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第1回 『薄暮』 (2019/監督:山本寛)  テキスト:PIANONAIQ

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取り上げているその他の主な作品:『リズと青い鳥


 

薄暮 2

 

作品評価:【佳作】
クオリティ:70(映像面:75) 
   
※ 評価基準など詳しくはこちら


公開:2019年6月21日   全国の公開劇場情報はこちら
上映時間:52分
オリジナル作品
配給:プレシディオ
主題歌:AZUMA HITOMI「とおく」
ジャンル・要素:恋愛・青春・音楽・弦楽四重奏




原作・脚本・プロデュース・監督・音響監督:山本寛
キャラクターデザイン ・ 総作画監督:近岡直
美術監督:Merrill Macnaut
色彩設計:村口冬仁
音響演出:山田陽
音楽:鹿野草平
アニメーション制作:Twilight Studio




<キャスト>


小山佐智:桜田ひより
雉子波祐介:加藤清史郎
ひいちゃん:佐倉綾音
リナ:雨宮天
松本先輩:花澤香菜
 




《目次》

■ はじめに
■ 見どころ(ネタバレなし)
■ 作品評価




■ はじめに




 公開日初日にEJアニメシアター新宿にて山本寛監督の『薄暮』を鑑賞して来ました。


 5月の試写会で制作の遅れが露呈しその責任を取って(?)監督が廃業、引退宣言をするなど、大丈夫なのか?と思っていたのですが、実際見た完成版はそんな心配を払拭するような映像にしっかり仕上がっていました。







 本作は福島県いわき市を舞台とする中編アニメーション映画(上映時間:52分)。東日本大震災の復興プロジェクトとして山本監督が制作を進めてきた被災地3県を舞台にしたアニメ作品群、通称「東北三部作」の最終作に位置づけられる作品でもあります(他『blossom』『Wake Up, Girls!』、wiki参照)。


 聖地巡礼を趣味とする人は見た方がよい、といった感想も見かけましたが、いわき市の自然を描いた映像はなかなかに美麗で見事なものでした。私が劇場へ足を運ぶ直接的なきっかけとなった予告PVでもその辺の質感は感じられるかと思います。もうひとつのきっかけとなったのが、「弦楽四重奏シーンが凄い」というフォロワーさんからいただいた情報なのですが、これについては後で触れます。




 話題作の公開が相次ぎ絶賛される作品も散見される中、上映館や本数が極めて少ない本作を選んで見に行く方はそれほど多くないのかなと思いますし、苦しい興行も予想されます。内容的には、正直に言ってしまえば「絶対見て!」と熱烈にお勧めしたくなるほど圧倒されるような作品ではなかったですが、劇場で見るからこそ真価が発揮される映像作品であると思えるような光る部分もあり、その辺について書き記しておきたいと思うに至りました。もしピンと来るものがあったら劇場に足を運んでみてください。


 今回は、劇場版「深夜アニメの歩き方」第1回記事ということで、TVアニメ作品についてネタバレなしで語る「深夜アニメの歩き方」の趣旨をそのまま踏襲する形で「薄暮」の感想や見どころなどについて述べていきます。






 

■ 見どころ




はくぼ【薄暮】
〔「薄」は近づく、迫る、の意〕
夕方の暗くなりかけたころ。夕暮れ。くれがた。たそがれ。



〈あらすじ〉 
小山佐智は、東日本大震災で心に傷を持ち、それ以来、高校の音楽部に所属し幼い頃から続けてきたヴァイオリンを奏でながらも、友人や家族とどこか距離を置きながら日々を過ごしていた。そんなある日、佐智は見かけない男子学生と出会い、心にさざ波のような変化を起こすのだった……。




 田舎町の美しい自然の景色の中綴られる青春音楽ラブストーリー、というのが大雑把な作品の輪郭になりますが、美しい自然の景色の中で鳴り響く弦の音色が何より印象的な作品でした。

 視覚と聴覚の両面における瑞々しさを鮮度そのままに封入したようなアニメ映画、とでもいいましょうか。



薄暮 1 21



 ヒロインが奏でるソロヴァイオリン、高校の音楽部で友達らと供に文化祭に向けて練習に励むベートーヴェンの弦楽四重奏曲、物語序盤で特に印象的に響く鹿野草平氏による劇伴曲など、いずれにおいても音楽の中心にあるのは弦の音色です(弦楽四重奏シーンは噂通り非常に力の入った作りで、本作最大の見どころといってもよいかもしれません)。


 田舎町の自然の景色と弦の音色の組み合わせ、というと以前「深夜アニメの歩き方」でも取り上げた『ヨスガノソラ』(2010年)を思い出しますが、『薄暮』ではそこからより深化したのではないかと思える生々しくもリッチな質感とその背後に潜む演出意図が感じられました。この辺は、クラシック音楽への造詣の深さと音楽演出にもともと定評のある山本監督が特に拘ったところではないかと推測する部分でもあります。



 弦の音色が心の深いところまで沁み込んでくるような感覚があった点については、劇場鑑賞において増幅される音の臨場感が大きく良い方向に作用したのではないかとも思います。


 大自然の空気を弦の響きが震わせる、そんな演出意図を持って背景美術と音楽の質感、双方のバランスを構築していったのではないかとも推測するのですが、そこで頭をよぎった作品が『リズと青い鳥』(以下『リズ』)でした。




リズ 66


『リズと青い鳥』(2018年劇場公開/監督:山田尚子/制作:京都アニメーション)




 『リズ』は作中の舞台を学校という閉ざされた空間に限定することで、その密室から緊張感を一切逃がさずに積み重ね、窒息するような少女達の繊細な感情の機微を見事に描いた作品でしたが、『リズ』はこのような作品の設計・性質が劇場鑑賞における密閉された空間と合致することでよりその真価を発揮するような劇場鑑賞向き作品でありました。


 対して、『薄暮』の場合は、スクリーンと視聴者との間にある広い空間(空気)を最大限に活かして設計された映像作品なのではないかと感じました。作中でいわき市の空気を震わせた弦の音色が、同様に劇場内の空気を震わせ前方の空間を伝って我々の耳に届く――そのような得難い感覚と臨場感。


 このように考えるとこの二作は「密室/蓄積」、「広い空間/解放」というそれぞれに真逆の方向性を有しながらどちらも劇場という空間を上手に活かした劇場鑑賞向き作品になるのかなと思います。







 メインとして描かれるラブストーリーに関しては、鑑賞中『耳をすませば』(1995年)が一瞬脳裏に浮かびましたが、とにかく初々しい描写全開!です(笑)。もしかしたら見る人によって好みが別れるかもと思うところではありますが、先程の瑞々しさを封入したアニメ映画という話でいえば、やはりここでも青春の今この時しかない初々しさが刻まれた作品であるということはできるでしょう。



 ヒロインのモノローグを多用している点で、もう少し映像のみによって語るようなシーンがあったらなと感じるなど、演出の方向性や細部の作りにおいて気になるところが幾つかあったのも事実、ですが、音楽周りの充実を筆頭に、瑞々しいものを切り取った作品としては、従来の自分の好みや価値観、尺度で測れないような可能性と魅力を秘めた作品であるようにも感じています。





 

■ 作品評価     【佳作】   



傑作 絶対観た方がよい作品 
【名作】 観るべき、マストではずせない作品 
【良作】 観た方がよい(がマストではないかな?と思える)作品

【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品 
【水準作】 普通だが見どころはある作品

【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品 
【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品 
【駄作】 取り上げる価値もない作品


【傑作・名作】 傑作と名作の中間
【傑作>名作】 傑作寄り
【傑作<名作】 名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※名シーン (ずば抜けて素晴らしい名シーンがある作品)

◆ 名作と良作の違いについて:「全身が打ち震えるほどの」といった感動の大きさは名作も良作も同じ、そこからさらにプラスαで特筆(評価)すべき点のある作品が名作




クオリティ:70(映像面:75)



◆ クオリティ:脚本、テーマ、映像、演出、演技(芝居)、キャスティング、音楽、音響など全ての側面を考慮して導き出される一本の映画としてのクオリティ、あるいは完成度。
◆ 映像面:上記のクオリティから映像面だけを抜き出して評価したもの(作画、背景美術を含む)。


100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰 
95   最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない 
90   めちゃくちゃ良い、名作レベル
85 
80   かなり良い(強い、巧い)、良作レベル 
75   良い(強い、巧い)
70   なかなか良い(強い、巧い)、佳作レベル
65
60   普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる 
50   凡作レベル、2流  30  失敗作レベル、3流  0  駄作・愚作レベル







執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ




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◇ 作品記事総数:73

【傑作】8
【名作】23
【良作】20
【佳作】16
【水準作】5
【凡作】0
【失敗作】1
【駄作】0

※惜作 4 ※超神回 4

(【傑作>名作】は【名作】とする)


◇ コラム記事総数:3

(2019年6月19日現在)
 
 

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傑作 絶対観た方がよい作品

【名作】 観るべき、マストではずせない作品

【良作】 観た方がよい(がマストではない)作品

【佳作】 時間があるなら観ることを勧めたい作品

【水準作】 普通だが見どころはある作品


【凡作】 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品

【失敗作】 ほぼ全否定、何とも残念な作品

【駄作】 取り上げる価値もない作品



【傑作・名作】傑作と名作の中間
【傑作>名作】傑作寄り
【傑作<名作】名作寄り
※惜作 (名作になりえた惜しい作品)
※超神回 (ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品)


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