属国である日本というこれまで闇に伏せられてきたタブーも大分表に出て来ているが、本作の舞台が世界の3分の1を支配する大国〈神聖ブリタニア帝国〉によって占領され植民地となった日本であること、そこで日本人が「イレブン」というスラングで蔑まれている設定などもテロ同様にかなり攻めた印象を与えるものであるだろう。


更にいえば、2006年というSNSが定着する大分以前の時期に、誰もがゼロになれる永遠にゼロは在り続けるという、ネットが秘める匿名性や虚構、ネットが生み出す肉感のないカリスマ的偶像を先取ったかのようなテーマを高らかに謳ったところなども見応え十分であるし、何よりこれが本作をエンタメ作品としてだけでなくテーマ性を持った作品としても昇華させる最後の完璧な一手となってあの2期最終話の美しいラストが生まれたところも感慨深い――



コードギアス イメージ5 74



2017年に第1作目が公開された劇場版に関しては、この美しいラストのその後を描くということで、せっかく綺麗に終わった作品なのになぜ続編を?という批判的な声も多く上がっているが、ギアスファンにすれば気にならない訳はないので、まあ反則的なプロジェクトだなあと。(笑)

個人的にそこまで悪い印象は持っていないものの、これまで述べてきたように、『コードギアス 反逆のルルーシュ』という深夜アニメ史上でも屈指の極上エンターテイメント作品が持つその面白さの全てが詰まっているのはやはりTVシリーズだと思うので、これからギアスを見ようと思っている初見の方には是非先にTVシリーズを見ていただけたらと切に。



〈おまけ〉


CLAMPキャラデザによる本作の女性陣は今見返しても本当に可愛くて魅力的。以下、簡単に筆者一推しキャラの紹介をしてみるのでご参考までに(※男性キャラももちろん魅力的)。




紅月カレン(cv:小清水亜美)




コードギアス イメージ6 44




ゼロ率いる「黒の騎士団」のエースとして紅蓮弐式に乗り込みスザクが操るモンスター級ナイトメア(※)・ランスロッドと互角にぶつかりあう強さと高い志、正義感を備えたキャラ。外見はもちろん、乙女心や好きな男に一途な側面を見せるギャップがまた魅力。ゼロの組織における高い指揮・統率力を他の誰よりも強く信じ崇拝する健気さも魅力的だが、それ故にゼロの命令なしでは動けなくなってしまうあたりの流れもお話作りとして非常に巧い。(※ナイトメアとは作中に登場するロボット兵器の総称)





C.C.(シーツー)(cv:ゆかな)




コードギアス 興道2 44




言わずもがなの、本作でも屈指の人気キャラ。ギアスに関わる謎の全てを担う存在としてまず極めて重要だが、ルルーシュとの関係におけるツンデレめいた側面も実に魅力的。作品が持つハードな作風の中で良い息抜きとなるような楽しい二人の掛け合いから得られる充実感も大きい。これまで繰り返し面白い面白い言ってきたので、もしかしたら1話を見た時そんなに?と肩透かしを食らう方もいるかもしれないが、このC.C.が“再び”現れるあたりからぐっと面白さは増していくはずである。





ヴィレッタ・ヌゥ(cv:渡辺明乃)




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プライドが高く強気な性格だが、冷静さと洞察力も備えた敵軍の上位階級に属する切れ者で、その嗅覚からゼロの正体に近づいていく展開にはハラハラさせられる。そこから先の彼女の「変化」はキャラの魅力を膨らませる点でも、また先に述べた面白さを生み出す枷としても大きいが、本作はこういうキャラの魅力とストーリーや展開の面白さが良いバランスを取っているところも魅力だろう。個人的には褐色肌のグラマラス美女というのも極めてポイントの高い点。




とここまで書いてきて、三人ともギャップを持っているキャラであることに気付いたのだが(確かにそういうキャラには大きな魅力を感じやすいかもしれない)、この辺ももしかしたら「売れるアニメ」を作ろうとして実際作ってしまった本作の綿密な戦略の一端なのかもしれない――

シャーリーナナリーユフィコーネリアラクシャータ、などまだまだ魅力的な女性キャラは多いが、きりがないのでこの辺で終えることにする。






コードギアス イメージ8 87






執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ




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★【傑作】『銀河英雄伝説』(1988/Ave.96.9) text by PIANONAIQ

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作品NO.54 『銀河英雄伝説』




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銀英伝 レーダー小5 【傑作】 4クール尺以上 


世界観:100 脚本/構成:100 演出:90
キャラ:100 演技(声優):100  引き:95 劇伴:100 作画:90


Ave.96.9   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★★★☆☆





1988年~2000年
OVA
本伝110話(外伝52話、劇場公開長編3作)/小説原作田中芳樹
SF・歴史大河・英雄譚・人間ドラマ・艦隊戦・軍師もの・野望もの




総監督:石黒昇
シリーズ構成:河中志摩夫
キャラクターデザイン:本木久年清水恵蔵久米一成
音響監督:明田川進
アニメーション制作:キティフィルム三鷹スタジオケイファクトリー




<キャスト(主要)>

ラインハルト:堀川亮
ヤン:富山敬
キルヒアイス:広中雅志
アンネローゼ:潘恵子
ロイエンタール:若本規夫
ミッターマイヤー:森功至
オーベルシュタイン:塩沢兼人
ユリアン:佐々木望
フレデリカ:榊原良子
シェーンコップ:羽佐間道夫

 



《ワンツイートレビュー》


帝国のラインハルト、同盟のヤン。稀有な才能と人望で敵対する両国で大英雄となっていく二人と彼等を支えた有能な部下達の壮大な運命の物語は、本伝全110話をまったく長く感じさせないほどに面白くそして魅力的だ。劇伴でクラシックが聴けるアニメ作品としても最大級の評価をしたい揺るぎない傑作。





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【はじめに】



物語の登場人物の死による落胆を一週間は引きずった稀有な作品



私にとってとても(を二回使いたいほど)思い入れのある作品である本作、『銀河英雄伝説』(通称、銀英伝)について思いを巡らせた時、作中におけるキャラの死にえらく落ち込んだという、今となっては良い思い出にもなっている、また作品の一部として受け止められているこのことが割と真っ先に頭に浮かぶ――

これは、言い換えれば、それだけそのキャラが魅力的であったこと、物語がしっかりそのキャラの人生、生き様を描けていたこと、そして何より私が心から銀英伝の世界にのめり込んでいたことの確かな証でもあるのだろう、と。


特に打ちのめされたキャラの死は二つ。

帝国、同盟それぞれから1名、共に名将といわれる二人の魅力的なキャラの死である。


筆者は原作未読であるのだが、アニメを見終えた後原作ファンの方に聞いた話によると、この内、帝国の名将の死というのは原作では割と早い段階で訪れるものらしく、またその方にすれば原作においてはそこまで(少なくとも私ほど)痛切に感じるようなものでもなかったそうなのだ。

2018年、キャストやキャラデザなどを一新した新たなリメイク版銀英伝となる『銀河英雄伝説 Die Neue These』(下図)の放送中でも話題となったが(※ちなみにこの作品に対する筆者の深歩評価は【水準作】)、やはり旧アニメ版銀英伝(以下、旧銀英伝)には一部でかなり原作の内容を膨らませているところがあるそうで、私が深く感じ入ることとなった帝国の名将の死についてもその辺が大きく「良い方向に」影響しているところはあるようだ(※ただし、原作の方が良かったという声も聞くので、こういった旧銀英伝におけるオリジナルの脚色の全てがファンに好意的に受け入れられている訳ではないようだ)。



銀英伝 イメージ19



旧銀英伝の(飽きずに観られる)面白さは、おそらく『三国志』と同種のものだろうと思われる。敵側にも味方側にもとにかく多くの魅力的な人物がいて、艦隊戦の戦略的駆け引きの面白さがあって、戦場以外にも様々な陰謀が渦巻いていて、陰で暗躍する嫌らしい黒幕がいて、さて歴史はどう動く?英雄達の運命は?と(ヤンは諸葛亮孔明、ラインハルトのモデルはアレキサンダー大王との説もあるようだ)。

前置きとして個人的な話で長くなってしまったが、以下、私が考える旧銀英伝の魅力について紹介して行きたいと思う(もちろん、ネタバレはなし)。

 

【目次】

 
【作品紹介】

【外伝について】



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■ 作品評価     傑作



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

◆ 作品評価順リスト(=「見て損はない作品」ランキング )はこちら




 
■ レーダーチャート評価  


銀英伝 レーダー
【総得点/Ave.】   775/96.9
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 100
脚本/構成 : 100
演出 : 90                 グループA:Ave. 96.7
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 100
演技(声優) : 100            グループB:Ave. 100
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 95 
劇伴 : 100                グループC:Ave. 97.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 90         
――――――――――――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





■ ネタバレ厳禁度   


★★★☆☆  (少し注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が少し低減する可能性あり)







 

【作品紹介】





銀英伝 イメージ12




帝国のラインハルトと同盟のヤン


本作は長い年月に渡って宇宙で戦争を繰り広げて来た歴史を持つ敵対する二国――銀河帝国(以下、帝国)と自由惑星同盟(以下、同盟)――にそれぞれ現れた二人の傑出した英雄の数奇な生き様を描いた壮大な歴史SF大河物語(スペースオペラ)である。

随時作品世界を鳥瞰するような視点のナレーションが入るのが特徴的であり魅力でもあるが、これによって視聴者は本作を「後世の歴史家」が語る作中で既に過去の歴史となった史実を再現した物語――過去に刻まれし二人の英雄譚――のようなものとして受け止めることになり、それが本作の壮大なスペースオペラとしてのスケール感をより増大させる妙味にもなっている。

劇伴として大々的にクラシックが導入されているところも本作の大きな見どころであり魅力だが(※製作の徳間ジャパンがドイツ・シャルプラッテンレコードの音源を大量に保有していたことで実現した)、通常劇伴として使うのが難しいはずのクラシック曲が本作にこうも絶妙にフィットした理由としても、この過去に紡がれた歴史物語を見せるような作品構造が大きいと筆者は考えている(※あるシーンにおいて劇――キャラの感情や状況――の伴奏をしたり作品に通底するテーマを音で示すのが劇伴の役割だが、本作の場合は、あるシーンでクラシック曲が鳴った時に、それが例えばキャラの感情を代弁するのと同時に、そのシーンが大きな歴史の中の一瞬であるといったマクロな視点も感じさせるような風合いがあると)。

マーラーチャイコフスキーの荘厳なオーケストラ曲やショパンの甘美なピアノ曲が彩る名シーンの数々を味わえる作品など他にそうはないだろう(※膨大なライブラリから選曲した音響監督・明田川進氏の仕事ぶりは素晴らしいの一言。また、クラシックの名曲群の中にあって一際耳に残る風戸慎介氏によるオリジナルスコア「自由惑星同盟国家」の出来も実に秀逸)。



銀河英雄伝説外伝 わが征くは星の大海 縮小 80



物語の進行のさせ方も巧妙で、数話単位で同盟ターン、帝国ターンと交互に舞台と視点を変えながら、ヤンラインハルトの活躍を描いていく。

無能な上司による妨害など様々な障壁や生死を賭けた苦境を乗り越えながら、二人が軍人として出世を重ね“頂点”へのし上がっていくあたりの所謂「野望もの」的面白さは鉄板である。



銀英伝 イメージ8 92 銀英伝 イメージ11


ラインハルト・フォン・ローエングラム。金髪に端正なルックスという貴公子然とした外見を持つが、内には燃え滾る野望と絶対に折れない獅子のように強い信念、姉・アンネローゼへの愛を秘める。白兵戦、艦隊戦術、人心掌握術、組閣力、などなど上に立つ者に必要な凡そあらゆる才能と資質に恵まれたまさに神に選ばれたような男――


ヤン・ウェンリー。負けなしの連戦連勝、いかなる不利な戦局をも打破してみせる圧倒的な軍事戦術才覚を持ち「魔術師ヤン」としてその名声を銀河に轟かせた空前絶後の天才軍師、でありながら軍人向きではない平和を愛する温厚で気さくな人柄が魅力の愛すべき男。彼に権力や地位への欲というものがあれば、おそらく世界を獲ることもできたであろう――



外見や性格はまったく違えど、共に優劣つけ難い圧倒的な軍事的才覚と優秀な部下を惹きつけるカリスマ性を備えた二人の拮抗した魅力のおかげで、この交互に描かれる物語進行にはまったく退屈しないどころか、逆にそれが常にフレッシュな気持ちで視聴を継続できるプラス要因にもなることだろう。同原作者による『アルスラーン戦記』もそうだが、人徳のある人物の元に次々と有能で魅力的な部下達が集まってくる物語はやはり面白い(※多くの魅力的な脇役達の中でも特別愛着のある推しキャラの活躍を追えるところも本作の楽しみ方のひとつといえよう)。

二人が振るう天才的采配が劣勢の戦局を打破するのが実に痛快な艦隊戦シーンは戦略的駆け引きなども楽しいし、その中で群像劇的人間ドラマも充実している。また、国の内部での政治や権力闘争的話(権謀術数)などにも現代に通じるリアルな側面が垣間見えたりと見応え十分である。



銀英伝 イメージ21 50


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本伝110話外伝52話劇場公開長編3作というOVA史上でも空前の長期シリーズである本作(足掛け12年に渡るまさに一大プロジェクト)。

個人的に、この長大な物語をまったく長く感じずに走破することができたのは、これまで述べてきたようなキャラの魅力に支えられた物語の見せ方の巧さ、はもちろんだが、何より大きいと思うのはやはり、二人の英雄がこの先どのような運命を辿りどういった結末を迎えるのかへの大きな期待と興味があったからだろう。


当然だが、同盟と帝国、ヤンラインハルトを交互に描いていく長大な物語の終盤に待ち受けるのは二人の避けられない最終直接対決である。二人が同じ部屋の空気を吸いながら語り合うという夢のような瞬間も訪れる。

どちらも同じくらい魅力的で思い入れの強いキャラがそれぞれに長い道のりを歩んで来た末、遂に最後の一戦を迎えるわけで、そこで感じられる尋常でない高揚感と盛り上がりはちょっと言葉にはできないほどのものだ(ちなみにここに至るまでに二人は何度が戦場で矛を交えるが、敵同士という立場ながら互いの傑出した才や人間性に好印象を抱き敬意を表し合う関係として描かれる。そこもまた本作の魅力であるのだが、だからこそ最後の最後、二人が遂に対面するシーンのカタルシスも格別なのである)。



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そして、本作のキャラの魅力はこの二人だけには収まらない。


二人が絶対の信頼を寄せる多くの部下たちもまた皆有能であり人間的に魅力的なのも銀英伝のたまらない魅力のひとつだろう。ラインハルトの無二の親友であるキルヒアイスに至っては、ラインハルト以上に名将と思わせる側面もあったりするのだから充実度は相当なものである(下図)。

また、ラインハルトを絶対のカリスマとしつつも、その部下たちもまたそれぞれが持つ部隊の中で良き上司として皆に慕われる様子が描かれ、そこもまた何ともいえず良い。

この辺の、周りに多くの優秀で魅力的なリーダー達がいる中でそれでも自分たちのチームの主を絶対的忠誠心を持ってリスペクトするような描き方からくる「騎士もの」にも通じる充実は、『ガルパン』や『コードギアス』といった作品にも引き継がれているといえよう(※『コードギアス』は他でも、貴族風の世界観や野望を秘めたルルーシュの造形、戦略的要素を面白さの軸に据えたバトルシーン、などなど本作からの影響はかなり大きいのではないかと思われる)。



銀英伝 イメージ6

銀英伝 イメージ23 90



他、二国間の戦争を影で操るような第三勢力的な存在や一人の政治家の策謀で国が戦争に邁進していく様子、ヤンが語る思想や哲学、今は亡きレジェンド級ベテラン声優総出演によるキャスティングの大充実、四期に渡る本伝それぞれのシリーズの内容を示唆するようなアニメーションと主題歌の充実が素晴らしいOP・ED、推しキャラ達の魅力、などなど語りたい本作の見どころは実に多いが、長くなってしまうこと必至なので今回は触れないことにする。

注目話数についても、もちろん重要で特に秀でた話数はあるが、全てが注目話数といってもよい作品でもあると思うのでここもやはり割愛することにする。



銀英伝 イメージ25 60



最後に。


最初に述べたキャラの死の話に戻るが、本作を見る者は、多くの英雄達(推しキャラ)の死を見届けることになるだろう。


それはヤンラインハルトも例外ではない。


戦死、病死、不慮の死、無念の死――形は色々あれど死は訪れる。


英雄達のそれぞれの死に直面した時、この壮大な物語と比類なき作品世界に心から浸りきった我々が抱くのは、一人の人間の尊い人生を見せてくれたこと、最期までしっかり描き切ってくれたことへの感謝にも近い気持ちではないだろうか(瞬間的にはもちろん大きな悲しみもあるだろうが)。

この辺もまた『三国志』に近いところだと思うが、こういった人間達がその世界で生きそして死んでいくという営みを目にして大きな感慨と余韻に浸れるところが壮大な歴史SF大河物語ならではの、『銀河英雄伝説』のかけがえのない魅力ではないだろうか。





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【外伝について】




本伝全110話を見終えた後は、是非とも外伝や長編も見ていただけたらと思う(※別に本伝の途中で外伝を見ても問題はないし、特に見る順番に絶対の決まりはないと思うので、長い本伝の合間の気分転換に気になった外伝を挟んでみるのも一つの手かもしれない)。

本伝と外伝の関係で大きなところといえば、本伝では、ラインハルトキルヒアイスが軍で既にある程度上の階級を手にした状態から物語が始まるが、外伝ではこの地位に至るまでの過去の話――二人が初陣から幾度も死線を越えて武勲を挙げ、昇進を重ね、絆を深めていく過程――を見られるところがひとつ大きな見どころだろう(ヤンの過去の話も有)。本伝では描かれない脇役達との最初の出会いのエピソードや脇役メインの話などもあるし、外伝を観るとまた本伝が観たくなってしまうところは大いにあることだろう。



銀英伝 イメージ9



銀河英雄伝説外伝 黄金の翼』(長編、60分)だけはキャラデザなど他とかなり質感が異なることもあり正直オススメかというと内容的にも微妙な作品になってしまうが(上図)、それ以外は全て本伝同様のクオリティで銀英伝の作品世界を堪能できる充実した内容になっていると思う。



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ちなみに、ご提案というか、本伝を見始める前に、本シリーズで一番最初に作られた60分の劇場長編作品『銀河英雄伝説 わが征くは星の大海』(上図)を先に鑑賞するのも銀英伝の初見視聴としてはオススメルートになるのではないかと思う。

筆者自身もこの作品から銀英伝に入ったのだが、劇伴として使われるラヴェルの「ボレロ」を背景にヤンラインハルト両英雄の魅力を十全に描いた秀逸な映画となっている。

初めて見た時、銀英伝ってこんなに面白かったんだ、こんなに面白い作品を何故今まで見ずに来てしまったのか、という感じで完全に魅了されてしまったのだが、ここでまずがっつり劇伴含めた銀英伝の世界観と二人のキャラの魅力に摑まれたことがその後見始めた本伝の視聴モチベーションを上げてより充実した物語体験につながったのではないかとも思う。






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執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ




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【佳作】『少女終末旅行』(2017/Ave.75.6) text by PIANONAIQ

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作品NO.53 『少女終末旅行』




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少女終末旅行 レーダー小5 【佳作】 1クール


世界観:80 脚本/構成:75 演出:80
キャラ:75 演技(声優):80  引き:65 劇伴:75 作画:75 


Ave.75.6   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★★★☆☆





2017年10月~12月
TOKYO MX、他
全12話漫画原作つくみず
日常・SF・ミリタリー




監督:尾崎隆晴
シリーズ構成・脚本:筆安一幸
キャラクターデザイン・総作画監督:戸田麻衣
ケッテンクラートデザイン・モデリング:相馬洋
音楽:末廣健一郎
アニメーション制作:WHITE FOX




<キャスト(主要)>

チト:水瀬いのり
ユーリ:久保ユリカ
ヌコ:花澤香菜

 



《ワンツイートレビュー》


人類滅亡後の?無人の廃墟都市を少女二人がケッテンクラートで旅をするユニークな世界観と設定が光る。旅の果てで二人を待つものとは一体?という謎の部分も魅力だが、それ以上に見る者によってベストエピソードが変わってきそうな終末感漂う世界での一風変わった日常体験の描き方に妙味を感じる作品。





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【目次】


 
【作品紹介】

【10話について】






■ 作品評価     【佳作】



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

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■ レーダーチャート評価  


少女終末旅行 レーダー

【総得点/Ave.】   605/75.6
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 80
脚本/構成 : 75
演出 : 80                グループA:Ave. 78.3
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 75
演技(声優) : 80            グループB:Ave. 77.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 65 
劇伴 : 75                グループC:Ave. 70
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 75         
――――――――――――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





■ ネタバレ厳禁度   


★★★☆☆  (少し注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が少し低減する可能性あり)







 

【作品紹介】





少女終末旅行 イメージ6




高度な文明がそこに築かれていただろうことが如実に窺える誰もいなくなった廃墟都市で、二人の少女(チトユーリ)がケッテンクラート(※第二次世界大戦期にドイツで開発された半装軌車)でひたすら当てのない旅をする、というユニークな世界観と設定がまず目を引く作品だ。

無人の廃墟都市はもちろん、二人の少女の過去や旅の目的など、物語は多くの謎を抱え込みそれらを通奏低音として響かせながら、毎回二人が旅先で体験する色とりどりの出来事――終末感漂う世界での二人の少女の一風変わった日常――を淡々と描き出していく。

放送当時、弐瓶勉の『BLAME!』と本作の世界観における共通性が話題となったが(※原作者のつくみず氏も同作からの影響を公言しているようである)、人類が滅びた後の世界(?)的な設定や世界観に訳もなく無性に心が惹き付けられてしまうのは一体何故なのだろうか――

本作と同じ年の頭に放送され一大ブームを巻き起こした『けものフレンズ』の人気を決定的なものにしたのもこの辺が大きかったと思うが、『少女終末旅行』もまたこういった世界観を土台としながら、視聴者に考察を促すような要素が現れ始める物語中盤以降からはより面白さが増して、周りの反応もグッと良くなった印象がある。



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二人の少女のキャラデザ、特に丸っこいチトの造形(上図右)には見ているうちに次第に病みつきになるような魅力があるし、OPED曲のクオリティの高さからは世界観の作り込みへの強いこだわりや原作への愛、話題となった末廣健一郎氏によるエンヤ風サウンド劇伴(※)と映像のユニークな取り合わせからは原作からのブラッシュアップが感じられる(※ちなみに筆者は原作未読)ところなども、本作の多岐に渡る魅力の一端であろう(※エンヤはアイルランドの歌手・音楽家。荘厳な癒し系サウンドで一時世界的ブームを巻き起こした)。



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少女達が旅の果て、廃墟都市の最上層で見るものとは何か?

といった部分でネタバレ(を回避した方がよいだろう)要素はあり、もちろんここも本作の面白さの大きな軸となる魅力のひとつだが、どちらかというとネタバレなど関係ない、少女達の日常の体験を描いた各単話エピソードそれぞれの味わいにこそ本作の妙味がある、と筆者は考える。

チトとユーリを演じる水瀬いのり久保ユリカ両氏の好演も素晴らしいが、性格のまるで異なる二人の絡みや掛け合いには緩い雰囲気やスリリングさ、可笑しさなどが漂っていて独特の魅力がある。



少女終末旅行 イメージ3 85



二人しかいない世界(※厳密には僅かながら他の生存者も存在する)なので必然的にこの二人の絡みが多くの時間を占めることになるが、そこでは、何故二人でいる?人間が誰かと一緒にいることの意味は?といった根源的な問いが立ち現れてくることになる。

その日を生き抜くために燃料と食料を探し、寒さから身を守り、といった衣食住。
旅の途中手に入れるカメラや文明を滅ぼしたと思わしき超兵器など、未知のものへの好奇心。偶然出くわす音楽の楽しさ、美しい景色を見て訳もなく流れる涙――

二人の絡みと視点を利用しながら各エピソードでこういった人間の最も原始的な本能や生理的欲求を描いていく中で、根源的あるいは哲学的な問いについて我々視聴者にあらためて目を向けさせるきっかけをくれる、またそれをあくまでエンタメ作品の体裁を保ちながら独特の空気感の中で説教臭くならずに作品に落としこめているところが本作の妙味や巧さであり、原作者の狙いとしたところでもあるのだろう。

故に、見る者によっておそらく印象に残るベストエピソードも違ってくるだろうところも作品の懐の深さを示す証左となるものだと思うが、筆者の中の何かが大きく反応した10話について次項で少し紹介して本記事を終えることにする。





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【10話について】




10話の絶叫シーンだけに5千円払ってもいい!


5千円が安いのか高いのか、私がケチなのか気前がいいのかはさておき(笑)、放送当時、感銘を受けた勢いでこんなことを呟いていたのが10話であった。



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<廃墟都市にある昇降台で二人がグワーンと上がって行く→水瀬いのりさんの「うわああぁぁぁ」という叫び→景色を見て泣く少女の姿>

と話の展開を書いてみても、ネタバレが問題になるものではまったくないし、また脚本どうこうでもない。そういった部分で妙に惹きつけられる魅力がある、というのがここでの良さになるのだろうが、言語化はとても難しい。

掴み所がなく何だかわからないけど面白い、というところではお笑いを見る時の感覚に近い気もする。

巻き戻して何度も見たくなるような不思議な魅力と強度、ダイナミズムを本シークエンスが備えているのは、シーンだけの瞬発力だけでなく、本作品がこれまで描いてきたキャラであり世界観といった全ての積み重ねがあってこそ、と確かに思える点においては、奇跡的な瞬間といっても大袈裟ではないようにも思う。

私にとって、『少女終末旅行』の10話とはこのような、作品評価を一段引き上げるような実に印象深いエピソードであった。






少女終末旅行 イメージ 70






執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ




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★【名作】※超神回 『十二国記』(2002/Ave.86.9) text by PIANONAIQ

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作品NO.52 『十二国記』




十二国記 イメージ15


 

十二国記 レーダー小5 【名作】※超神回 4クール


世界観:95 脚本/構成:90 演出:90
キャラ:90 演技(声優):85  引き:65 劇伴:90 作画:90


Ave.86.9   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★★☆☆☆





2002年4月~2003年8月
NHK
全45話小説原作小野不由美
異世界ファンタジー(転生)・歴史大河・人間ドラマ




監督:小林常夫
脚色:會川昇(第1話 - 第40話)/藤間晴夜(第41話 - 第45話)
キャラクター原案:山田章博
キャラクターデザイン:田中比呂人楠本祐子
音楽:梁邦彦
アニメーション制作:ぴえろ




<キャスト(主要)>

中嶋陽子:久川綾
景麒:子安武人
楽俊:鈴村健一
祥瓊(しょうけい):桑島法子

 



《ワンツイートレビュー》


ある日突然現れた使者に王として異世界へ導かれるも未知の土地で迷い子となった女子高生を容赦ない苦難の連続が襲う。女子高生が異世界での重苦しい日々を生き抜く中で己の運命を受け入れ良き王として成長していく先に訪れる筆舌に尽くし難い感動と興奮に全身が包まれる39話アニメ史に刻まれた奇跡





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【はじめに】



39話がアニメ史に残る超神回なので是非観て欲しい!



熱烈過ぎる作品推しや神回といったワードを使う事に躊躇するところはあるし、出来ればスマートな語調で鋭利さや熱量を孕む文章を書ければ理想的なのだろうけど(笑)、今回は本作に対する強い想いの源泉となっている率直な本心をあえて最初に書き記すことにした。

期待の持たせすぎがよくないことも当然わかっている。

けれど、そもそも私もこういう感じで――フォロワーさんのお勧めによる39話目当てで本作を見始めた経緯があり、それで噂に違わぬ期待以上の大きな感動が得られた経験があるので、やはり大袈裟に記すことに迷いはない。

とはいえ、もし視聴してみて期待外れであっても大目に見ていただけるとありがたいです。(汗)


どれほどの感動かといえば(そんなことを語るのも至極主観的な話でいたってスマートではない気恥ずかしさもあるけれど)、これまでそれなりの数見てきた数クール編成のテレビアニメ作品の中で、単話の感動に限っていえば、これを超えるものが果たしてどれだけあっただろうか、また並ぶ話数を持った作品が5作あるかどうかも微妙、といった感じのまさに圧倒的で唯一無二の感動、である。

個人的に思い入れの強い『カレイドスター』における伝説級の二つの名作回、あるいは『交響詩篇エウレカセブン』の名高き第26話「モーニング・グローリー」よりももしかしたら上かもしれない、この一話だけで傑作、名作と断言したくなるようなそんな話数。





一番言いたいこと、思いの丈をお伝えできたところで、以下本作がどういった作品なのか、その他の見どころについても簡単に触れながら、39話の内容についてもう少し詳しく紹介したいと思う。

尚、筆者が原作未読であること、また作品を見終えてかなりの月日が経っており多少内容に不備や思い違いがあるかもしれないことは前以て記しておく(アニメ版が加えた原作にないオリジナル要素の部分はファンの間でも賛否あるようだが、今回ここには詳しく触れないことにする)。


もう一つ。

私事ながら、最近の堕落した政治状況を見ていて、国のトップに立つ者の資質であったり、民のための健全な政治や良き指導者の采配を阻むような「政治(国)を影で支配する官僚機構」について描いた本作の存在をある日ふと思い出したのだった。

本作の中盤以降で描かれる、民の幸せを心から想う王とそれに強力に抗う官僚との一筋縄ではいかない熾烈な闘いのパートを無性に見返したくなった、というのが今回『十二国記』の紹介記事を書く大きなきっかけともなったのだけど、この辺についても後で少し触れることにする。




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【目次】


 
【作品紹介】






■ 作品評価     【名作】 ※超神回



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

◆ 作品評価順リスト(=「見て損はない作品」ランキング )はこちら




 
■ レーダーチャート評価  


十二国記 レーダー
【総得点/Ave.】   695/86.9
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 95
脚本/構成 : 90
演出 : 90                グループA:Ave. 91.7
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 90
演技(声優) : 85            グループB:Ave. 87.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 65 
劇伴 : 90                グループC:Ave. 77.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 90         
―――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





■ ネタバレ厳禁度   


★★☆☆☆  (ほとんど問題なし)







 

【作品紹介】




◆ 序盤について




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小野不由美による人気小説シリーズを原作とする本作は、昨今の深夜アニメの題材として隆盛を極め若干飽和気味な印象さえある異世界ファンタジー(あるいは異世界転生もの)の先駆け的存在として傑作と呼んでも差し支えない立ち位置にある作品になるのだろうか。

タイトルの通り十二の国から成る世界は、外観的には中国風を基調としている。各国を治める王は“麒麟”と呼ばれる神獣(平たくいえば、神の使い。下図参照)が天意に従って選び、選ばれた王は不老の存在となる――

といったように、神(天)の人知を超えた力が世界の理として確かに在り、それが絶対の真理として人々に尊ばれている世界、というのが設定としては本作の大きな特徴になる部分だろうか。詳しい説明は長くなるので省こうと思うが、細部まで作りこまれた世界観、舞台設定はさすが長期シリーズからなる豊穣な歴史大河ドラマを構築する人気原作だけあって骨太、且つ魅惑的である。



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よって、本作の主人公である中嶋陽子1話で異世界の王として迎えに現れる景麒(ケイキ)と呼ばれる異装の者もどこかの国の麒麟?ということになるが、この景麒が、陽子を異世界へ導いた後、物語開始早々いきなり姿を消してしまうのである。

理由はもちろん後になって判明するが、異世界へ誘っておいてそりゃないよといいたくなるあまりにも非道い仕打ち……。

これによって優等生タイプの極々平凡な女子高生であった陽子が凶悪な妖魔が襲い来る恐ろしい未知の土地で捨て子同然になり過酷を極める異世界生活を強いられることに、というのが物語導入部のだいたいのあらすじとなる。



十二国記 イメージ5



異世界ファンタジーの先駆け的存在、と先に書いたものの、陽子が異世界で体験する序盤の苦難は想像以上に過酷で長い話数に渡って重々しい展開が続くので、昨今の1話からいきなり主人公が異世界に順応してしまうようなある意味「緩い異世界もの」に慣れた感覚で見るともしかしたら面食らってしまうかもしれないし、視聴継続が辛くなってしまうかもしれない。


しかし、

だからこそ異世界ものとして非常にリアルに感じられる作品であるといえるし、「壮大かつ未知の世界の中に王の資質を持っているとされる女子高生が放り込まれた」という設定だけでも先の展開を期待させるには十分な魅力があるとも思う。

また、過酷を極める日々の中だからこそ下心なく優しく手を差し伸べてくれる他者の存在や無償の好意が尊いものとして真に迫ってくるのである(この辺りの注目話数としては8話などが挙げられるだろう)。

この点では、本作が差別など人間の醜い面もしっかり描いているところも大きいだろう(陽子のように日本や中国からこの世界に転生して流れて来た者は“海客”と呼ばれる。海客を見つけ次第処刑したり差別の対象として見る国もあれば、保護体制を整えている国もあり、この辺も作品世界観や設定の奥行きを感じる点のひとつ。陽子は不幸にも前者の国に転生してしまったのである)。

ある意味、妖魔よりもタチが悪いともいえる人間の醜さや非情さといった負の面をしっかり描いているからこそ、対比的に人間の綺麗な面や尊い姿が際立ってくる、といったように。

この辺りは間違いなく『十二国記』の大きな魅力のひとつであるが、それは楽俊という半獣キャラ(下図)が関わる本作でも屈指の人気を誇る序盤のエピソードが象徴している(9話を注目話数として挙げておく。ちなみに序盤は視聴継続が困難かもしれないという点について、筆者の初見時の感想メモを読み返すと10話になると作品の面白さにがっつり掴まれた、とあるので参考までに。またこのあたりで梁邦彦氏の劇伴にも同様の充実を感じ始めていたという記憶もある。心に染みる胡弓の音色など、本作における梁氏の音楽は作品の世界観に完璧に合った楽器選びの妙が特に際立っている。インストOP曲「十二幻夢曲」も名曲)。





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◆ 中盤以降について




『十二国記』は陽子が過酷な日々を生き抜き大きく成長し遂に王の座に就く、で終わる作品ではない。それが描かれるのは1話から始まる「月の影 影の海」編で、全45話から成る本作の中でだいたい約ワンクール分を占める尺である。

本作の興奮して語りたくなる醍醐味や凄さは、王の座に就いた陽子が国に内在する難題に立ち向かい「真の王」となる後半話数にこそある。



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23話から始まる「風の万里黎明の空」編がそれに当たるが、この編のラストを飾る最大のクライマックス回にして本作屈指の名作回39話ということである(ちなみに、15話~21話で描かれる泰国の話など、陽子がメインとならない他の国を舞台にした編もあるが、原作の執筆が長いこと滞った結果アニメ版はこのあたりが未回収のまま浮いてしまった印象を与えることになってしまっている。40話~最終話の編も完全に続編ありきで作られていることが明瞭に感じ取れるので、ここもやはり作品の最後の締め方としては中途半端な印象が残るものとなってしまっている。19話などはずしりと来る名作回であるし、いずれの編も作品の世界観に奥行きを出す点で内容的には全然悪くないだけに、構成的に惜しいという思いが強まってしまう。仮に39話を最終話付近に据えるような構成であったならもっと作品評価は高く、迷わず名作、傑作と断言できる作品になったのではとも)。



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しかし、この「風の万里 黎明の空」編も序盤に負けず劣らずなかなか目の前が明るく開けない低空回というかストレスフルな展開が長く続くので、視聴継続という点では少々難ありといわざるを得ないところはある。

王となったのはよいものの、国の内情を知り尽くす官吏(言い換えれば我が国の官僚のようなもの)達の態度はどうも仮面を被ったようにぎこちなく、国情も政治の内情も何も知らない新王・陽子は王として自国の民を幸せに導けない己の非力さを卑下し、庶民の生活に身分を隠して紛れ込み民と共に暮らす決意をする。そこで様々な国の実情を肌で感じる中で、国を疲弊させている真の敵の姿が徐々に浮かび上がってくる、というのがこの編の大まかな流れ。

ここで最初に述べた国を影で支配する官僚との闘いが描かれることになるのだが、なかなか下手を打たない(尻尾を出さない)敵が相当な曲者強者で、いくら王といえども確かな証拠なしに無闇には処罰できない、故にジリジリと劣勢が続く攻防がかなりストレスフルに感じられると。ただ、同時にここが今見返したらかなり見応えがあるのではないかとも思える部分、ということである。

また、劣勢が続く長い低迷の時があるからこそ、最後に『暴れん坊将軍』や『水戸黄門』の印籠シーンのような爽快な逆転劇のカタルシスが生まれるのだし、心から国と民を想う誠実な王が色々な問題に結論を出す姿が凛々しくも尊く感じられるのである。陽子含め3人の女性達のまったく別の場所から始まった過酷な人生の物語が長い話数をかけて同時進行的に描かれ最後一つに収束する様は運命の奇跡とでもいうべき圧巻の光景であるし、こうした幾多の要因があいまっての「奇跡のような39話」ということなのだろうと思う。


特に序盤など、視聴継続が難しいと感じられる時も多いかもしれないが、なんとしてもここまで辿り着いて、その異世界歴史大河ドラマの重厚感にただただ圧倒されるような大きな感動を是非味わって頂きたい、と強く願うばかりである。






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執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ




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【良作】『ゆるキャン△』(2018/Ave.81.3) text by PIANONAIQ

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作品NO.51 『ゆるキャン△』




ゆるキャン イメージ 57


 

ゆるキャン レーダー小 5 【良作】 1クール


世界観:80 脚本/構成:85 演出:85
キャラ:85 演技(声優):85  引き:70 劇伴:85 作画:75


Ave.81.3   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★☆☆☆☆





2018年1月~3月
TOKYO MX、他
全12話漫画原作あfろ
趣味・友情・青春・日常・ドラマ




監督:京極義昭
シリーズ構成:田中仁
キャラクターデザイン:佐々木睦美
音楽:立山秋航
アニメーション制作:C-Station




<キャスト(主要)>

志摩 リン:東山奈央
各務原 なでしこ:花守ゆみり
大垣 千明:原紗友里
犬山 あおい:豊崎愛生

 



《ワンツイートレビュー》


2018年冬期、女の子達がキャンプを楽しむ姿をきらら系作品の枠にとどまらない巧妙な演出で描き圧倒的人気を獲得した作品。二人のヒロインのキャラの魅力はここ何年かの深夜アニメ作品の中でも屈指。劇伴の素晴らしさも大きな話題となった。これが初監督作となる京極義昭監督の高い力量が窺える一作。





【補足】



ゆるキャン イメージ3



2018年冬アニメの中で、『よりもい』と並び圧倒的な支持を集め多くのファンに愛された作品が『ゆるキャン△』である(個人的にも本作が冬期のNo.1作品)。

見どころの多い作品で全てを語ると長くなってしまうので、本記事ではその魅力と巧さの全てが凝縮されたような1話の素晴らしさについて少しだけ触れることにする。



ゆるキャン イメージ13



1話は、本作の魅力の大部分を占めるといっても大袈裟ではない二人のヒロイン、志摩リン各務原なでしこの出会いを描いた話数だが、カレー麺という小道具の使い方が実に巧妙で際立っていた。

リンが乗るYAMAHAのスクーターが在庫切れを起こすほど売れた(?)ことも大きな話題となったが、カレー麺も作品人気によって大きく株を上げた商品だろう。



ゆるキャン イメージ17 ビーノ 65



ソロキャンプでの1人の時間を心から楽しむリンにとって、カレー麺というのは一種の、彼女の世界を象徴するようなもの、であるといえよう。

そして、キャンプ場で可笑しな経緯で出会ったなでしこにリンはこのカレー麺を振舞う。

当たり前の日常を象徴するような食べ慣れたカレー麺をこんなにも美味しそうに食べるまだ名も知らぬ少女にリンは大きく惹かれる。



ゆるキャン イメージ5

ゆるキャン イメージ10



この時リンは、自分の世界(=カレー麺)を無条件に肯定された嬉しさと同時に、新鮮な驚きも感じたに違いない。

一方のなでしこも大自然の中で食べるカレー麺の美味しさとその後に見る絶景によってリンから自分の知らない世界(キャンプの楽しさ)を教わる。


といったように、カレー麺という小道具を触媒にキャラとキャンプの楽しさを同時に描く語り口が実に見事なのである。



ゆるキャン イメージ15



キャンプ場で食べればカレー麺だって普段とは違う格別な美味しさになるだろうし、それを誰かと一緒に食べた経験は互いへの親近感にもつながるはず(同じ時と場所で同じ絶景を見た経験も然り)。

1話ではこのようなキャンプの楽しさ(醍醐味)が描かれるが、以降の話数では、それでもソロキャンプでの1人の時間を大切にすることに一切のブレがないリンと、高校の「野外活動サークル(野クル)」に入部し「皆で楽しむキャンプ」という方向性へ向かうなでしこの二人の姿を軸に、それぞれのキャンプの良さを描き出していく。

ともすれば、皆で楽しもうよ!一辺倒になる向きもあるかもしれないが、この作品はリンが皆で楽しむ野クルの活動に参加し徐々に新たな楽しさに目覚めていく姿を描きつつ、ソロキャンプの楽しさも変わらず描いていくところが多様な価値観を認める現代の作品らしいというか、好感を抱くところでもある。


映像を見ているだけで、まるで自分が体験しているような気分になれる――という本作の大きな魅力のひとつも1話でしっかり感じることができるだろう(大塚明夫氏が担当するナレーションも高ポイント)。



ゆるキャン イメージ12



けものフレンズ』で注目された立山秋航氏の劇伴の貢献度も非常に高く、作品にとってかかせない存在となっている。

1話冒頭で流れる楽曲などは、本作を象徴するゆるい雰囲気の中に冬の寒さや刺激も感じさせる曲調がリンのテーマに相応しいものであるし、本作のメインテーマといってもよい大きな存在感で映像に格別な彩りを添えている。

他にも、なでしこのテーマを想起させる楽曲など、良曲目白押しといった感じである。



ゆるキャン イメージ6



序盤話数はとにかくリンなでしこの絡みが楽しく、キャラの魅力から得られる幸福感はかなりのものだろう(ただし、この序盤の良さが際立ちすぎているため、中盤以降は若干盛り上がりに欠けると感じるところもあるかもしれない)。

そして、1話と対をなす成す形でしっかり物語を締めてくれる最終話も、作品鑑賞後の後味の良さを保証すると同時に作品への高評価を決定する上で大きな存在となっている(なでしこの成長や、リンとなでしこ二人の距離感の変化を巧みに描き、更にはキャンプの多様な楽しみ方という本作のテーマへの洗練された回答をも示す巧妙なラストである)。






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■ 作品評価     【良作】



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

◆ 作品評価順リスト(=「見て損はない作品」ランキング )はこちら




 
■ レーダーチャート評価  


ゆるキャン レーダー
【総得点/Ave.】   650/81.3
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 80
脚本/構成 : 85
演出 : 85                グループA:Ave. 83.3
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 85
演技(声優) : 85            グループB:Ave. 85
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 70 
劇伴 : 85                グループC:Ave. 77.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 75         
――――――――――――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





■ ネタバレ厳禁度   


★☆☆☆☆  (まったく問題なし)






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執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ




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★【名作】『装甲騎兵ボトムズ』(1983/Ave.92.5) text by PIANONAIQ

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作品NO.50 『装甲騎兵ボトムズ』




装甲騎兵ボトムズ イメージ3 55


 

装甲騎兵ボトムズ レーダー小 5 【名作】 4クール


世界観:100 脚本/構成:95 演出:95
キャラ:95 演技(声優):90  引き:75 劇伴:95 作画:95


Ave.92.5   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★★★★★





1983年4月~1984年3月
テレビ東京、他
全52話(内総集編3話)/オリジナル
ロボット・SF




原作・監督:高橋良輔
キャラクターデザイン:塩山紀生
メカニックデザイン:大河原邦男
音楽:乾裕樹
アニメーション制作:サンライズ




<キャスト(主要)>

キリコ・キュービィー:郷田ほづみ
フィアナ:弥永和子
ブールーズ・ゴウト:富田耕生
ココナ:川浪葉子
バニラ・バートラー:千葉繁

 



《ワンツイートレビュー》


今でも兵器として十分実用化可能に思えるATの造形、PS(パーフェクトソルジャー)、魅力的なキャラ達、など練り込まれた強度の高いハードな世界観や設定の秀逸さに痺れる作品。キリコとは何者?を面白さの最大の軸に壮大なSF叙事詩を紡ぐ孤高の名作は、故・乾裕樹氏の劇伴の格好良さも最高級。




装甲騎兵ボトムズ イメージ10 90
 


【目次】

 
【あらすじ】

【見どころ】




■ 作品評価     【名作】



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

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■ レーダーチャート評価  


装甲騎兵ボトムズ レーダー
【総得点/Ave.】   740/92.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 100
脚本/構成 : 95
演出 : 95                グループA:Ave. 96.7
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 95
演技(声優) : 90            グループB:Ave. 92.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 75 
劇伴 : 95                グループC:Ave. 85
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 95         
――――――――――――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





■ ネタバレ厳禁度   


★★★★★  (厳重注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が著しく低減する可能性あり)







 

【あらすじ】




アストラギウス銀河を二分するギルガメスとバララントは、もはや開戦の理由など誰も知らない戦争を100年も続けていた。その“百年戦争”の末期、ギルガメス軍の一兵士キリコ・キュービィーは、味方の基地を強襲するという不可解な作戦に参加させられる。その作戦でキリコは軍の最高機密「素体」を目にしたため軍から追われる身となり、町から町へ、星から星へと逃亡の旅を続ける。その逃亡と戦いの中で、やがて陰謀の闇を突きとめ、自分の出生に関わるさらなる謎の核心へと迫っていく。 (wikiより引用)



装甲騎兵ボトムズ イメージ5 装甲騎兵ボトムズ レーダー小 6




 
【見どころ】




『装甲騎兵ボトムズ』(以下、『ボトムズ』)は、SFロボットアニメの名作として今なお根強い人気を保ち続ける高橋良輔監督の代表作のひとつ。スピンオフや続編などOVAの数も豊富で奥行きのある豊穣な世界観を形成している点でも『ガンダム』に決して引けを取らない屈指のシリーズである(本伝となる本作を見終えて好感触だったならば各種OVAに手を伸ばしてみることもお勧めする)。

全52話(内総集編3話)という長大な尺で描かれるのは、キリコという一風変わった(しかし妙に愛着が湧く)名で呼ばれる1人の屈強な兵士の自身の謎をめぐる壮大な戦いの旅

荒廃したウドの街から始まり(ウド編:1話~13話)、密林での過酷なゲリラ戦(クメン編:14話~28話)、希望も何もない砂漠の惑星での逃避行(サンサ編:29話~40話)と舞台を移しながら、最後のクエント編(41話~52話)で遂にキリコの宇宙規模の壮大な謎が明かされることになる。


4編からなる物語だが、どの編も個性豊かなハードな舞台設定(世界観)には堪らない魅力がある。

そしてこの世界観の魅力を更に決定的にしているのが、キリコ含めこの世界の兵士や傭兵達が操るAT(アーマードトルーパー)と呼ばれるロボット兵器の造形の素晴らしさだ。



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装甲騎兵ボトムズ イメージ8 65



パワードスーツよりも巨大、だが『ガンダム』のMSほどではない乗り捨て可能なコンパクトさと利便性を備えている点には現代でも十分実用化可能だと思える兵器としてのリアルさがあり、それが本作のハードな世界観をより強固にしている(足に付いたローラーで地面を滑るように移動する点なども含め、このATの造形は『コードギアス』のナイトメアにも影響を与えていると思われる)。

巨匠・大河原邦男氏による直線と曲線を絶妙に融合し硬質な武骨さと丸みを両立させた唯一無二のデザイン性の高さも合わせて、このATの格好良さ=『ボトムズ』、といっても大袈裟ではないだろう。


また、『ボトムズ』は、こうした世界観と劇伴音楽が非常に密に連携した数少ない傑作のひとつ。

1話では、荒廃したウドの街並みを背景に響き渡る哀愁漂うトランペットの音色とメロディが素晴らしく、物語開始早々この作品の世界観の良さに直感を覚える人も少なくないのではないかと思う(私事ながら、「ウドの街」と聞いただけで気持ちが少し高ぶってしまうのは、身体に深く染み渡るほどこの作品の音楽と世界観に魅了された証左だろうか)。

乾裕樹氏の音楽抜きのボトムズはちょっと考えられない、というぐらいに強烈な印象を残す氏の愛すべき音楽の存在もまたこの作品の大きな魅力だろう(クメン編で流れるバトル曲フィアナ登場シーンで度々流れるジャジーなピアノ曲なども素晴らしいの一言。乾氏作曲ではないが、「レッドショルダーマーチ」という呼称でファンに親しまれる行進曲も本作の重要楽曲。無人の宇宙船内でのトラウマにもなりかねない拷問のようなリピート再生がとにかく印象的だが、これもまた本作の数多い名シーンのうちのひとつである)。


キリコを取り巻く脇役達も魅力だ。

無口で無骨ながらどこか人を惹きつける魅力を持ったキリコの人間性に惹かれ彼の旅に同行することになる仲間達の存在は、とことんハードな作風を突き詰めた本作に息抜きのような柔らかさと楽しさを与えてくれる。



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キリコの謎に取り憑かれ己の人生の全てをそれに捧げ執拗に追い回す男、どこか憎めないおかっぱ頭の双子の兄弟、サンサ編の死の砂漠で永遠とキリコの背中を追い続ける執念の老婆、SF的好奇心を掻き立てるあまりにも巨大で超越的存在である真の黒幕、などなどキリコに敵対する側のキャラもバラエティ豊かで作品に深みを与えている。



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そして、
この世に生まれ出て最初に見た者(キリコ)を強制的に愛する宿命を背負ったパーフェクトソルジャー(というのは簡単に言えば、戦争の道具として人工的に生み出された常人の域を遥かに超える凄まじいAT操縦技能を持ったサイボーグ的存在)の女・フィアナとキリコの愛の物語はキリコの謎と並ぶ本作の核となるものだろう。
二人が過酷な戦いを繰り返しながら最後に辿り着いた愛の形、SF的ロマン溢れる切ない光景は感動的だ。



装甲騎兵ボトムズ イメージ6 85




最後に。

終盤明かされるキリコの謎はなかなかに斬新なものであると思うので、ここに関してはやはり初見の方には是非ネタバレを回避したままその衝撃を味わって欲しいところ(wikiはもちろん、一部のOVAも危険なのでご注意を)。

何年か前にネットで見かけた「シャア・アズナブルは異能生存体である」は、『ガンダム』と『ボトムズ』というSFロボットアニメの二大傑作をひとつに結びつけてしまう大胆な仮説で興味深く思ったが、本作の謎の部分についてはとりあえずこれぐらいの記述をするに留めておくことにしよう。







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執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ




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【佳作】『スロウスタート』(2018/Ave.75.6) text by PIANONAIQ 

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作品NO.49 『スロウスタート』




スロウスタート 28


 

スロウスタート レーダー小 5 【佳作】 1クール


世界観:75 脚本/構成:75 演出:75
キャラ:80 演技(声優):75  引き:75 劇伴:75 作画:75


Ave.75.6   詳しくはこちら     ネタバレ厳禁度:★☆☆☆☆





2018年1月~3月
TOKYO MX、他
全12話4コマ漫画原作篤見唯子
思春期・友情・学園・コンプレックス・ドラマ・百合・きらら系




監督:橋本裕之
シリーズ構成:井上美緒
キャラクターデザイン:安野将人
音楽:藤澤慶昌
アニメーション制作:CloverWorks(A-1 Pictures)




<キャスト(主要)>

一之瀬 花名:近藤玲奈
百地 たまて:伊藤彩沙
十倉 栄依子:長縄まりあ
千石 冠:花輪英司
京塚 志温:M・A・O
万年 大会:内田真礼

 



《ワンツイートレビュー》


きらら系作品的キャラの掛け合い、百合(好きを熱狂させた7話)、純粋で健気なヒロインの造形、などなど楽しめるポイントが人によって異なりそうな捉えどころのない魅力を持った作品。コンプレックスを抱えたキャラの感情の機微や行動に思い当たる節のある人には強く響く作品ではないだろうか。





【はじめに】



2018年冬期、『宇宙よりも遠い場所』(通称:よりもい)、『ゆるキャン△』に絶賛の声が集まる影で着実な好評価を得た作品、というのが狭い観測範囲ながら筆者の本作に対する印象であろうか。一方で、見る人によって感じ方に振れ幅があり刺さるポイントも異なってくる――魅力や評価を語るのが難しい――作品、との印象もある(ちなみに私がこの作品を見るきっかけは、普段辛口なフォロワーさんが絶賛していたことだった)。

最初にも書いた通り、百合要素に関しては神回(7話)という言葉も見かけるほど百合好きの間では熱狂が起こった作品でもあるようだが、筆者は未だに百合には覚醒しておらず(笑)ここについて詳しく語ることはできないので、今回はそれ以外のところで自分が良い・凄いと思った点について書いてみたいと思う。





スロウスタート イメージ2 53


 


【見どころ】

 
1. 中学生浪人は辛いものですよ……

2. スロウスタートだっていいんだ!





■ 作品評価     【佳作】



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品
【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)

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■ レーダーチャート評価  


スロウスタート レーダー
【総得点/Ave.】   605/75.6
――――――――――――――――――――――――――――――――
世界観 : 75
脚本/構成 : 75
演出 : 75                グループA :Ave. 75
――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラ : 80
演技(声優) : 75            グループB :Ave. 77.5
――――――――――――――――――――――――――――――――
引き : 75 
劇伴 : 75                グループC :Ave. 75
――――――――――――――――――――――――――――――――
作画 : 75         
――――――――――――――――――――――――――――――――


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル


※ 各パラメータが含むもの、点数の付け方など、詳しくはこちら
※ Ave.と作品評価は別、つまりAve.が75でも【名作】にすることは可能
※ これまで扱った全作品の採点等は作品評価順リストの方に纏めています





■ ネタバレ厳禁度   


★★☆☆☆  (ほとんど問題なし)







 

【見どころ】



1. 中学生浪人は辛いものですよ……



スロウスタート イメージ3 75



本作のメインヒロイン、一之瀬花名(以下、花名)は中学浪人して一年遅れの高校生活をスタートさせた女の子。

スロウスタートというタイトルはここに由来するのか、と放送当時唸りながら見ていたが(一方、タイトルに反し作品の面白さは序盤からなかなかのもので、割とスタートダッシュで始まる作品ではないだろうか)、この中学浪人コンプレックスを抱えたヒロインというのが本作の特徴的な設定になっている。

中学浪人することが(人と異なることに過敏になりやすいこの時期の少女にとって)いかに辛いものであるか、というのがよくわかるだけに、花名に感情移入して見れるという点でもここは個人的に最初に目を引いた(=刺さった)ポイントであった。



スロウスタート イメージ4



2話のスポーツテスト回では、中学浪人をしたが為に極端に体力が落ちた花名のダメダメっぷりが可愛らしくコミカルに描かれる。

個人的に大爆笑してしまった非常に楽しい回なのだが、スポーツテストが同じくあまり好きでなかった当時の記憶などが甦りここでの花名の辛さが痛いほどわかる、故に、ただ笑ってはいられない複雑な気持ちにもさせられるのである。

ダメダメで格好悪い姿をせっかく仲良くなりつつあった友達グループに晒すのがどれほど辛いか、というのもあるが、ここで中学浪人が皆にばれる?という一面がスリリングな要素として効いてくる寸法だ。


3話は、初めて出来た友達を家に招待するのにわざわざ花飾りを作って歓迎するという花名の何とも健気で可愛らしい姿が際立った回だが、ここでも平穏なムードの中不意に轟く「同い年だね」という友の悪意のない(?)セリフにコンプレックス(急所)を突かれ思わずに泣いてしまう花名の純粋さ、繊細さに予想外に大きく心を動かされてしまうのだ。


きらら系作品的ともいえるキャラ達の楽しい掛け合いを軸にした平和な雰囲気の中に、このような不穏要素が混じり込んでいるのが本作の特徴であり妙味になっているところではないだろうか(個人的には本作のこの部分――中学浪人設定をどう物語に生かすか――に最も惹かれただけに、終盤期待以上にここが膨らまなかったことが多少不満に感じる一因にはなってしまった)。その中で花名を筆頭としたキャラ達の感情の機微を丁寧に描き出したところに魅力が感じられる作品である。


 
2. スロウスタートだっていいんだ!



スロウスタート イメージ5



花名を囲む学校の友達(上図、左から栄依子、右がたまて)は皆それぞれまったく性格の異なる個性豊かな面々で、彼女達が掛け合うきらら系作品的日常回の面白さがひとつの軸となっている作品でもあるが、一方で、皆一様に(花名とは違って)社交的であり他者の内心を見透かすような鋭い一面――只者ではない雰囲気も持ち合わせており、やはりここでも中学浪人がばれるのではないかというスリリングさが助長されることになるのである。


中学浪人という負い目を背負った花名は、徐々に彼女らと打ち解け良好な関係を築いていくが、そんな状況に花名は幸せを噛みしめる反面、いつか全てがばれて破綻するのではないかという怖さも常に抱いている。

皆嘘みたいに優しいけど、それってあなた達の本当の姿?秘密を知ったら変わってしまうのでは?私がこんなに幸せになってもいいの?

そんな、コンプレックスを持つ者故の自信の無さや他者に強く踏み込んで行けない気持ちの弱さや不安を持った花名に感情移入させる形をとりながら、思春期におけるクラス内での友達との距離感や関わり方をリアルに描き出しているのもこの作品を見ていて凄いと思ったところである。



スロウスタート イメージ6 44



仲良し友達グループ内のカップリング描写も同様。


例えば栄依子の間には、元々とても仲が良く気心が知れた特別な関係性が見て取れるのだが、栄依子がいなくなった時の冠は途端に普段とは違う不安な表情や態度になる。

そこで、栄依子と一緒にいる時の冠に絡むたまて、あるいは栄依子がいない時のいつもとは違う冠と二人きりになる花名、といった具合に色々なカップリングとシチュエーションが描かれていくことで徐々にキャラ達の人間性が掘り下げられ魅力が深まっていく。

時に友達の意外な一面が露わになる様子にも何ともいえない魅力があるが(秘密を持っているのは花名だけではない、誰もが大なり小なり抱えているのだというあたりもリアルである)、この辺の脚本とも結びついたキャラ達の絡ませ方も個人的に本作で凄いと思ったところである。





高校生にもなっていまだに母親が選んだ服を着ていることに悩む花名がやはり可愛らしいが、それを馬鹿にすることなく優しく接してくれる友達と出会えて花名ちゃん本当に良かったねぇ、に尽きる作品であるのかな、などとも思う。(笑)


現実ならばそんなに甘くはない、最悪いじめの引き金にもなることだってある――そうした怖さの記憶も持っているからこそここで描かれるフィクションがここまで心に響くのかもしれない。


スロウスタートだっていい、コンプレックスを持っていたって幸せになることはできるのだと――





スロウスタート イメージ 21





執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ



      
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